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第16話 私は遠慮しておきます
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「何をされるんですか」
「汚染獣に気づかれないように少しずつ村一帯の浄化を行う。これで勇者が来るまで時間が稼げるだろう」
すべての領域をいっきに光属性の魔力で浄化してしまうと、汚染獣が天敵の存在に気づいて逃げる可能性がある。また近くに大型の汚染獣がいた場合は逆に攻めてくる場合もあり、現在の戦力では太刀打ちできない。
だから援軍を待ちつつ延命処置をする方針に決めたのだ。
「あとはこの石碑も綺麗に掃除しよう。御利益があるかもしれん」
「いいですね! 絶対にあります!」
死後、霊になって地上にとどまる魂もあると聞くが、石碑は墓ではないため、もしソーブザが霊となって地上にいたとしてもここにはいないだろう。
ただの気休めだ。
そんなものに縋りたくなるほど大型の汚染獣は恐ろしいのである。
正直フルメンバーでも出会いたくはない存在だった。
「明日から忙しくなりそうですねっ」
「嬉しそうだな」
「こんな私でも、まだポルン様のお役に立ててますからね」
クビになっても俺を勇者として敬ってくれているようだ。
期待の重さと嬉しさが混ざり合って複雑な気持ちである。
「別に俺じゃなく新勇者の方に付いていっても良いんだぞ」
「私はポルン様一筋ですから」
真っ直ぐ見られてしまったら拒否できない。女性からの押しに弱いのは俺の悪いところだと分かっているものの、どうしても変われないのだ。
相手が男なら即断るんだけどなぁ。
ふぅとため息をはく。
どうやったら女遊びを理解してもらえるだろう?
やはり初心に戻って逃げるべきか?
考えても最適な答えが思い浮かばない。
「夜風が冷たくなってきました。宿に戻りますか?」
宿の客も家に帰っているころだろう。楽しく話す気分でもなくなったので、ベラトリックスの提案を受け入れることにした。
立ち上がって彼女を見る。
「そうしよう」
田舎村なので悪党に襲われることはないが周囲は暗いので危ない。
明かりの魔法を使ってもらい帰路についた。
* * *
いつもより早く目覚めてしまった。隣のベッドではベラトリックスが静かな寝息を立てている。
枕を抱きしめながら涎を垂らしているので、良い夢でも見ているのだろう。
窓から外を見ると、薄暗い中、男どもが祭りの後片付けをしている。
表情は明るく希望に溢れているよう感じるのは、周囲を覆う瘴気が薄くなったからだ。この村は見捨てられてなかった、救いの手はすぐそこにある、そういった前向きな気持ちが彼らを支えているのだろう。
それほど光属性を持つ者の影響力は大きく、人々の希望となる力がある。
だからこそ、私欲を抑えて清く正しく生きることを求められるのだ。
勇者時代の俺は力を持つ者の責任だと思って受け入れていた。
「おはようございます」
振り返ると目をこすりながらベラトリックスが体を起こしていた。
寝巻きを押し上げる二つの大きな山があり、先端が尖っている。生地が薄いのでこの場からでもハッキリと形が分かってしまう。
服がめくれて薄く割れた腹、縦長の綺麗なへそまで見えていて、無意識だろうが俺を誘惑している。
欲望に負けて押し倒してしまったら女遊びは遠ざかる。手を出すにしても何人もの女性と楽しんだ後だ。
こんな分かりやすいハニートラップに引っかかるほど愚かじゃないぞ!
「おはよう。俺は朝食をとろうと思うが、どうする?」
「……ちょっと今は無理そうです。残念ですけど遠慮しておきます」
朝が弱めのタイプだったから、まだ体が起きてないのだろう。
「それじゃ俺だけ食べてくる」
「行ってらっしゃい」
見送られて一階に降りる。
朝の仕込みは終わっているようで、カウンターにエーリカが座っていた。他に客はいないので暇そうだ。
「朝食を一つ頼みたい」
「少々お待ちくださいね」
昨日のことなんて無かったかのように普段通りだ。
適当な席で待っていると三人の男が入ってきた。手には農具があるので畑仕事に行く途中なのかもしれない。
「エーリカちゃん! 勇者様がいるんだって!」
「この兄ちゃんじゃねーのか?」
「お、そうだ! この男だ! ぼろ小屋で見たから間違いねぇ!」
ずかずかと歩いてくると、俺が座っている席を囲んだ。
体格が良いので圧迫感がある。
何を言われるのか警戒しながら待っていると急に泣き出した。
「うちの娘を助けてくれてありがとうッッッッ!!」
「ありがとう!」
「感謝している!!」
そういえば見たことがある顔だ。俺が助けた子供たちの親である。
勇者時代は護衛もいたので近づける人間は限られており、直接感謝の言葉を言われることはなかったので気恥ずかしいが、同時に嬉しさも感じる。
やったことに価値があると認められて内心で喜んでいるのだ。
我ながら単純だなと思うが、やる気は出てくる。
「人として当然のことをしたまでだ」
三人は俺の手を握ってきた。
男に触られる趣味はないのだが……。せめて母親がお礼に来てくれよ。それが夜だったら最高だ。
「さすが勇者様!」
「待ってくれ。俺は勇者を辞めた。今は別の人間がやっている」
誤解が広まって王家に睨まれたくないので、この部分だけは否定した。
「それでも助けてくれたことには変わりありません! 関係ないです!!」
「分かった! もういい! 手を離してくれ!」
興奮しているのか村人たちが顔をまで近づけてきたので、手を振りほどいて押しのける。
何が悲しくて男に迫られなきゃいけないんだよ。
「汚染獣に気づかれないように少しずつ村一帯の浄化を行う。これで勇者が来るまで時間が稼げるだろう」
すべての領域をいっきに光属性の魔力で浄化してしまうと、汚染獣が天敵の存在に気づいて逃げる可能性がある。また近くに大型の汚染獣がいた場合は逆に攻めてくる場合もあり、現在の戦力では太刀打ちできない。
だから援軍を待ちつつ延命処置をする方針に決めたのだ。
「あとはこの石碑も綺麗に掃除しよう。御利益があるかもしれん」
「いいですね! 絶対にあります!」
死後、霊になって地上にとどまる魂もあると聞くが、石碑は墓ではないため、もしソーブザが霊となって地上にいたとしてもここにはいないだろう。
ただの気休めだ。
そんなものに縋りたくなるほど大型の汚染獣は恐ろしいのである。
正直フルメンバーでも出会いたくはない存在だった。
「明日から忙しくなりそうですねっ」
「嬉しそうだな」
「こんな私でも、まだポルン様のお役に立ててますからね」
クビになっても俺を勇者として敬ってくれているようだ。
期待の重さと嬉しさが混ざり合って複雑な気持ちである。
「別に俺じゃなく新勇者の方に付いていっても良いんだぞ」
「私はポルン様一筋ですから」
真っ直ぐ見られてしまったら拒否できない。女性からの押しに弱いのは俺の悪いところだと分かっているものの、どうしても変われないのだ。
相手が男なら即断るんだけどなぁ。
ふぅとため息をはく。
どうやったら女遊びを理解してもらえるだろう?
