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私の仲間は気が短いの(ヴァリィ視点)
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ポルン様が倒れてから一週間が経過している。トエーリエは着きっきりで回復魔法を使っているけど、魔力が枯渇しかけた体のダメージを癒やすのは難しい。生死の境を彷徨ったまま。最悪の場合、もう二度と起きない可能性すらある。
どうして、こんなことになってしまったのだろう。
一日に数度、必ず考えてしまっている。
人生で最大の後悔だ。立ち止まって泣き出したくなるけど、今はまだダメ。ポルン様を傷つけた主犯を捕まえ、殺さなきゃ。
騎士として正しく生きていくのは終わり。この瞬間から一人の女として復讐をすると決めて動いている。それは私だけじゃない、ベラトリックスやトエーリエだって同じだ。
契約相手を殺そうとし、特殊な汚染獣が隣国にいたという事実に焦っているメルベル宰相も非常に協力的で、私たちは国を動かしてバドロフ子爵を追い詰めようとしている。
手始めにバドロフ子爵が汚染獣を使って他領を侵略しようとしていたと情報を流し、ベルガンド王国に圧力をかけて強制調査をさせるように動いている。また光教会もテレサ経由で今回の事件を把握しているので、同時に圧力をかけていた。
断ったら勇者が派遣されなくなるどころか人類を裏切った国家として認定されてしまうため、貿易面でも大きなダメージを受ける。また国民が反発して革命を起こす可能性もあるし、正義という名の下に侵略してくる国家も出てくるはず。
面子の問題なんて言ってられる状況ではないので、ベルガンド王国は受け入れるしかない。
王家は圧力に屈して、調査隊をバドロフ子爵に派遣することが決まる。当然、私とベラトリックス、テレサも殺意を持って同行する。
証拠? そんなもの不要。何をしても殺すって決めていた。
* * *
調査隊と一緒に行動してバドロフ領へ入った。
まともな内政をしているみたいで領民たちの表情は明るく、商人たちに活気がある。そんな町の中を武装した集団が歩いているのだから、注目の的となっていた。色んな憶測が流れているようだけど、真実にたどり着いた人はいない。
汚染獣を使役してたなんて誰も思い浮かばない。
それが当然で計画、実行したバドロフ子爵がおかしい。
屋敷の前に着くと逃げ出せないように調査隊の兵がぐるりと囲った。
「これから突入する」
隊長に任命されている男が宣言すると、門を開いて敷地内には入っていく。もちろん私たちも無言で続く。近くにいる兵たちが何か言いたそうな顔をしていたけど、誰も声をかけてこなかった。
ずかずかと庭を歩いて玄関前に着くと、歳を取った白髪の執事が立ちふさがった。
「何事ですか! こんなことして許されると思っているのですか!?」
「バドロフ子爵は汚染獣を利用して国内を荒らしたと報告があった。強制調査する。どけ」
隊長が押しのけて屋敷に入っていく。
汚染獣という名を聞いて執事は顔を真っ青にさせて、呆然と立ち尽くしていた。
「ねえ、あなたは何か知っているの?」
肩に手を乗せて優しく聞いてみた。執事の背後に回り込んだベラトリックスは後頭部を掴んでいる。嘘やごまかしをするなら破裂させるつもりなんでしょう。別に私たちは証拠や証言なんていらないからね。関係者を殺せれば良いのだから問題はない。
「し、知らない!」
「本当?」
弓を引いたテレサが聞いた。
「汚染獣のことで嘘なんてつくはずない! 信じてくれ!」
演技のようには見えなかった。今はバドロフに会いたくて仕方がない。老人なんていつでも殺せるのだから、いったんは信じてあげることにする。
「いいでしょう。この場は生かしてあげる」
ベラトリックスに視線を送ると手を離した。テレサも弓の弦から手を離す。二人とも考えは同じみたい。バドロフの血を求めている。
「ここで大人しくしてなさい。逃げ出したら証拠がなくても殺すから」
「わ、わかりました」
執事を放置して玄関から屋敷の中に入る。
働いているメイドたちは泣いていて、子爵の家族だと思われる人たちは出かけようとしていたのか、高そうな服を着たまま兵に囲まれて逃げられないようになっている。重要人物の確保は順調に進んでいるみたいだけど、お話を聞きたいバドロフがいない。
三階に上がって執務室に入ってみるけど姿は無かった。
「隠し通路とかあるのかな?」
