勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~

わんた

文字の大きさ
11 / 138

第11話 後は任せた

しおりを挟む
 ベラトリックスが寝ている子供たちの体内調査を始めた。

 四人はすぐに終わったが、大型汚染獣の影響を受けた男の子は入念に確認している。

 魔力回復に努めている俺は、床に転がりながらそんな姿を見ていると外が騒がしくなってきた。

「うちの娘はどうなったんですか!」
「中に入らせてくれ!」

 男女が入り交じった声だ。

「今は治療中なので待ちなさい!」
「うるさい! どけ!」
「きゃっ」

 止めているエーリカが吹き飛ばされたようだ。

 ドアが半分ほど開く。外の様子が少し見えるようになった。

「ダメだからっ!」

 中年の男性にエーリカが飛びかかった。押し倒せはしなかったが中に入るのは邪魔できたようである。

 任せた仕事を全うしようとする心意気に心打たれ、女性に手を出した中年男性に怒りが湧く。

 彼女は未亡人で、もしかしたら俺の初めてを受け入れてくれるかもしれない人なんだッ!

 お前みたいな男が傷つけて良い相手ではないッッ!

「全員、汚染物質が浄化されているのを確認しました」

 よし、もう時間を稼いでもらう必要はなくなった。

 魔力も回復したので起き上がるとドアの前に立つ。

「静かにしろ」

 入り口にいる全員の視線が集まった。

 来訪者は男女二名ずつか。

 子供の親とみて間違いないだろう。

「治療は終わった。全員無事だ」
「本当か!?」

 声を上げたのはエーリカに止められていた男だ。

 こっちに向かってきたので軽く腹を殴りつける。

「ガハッ……なに……を」
「女性に手を出すクソ野郎に制裁を加えただけだ。文句あるか?」

 指の骨をポキポキと鳴らして、反論すれば戦いになるぞとアピールしておく。

 勇者として活動していたときは魔物や人間とも戦ったことはある。なんならエルフやドワーフとだって争ったことがあり、田舎村の男に負けるほど弱くはない。

「どうした? 何か言えよ」
「ぐっ……」

 抵抗できない女には強気に出られても、俺には声すら上げられないようだ。

 情けない。少しは立ち向かう気概というのを見せてもらいたいものである。

「子供が心配で気が動転しているのだと思います。ポルン様、そろそろ許してもらえませんか?」

 戻ってこない俺が気になったのだろう。ベラトリックスが心配そうな声で言った。

 あえてこのタイミングで割り込んでくれたのは理由がある。騒動を収めるきっかけを作ってくれたのだ。

 こういった場面ではいつも助けてもらっているな。

 提案を断れば引っ込みが付かなくなるので、ありがたく受け入れることにする。

「わかった」

 腕を降ろして怒りを静める。

 見守っている人たちから一気に緊張感が抜けたように見えた。

「子供は本当に無事なのでしょうか?」
「もちろん。衰弱しているが死ぬことはないだろう」
「……っっ!」

 感極まったのか二人の母親らしき女性は泣き出してしまった。

 男の方も涙を溜めている。

「私は他の方にも伝えてきますね!」

 服に付いた土を叩いて落とすと、エーリカはどこかに行ってしまった。

 これから村中が騒ぎになる。

 他にもやることがあるので、捕まる前に逃げ出すか。

「調べたいことがあるので出かけてくる。後は任せた」

 何か言いたそうな顔をしたベラトリックスを置いて宿に戻ると、部屋から槍を持ち出す。

 汚染獣の体の一部がどうなっているのか確認するために、急いで村から出て草原を歩くことにした。

 まだ昼前なので太陽は昇りきっていない。

 草を踏みしめながら進む。

 目的の場所は方角ぐらいしか分からないが、それで十分である。山脈とは別に草原にも瘴気の濃い場所があるから迷うことはない。

 しばらく進むと草原が枯れてきた。汚染物質によって植物が死にかけているのだろう。

 ここまでくると人体にも影響が出てくる。空気を吸い込めば体が重くなって頭痛や吐き気といった症状がでるはずだ。俺は光属性のおかげで健康そのものだが。

 まともな生物がいない。ある意味安全な場所をさらに進んでいくと、草はなくなり真っ黒な地面が露出するようになる。

 ようやく瘴気を発している中心部に来たのだ。

 視線の先には地面から生えた触手が見えた。全長は十メートルほどか。根元から数十センチほどで枝分かれしていて数十本の触手が存在する。

 大きさと瘴気の濃さからして小型から分離した体の一部だろう。

 不規則にゆらゆらとしていて全体がテカテカと光っており、先端は大きな針がある。一部に穴が空いてあるのは血を吸うためだろう。汚染獣の中には生き血を吸うのが好きなタイプもいたから、推測は間違ってないはず。

「どうするかなぁ」

 手に持った槍をクルクルと回しながら、処分方法を考える。

 光属性の魔力で完全に消し去ることもできるが、汚染獣の手がかりもなくなってしまう。それは悪手だ。

 触手から情報を得たいので原形を留めておく必要はある。

「すべて斬り落として無力化するか」

 方針を決めると、ゆっくり歩き出す。

 俺の存在を認知した触手は、すべての先端を俺に向けると黒い液体の玉を放った。

 槍に光属性を付与してから当たりそうなものだけ叩き落とす。地面に当たると、じゅわっと音がして消滅した。

「吸うだけじゃなく吐き出すこともできるのか」

 ベラトリックスは、よくあれから肉片を手に入れたな。さすが魔女である。

 歩みを止めずに進んでいると黒い液体の玉を放つのが止まった。近くなったので別の攻撃方法を試すつもりか。

 警戒していると触手が伸びてきた。先端の針で突き刺そうとしてくるので、最小の動きでかわし続ける。

 汚染獣は肉体の一部だけでも本能に従って動くが、その能力は本体の力に依存する。この程度なら、やはり元は小型で間違いない。すると大型は別の所に潜んでいる可能性があるのか……?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...