やはり初心に戻って逃げるべきか?
考えても最適な答えが思い浮かばない。
「夜風が冷たくなってきました。宿に戻りますか?」
宿の客も家に帰っているころだろう。楽しく話す気分でもなくなったので、ベラトリックスの提案を受け入れることにした。
立ち上がって彼女を見る。
「そうしよう」
田舎村なので悪党に襲われることはないが周囲は暗いので危ない。
明かりの魔法を使ってもらい帰路についた。
* * *
いつもより早く目覚めてしまった。隣のベッドではベラトリックスが静かな寝息を立てている。
枕を抱きしめながら涎を垂らしているので、良い夢でも見ているのだろう。
窓から外を見ると、薄暗い中、男どもが祭りの後片付けをしている。
表情は明るく希望に溢れているよう感じるのは、周囲を覆う瘴気が薄くなったからだ。この村は見捨てられてなかった、救いの手はすぐそこにある、そういった前向きな気持ちが彼らを支えているのだろう。
それほど光属性を持つ者の影響力は大きく、人々の希望となる力がある。
だからこそ、私欲を抑えて清く正しく生きることを求められるのだ。
勇者時代の俺は力を持つ者の責任だと思って受け入れていた。
「おはようございます」
振り返ると目をこすりながらベラトリックスが体を起こしていた。
寝巻きを押し上げる二つの大きな山があり、先端が尖っている。生地が薄いのでこの場からでもハッキリと形が分かってしまう。
服がめくれて薄く割れた腹、縦長の綺麗なへそまで見えていて、無意識だろうが俺を誘惑している。
欲望に負けて押し倒してしまったら女遊びは遠ざかる。手を出すにしても何人もの女性と楽しんだ後だ。
こんな分かりやすいハニートラップに引っかかるほど愚かじゃないぞ!
「おはよう。俺は朝食をとろうと思うが、どうする?」
「……ちょっと今は無理そうです。残念ですけど遠慮しておきます」
朝が弱めのタイプだったから、まだ体が起きてないのだろう。
「それじゃ俺だけ食べてくる」
「行ってらっしゃい」
見送られて一階に降りる。
朝の仕込みは終わっているようで、カウンターにエーリカが座っていた。他に客はいないので暇そうだ。
「朝食を一つ頼みたい」
「少々お待ちくださいね」
昨日のことなんて無かったかのように普段通りだ。
適当な席で待っていると三人の男が入ってきた。手には農具があるので畑仕事に行く途中なのかもしれない。
「エーリカちゃん! 勇者様がいるんだって!」
「この兄ちゃんじゃねーのか?」
「お、そうだ! この男だ! ぼろ小屋で見たから間違いねぇ!」
ずかずかと歩いてくると、俺が座っている席を囲んだ。
体格が良いので圧迫感がある。
何を言われるのか警戒しながら待っていると急に泣き出した。
「うちの娘を助けてくれてありがとうッッッッ!!」
「ありがとう!」
「感謝している!!」
そういえば見たことがある顔だ。俺が助けた子供たちの親である。
勇者時代は護衛もいたので近づける人間は限られており、直接感謝の言葉を言われることはなかったので気恥ずかしいが、同時に嬉しさも感じる。
やったことに価値があると認められて内心で喜んでいるのだ。
我ながら単純だなと思うが、やる気は出てくる。
「人として当然のことをしたまでだ」
三人は俺の手を握ってきた。
男に触られる趣味はないのだが……。せめて母親がお礼に来てくれよ。それが夜だったら最高だ。
「さすが勇者様!」
「待ってくれ。俺は勇者を辞めた。今は別の人間がやっている」
誤解が広まって王家に睨まれたくないので、この部分だけは否定した。
「それでも助けてくれたことには変わりありません! 関係ないです!!」
「分かった! もういい! 手を離してくれ!」
興奮しているのか村人たちが顔をまで近づけてきたので、手を振りほどいて押しのける。
何が悲しくて男に迫られなきゃいけないんだよ。
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