そう言った瞬間、ベラトリックスが魔法を使った。岩が次々と壁に当たり吹き飛ぶ。隣の部屋とつながり、外が見えるようになった。暴力的な対応ではあるけど効率は良い。近くに居た調査隊の兵は驚いていたけど文句は言ってこなかった。
「ないみたい」
「だったらどこかに隠れているのかも。他も見に行きましょう」
二人は私の提案にうなずいた。
事前に教えてもらっていた寝室に入ると、さっきと同じように魔法で壁を吹き飛ばして隠し通路や部屋がないか探すけど、何もなかった。予告なく突入したので逃げているとは思えない。どこかにいるはず。
屋敷を破壊しながら歩き回るけど、何も出てこない。二階も同じ。成果は全くなく一階に戻ると、調査隊の隊長と再会した。
「事前情報になかった地下室があった」
「中は?」
地下から逃げ出すことも考えられる。早く確認したい。
「ドアは施錠されていてわからない。破壊を頼めないか」
「案内して」
私を押しのけて会話に割り込んだのはベラトリックスだった。ややのけぞりながらも隊長はうなずき、小走りで移動する。
地下に続く階段は食堂の壁に隠されていた。飾り気のない石造りで、しばらく下っていくと目的地に到着する。
金属製のドアがあって先に進めないようになっていた。
スタスタと歩いたベラトリックスは鉄の扉に手をつける。
『ヒート』
接触対象を熱する魔法だ。冷えた食べ物を暖めるときに使うため、魔法使いなら大抵覚えている。殺傷能力が出るほどの威力はでないはずなんだけど……鉄の扉がドロドロに溶けてしまった。熱が離れている私にまで伝わってくる。もしかして魔法を改造した……? そんなことできたんだ。付き合いは長いはずなのに知らなかったよ。
ベラトリックスは周囲の空間を急速に冷やしながら奥へ進んでいく。
「行きましょう」
置いていかれるわけにはいかない。私とテレサも続いて溶けたドアを踏みつけ、部屋に入った。
逃げられそうな通路やドアはなく、頭を抱えた中年の汚い男がいた。あれがバドロフなのは服装からして間違いないと思う。姿を見たら怒りのあまり、即座に斬り殺しちゃうと思ったけど、意外と冷静でいる自分に驚いている。
「ベラトリックス、テレサ、手を出すのはまだ、だからね」
「わかってる。さっさと終わらせて」
部屋の壁に背を付けてベラトリックスは道を譲ってくれた。テレサは弓を調査隊の方に向けて構えた。私の尋問を邪魔させないようにしているみたい。気が利く人で助かった。
カツカツカツと音を立てて歩き、汚い中年男の前に立つ。
加齢臭がして鼻が曲がりそうになった。
「汚染獣について聞きたい。すべて教えて」
「ワシは関係ない! 許してくれ!」
私にしがみついて懇願しようとしてきたので、腹を蹴り飛ばした。ゴロゴロと転がって壁にぶつかると、うつ伏せのまま私を見た。
「汚い手で触るな。聞かれたことだけ答えろ」
「ううっ……」
情けないことに泣き出し始めた。これがバドロフなの? 想像していたよりも心が弱い。
「腕を一本飛ばせば口が軽くなるんじゃない?」
様子を見守っているベラトリックスは我慢できなくなったみたい。殺気を放ちながらバドロフ子爵を睨んでいる。
「ま、まってくれ! 言うから!」
「なら早くすること。私の仲間は気が短いの」
「一年前、ワシの前に汚染獣を操れるという男が来た。そいつが、すべてを知っている!」
命がかかっているというのに満足させる情報が出てこない。
さっさと殺すべきかな。
鞘から剣を抜いて切っ先を突きつける。
「それで終わり?」
「違う! まだある! その男は汚染獣を操る笛と瘴気を防ぐマスクをくれて……あれ、なんだ……思い出せない……どうして……俺は……そこまでして……ルビー鉱山を…………?」
頭を抱えながらバドロフ子爵は震え始めた。さらに喉の部分が太くなってうごめく。
考える前に剣で喉を突き刺してから、後ろに大きく跳躍する。
噴水のように血を出して床を汚していると、口から何かが飛び出た。
『ファイヤーアロー』
すかさずベラトリックスが魔法を放ったけど、飛び跳ねて天井に張り付き回避されてしまう。
見上げると、小さい人の形をした皮膚のない肉だった。
部屋中に瘴気が発生する。
「テレサ!」
「はいっ!」
名前を呼んですぐに光の矢が放た。汚染獣は動かずにいる。当たった。そう思ったけど、瘴気によってかき消されてしまった。
サイズは小さいけど能力が高い。本気を出せばこの場にいる人間は全員殺される。
バドロフは厄介なものを体内で飼っていたみたいね。
「ふむ……あの男はいないか。残念だ」
「あの男?」
「私の分体を消滅させた人間のことだ。どこに居るか知っているか?」
まさか……村で倒した汚染獣と意識を共有している個体……?
