死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた

文字の大きさ
126 / 188

勝手に動いたらダメ!

しおりを挟む
 ミシェルさんと本音を話し合い、ナイテア王国との和解に向けて一歩進んだ夜だった。時間は遅くなってしまったけど、無事に部屋へ戻ってベッドの上で横になる。

「ふぁ~~」

 大きなあくびをすると、急に眠気が襲ってきた。今日はいろいろとあって凄く疲れた。これからもっと大変なことになりそうだし、そろそろ寝よう。

 解決に向けて動いている手応えを感じながら瞼を閉じる。

 夢は全く見なかった。



 そして翌日。周囲が騒がしいことに気づいて目を覚ます。ブルーベルさんが派手に迎えに来てくれているのかなと思ったけど、耳を澄まして声を聞いてみると少し違いそうだ。

「……船が…………攻めに…………」
「ありえない…………宣告……」
「………………死者が…………」

 少し物騒な単語が聞こえた。ベッドから体を起こして外を見ると太陽は高い位置にあった。お昼ぐらいの時間までねてしまっていたみたい。

 朝にはベルさんが迎えに来るはずだったんだけど……なにかあったのかな?

 嫌な予感がする。

 すぐに着替えよう。寝巻きを脱いで下着姿になると急にドアが開く。

「やばいよ! イオディプス様!」

 入ってきたのはベルさんだった。慌てていた顔をしていたけど、僕を見るとつーと鼻血が出て動きは止まる。すぐに顔を手で隠しながら、隙間を作って凝視する。

「すぐ着替え終わるので、後ろを向いて待っててください!」

 言われたとおり、くるりと回転してくれた。

 襲われなくて良かったと思いつつも、クローゼットから洗った服を取り出して身につけていく。その間にも廊下からドタバタと走る音が聞こえていて、逼迫した声が僕の耳に届いた。

「ブルド大国からの使者に料理を出して!」

 この場で聞きたくない名前だ。昨日、ミシェルさんが教えてくれた戦争を仕掛けてくるかもしれない相手が、一日も経たずに来てしまったようである。狙いは貴重なスキルランクSSを持つ僕であることは明白だった。

「着替えが終わりました」

 すぐにベルさんは僕を見てくれた。

「ブルド大国は僕の奪還を理由に来たんですか?」
「あぁ、聞こえちゃったんですね……」
「隠し事はなしで。何が起こったのか教えてください」

 鼻血を拭き取りながらベルさんが口を開く。

「港の近くにブルド大国の旗を掲げた大型船が三隻きてるんだよね。甲板には数十名に及ぶ騎士の姿も確認できていて、私たちに圧力をかけてきている状況、ってとこかな」
「……戦争になるんですか?」
「まだ攻撃されてないから今は大丈夫」

 戦力を見せつけて圧力をかけているのかな。

「ここには戦える人なんて、ほとんどいないですよね。降伏されるのですか?」
「…………相手の条件次第かな」

 例えば僕を引き渡せと言われたら、受け入れることはないだろう。自ら手放すのと脅されて手放すのじゃ、結果は同じでも印象は違うからね。

 ミシェルさんが泣いていた姿を思い出す。

 心が締め付けられた。

 助けてあげたい。

 幸いなことに相手の狙いは僕だ。問答無用で攻めに来てないところから、交渉だけで僕を手に入れたいという思惑も透けて見える。きっとスキルブースターを警戒しているのだろう。どこまで情報が漏れているかはわからないけど、人数制限なしでスキルランクを上げられることぐらいは知っていても不思議じゃない。

「使者と交渉しているのはミシェルさんですか?」
「他にもブルーベルも同席しているよ」
「じゃ、僕も参加するので案内してください」
「何を言っているの! ダメだって!」

 思わず叫んでしまうほどベルさんは驚いたみたい。

「ブルド大国は僕を渡せと言ってきているんですよね? ミシェルさんはどっちを選んでも大きな問題を抱えることになるけど、僕が勝手に判断して動いたことにすれば現状より悪くなることはありません」

 圧力に負けて僕を引き渡す決断をしてもナイテア王国から怒りを買ってしまう。多額の賠償を求められるだろうし、スカーテ王女が感情的になったら最悪は戦争だ。逆にブルド大国の要望をはね除けても、ここが戦場になって多くの人が死んでしまう。

 平和的に解決するための交渉が必要だ。
 しかもミシェルさんじゃなく、僕が主体になる必要がある。

 勝手に交渉を進めれば責任は僕のものになるので、ミシェルさんは止められなかった罪ぐらいまで軽くできるはず。 

「そうかもしれなけど……いいのかな…………どうしよう、わかんない」
「今は早く動くべきです。悩むぐらいなら案内してください! ダメなら勝手に探します!」

 部屋を出ようとすると手を掴まれた。握りつぶされそうなぐらい力強い。顔が歪むのを自覚しながらも振り返る。

「ブルド大国の人間に見つかったら誘拐される。勝手に動いたらダメ!」
「だったら僕のお願いを聞いて!」
「わかった! 案内するから、そんな目で見ないで……悲しいよ……」

 怒りによって睨みつけていると勘違いされてしまったみたい。痛みを我慢して、いつもどおりの表情にする。

「少し焦っていたみたいです。ごめんなさい」
「ううん。私も悪かった。イオディプス様が言っていることは間違いじゃない。ただ正解かと言われたら悩むけど……ミシェル様を助けられる可能性があるなら賭けるよ!」
「ありがとう!」

 ベルさんの同意は得られた。

 男の姿のまま、ベルさんと一緒にブルド大国の使者がいるという外交用の応接室へ入る。

 長いテーブルを挟んで手前にミシェルさんとブルーベルさん、奥の方に初めてい見る女性がいた。両サイドをハーフアップした紫色のセミロングの髪が特徴的で、額に一本の角がある。黒い目は鋭い。武人のような気配を発していて、女性なのに王子様という印象を持った。

 革鎧を着たまま椅子に座っていて、後ろの壁には大剣を立てかけてある。

 彼女がブルド大国の大使、そして戦士であることは間違いないだろう。

======
あとがき
ついにブルド大国の登場です!

ついに電子書籍版2巻がAmazonが販売開始となりました!
こちらも読んでもらえると大変はげみになります!

面白い、続きを読みたいと思っていただけたのでしたら、★レビュー等で応援していただけると嬉しいです!よろしくお願いします!  
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

処理中です...