だたとしたら復讐のためにポルン様を狙っているかもしれない。殺さなきゃ。
「例え知っていたとしてもお前には教えない」
刀身を魔力で覆いながら、伸ばして天上にいる汚染獣を突いた。黒い体液を流しているけどダメージを与えた感覚はない。
「邪魔だな」
汚染獣から瘴気が吹き出た。体が侵されていく感覚があり、力が抜けていく。私やベラトリックスはまだ耐えているけど、調査隊やテレサは倒れてしまっている。生きてはいるけど意識は失っているみたい。
瘴気は止まるどころか濃くなっていくだけ。私はもうすぐ同じように倒れてしまいそう。そうなる前に、最後の攻撃を……。
「それ、止めなさい」
私と汚染獣の間に一人の女性――メルベル宰相が立った。
なぜこの国にいる。
「理由を言え」
「手駒だから死なれたら困るの。断ったら私が相手するけど、どうする?」
「…………貸しだからな」
「覚えておいてあげる」
部屋を満たしていた瘴気が消えると、天井に張り付いていた汚染獣は高速で移動して部屋から出て行ってしまった。体から瘴気が抜けきれない私たちは追えず、見逃してしまう。
「どうしてここに」
「特殊な汚染獣と聞いてたから、こうなるって予想できてたのよ。契約を遂行するまで勝手に死なないでね」
笑いながら地下室から出て行ってしまった。
人間に寄生して隠れ、交渉する汚染獣ども。過去に一度も遭遇しなかったのに、どうして今になって……。
大きな時代の変化を感じるには充分な出来事だった。
どうして、こんなことになってしまったのだろう。
一日に数度、必ず考えてしまっている。
人生で最大の後悔だ。立ち止まって泣き出したくなるけど、今はまだダメ。ポルン様を傷つけた主犯を捕まえ、殺さなきゃ。
騎士として正しく生きていくのは終わり。この瞬間から一人の女として復讐をすると決めて動いている。それは私だけじゃない、ベラトリックスやトエーリエだって同じだ。
契約相手を殺そうとし、特殊な汚染獣が隣国にいたという事実に焦っているメルベル宰相も非常に協力的で、私たちは国を動かしてバドロフ子爵を追い詰めようとしている。
手始めにバドロフ子爵が汚染獣を使って他領を侵略しようとしていたと情報を流し、ベルガンド王国に圧力をかけて強制調査をさせるように動いている。また光教会もテレサ経由で今回の事件を把握しているので、同時に圧力をかけていた。
断ったら勇者が派遣されなくなるどころか人類を裏切った国家として認定されてしまうため、貿易面でも大きなダメージを受ける。また国民が反発して革命を起こす可能性もあるし、正義という名の下に侵略してくる国家も出てくるはず。
面子の問題なんて言ってられる状況ではないので、ベルガンド王国は受け入れるしかない。
王家は圧力に屈して、調査隊をバドロフ子爵に派遣することが決まる。当然、私とベラトリックス、テレサも殺意を持って同行する。
証拠? そんなもの不要。何をしても殺すって決めていた。
* * *
調査隊と一緒に行動してバドロフ領へ入った。
まともな内政をしているみたいで領民たちの表情は明るく、商人たちに活気がある。そんな町の中を武装した集団が歩いているのだから、注目の的となっていた。色んな憶測が流れているようだけど、真実にたどり着いた人はいない。
汚染獣を使役してたなんて誰も思い浮かばない。
それが当然で計画、実行したバドロフ子爵がおかしい。
屋敷の前に着くと逃げ出せないように調査隊の兵がぐるりと囲った。
「これから突入する」
隊長に任命されている男が宣言すると、門を開いて敷地内には入っていく。もちろん私たちも無言で続く。近くにいる兵たちが何か言いたそうな顔をしていたけど、誰も声をかけてこなかった。
ずかずかと庭を歩いて玄関前に着くと、歳を取った白髪の執事が立ちふさがった。
「何事ですか! こんなことして許されると思っているのですか!?」
「バドロフ子爵は汚染獣を利用して国内を荒らしたと報告があった。強制調査する。どけ」
隊長が押しのけて屋敷に入っていく。
汚染獣という名を聞いて執事は顔を真っ青にさせて、呆然と立ち尽くしていた。
「ねえ、あなたは何か知っているの?」
肩に手を乗せて優しく聞いてみた。執事の背後に回り込んだベラトリックスは後頭部を掴んでいる。嘘やごまかしをするなら破裂させるつもりなんでしょう。別に私たちは証拠や証言なんていらないからね。関係者を殺せれば良いのだから問題はない。
「し、知らない!」
「本当?」
弓を引いたテレサが聞いた。
「汚染獣のことで嘘なんてつくはずない! 信じてくれ!」
演技のようには見えなかった。今はバドロフに会いたくて仕方がない。老人なんていつでも殺せるのだから、いったんは信じてあげることにする。
「いいでしょう。この場は生かしてあげる」
ベラトリックスに視線を送ると手を離した。テレサも弓の弦から手を離す。二人とも考えは同じみたい。バドロフの血を求めている。
「ここで大人しくしてなさい。逃げ出したら証拠がなくても殺すから」
「わ、わかりました」
執事を放置して玄関から屋敷の中に入る。
働いているメイドたちは泣いていて、子爵の家族だと思われる人たちは出かけようとしていたのか、高そうな服を着たまま兵に囲まれて逃げられないようになっている。重要人物の確保は順調に進んでいるみたいだけど、お話を聞きたいバドロフがいない。
三階に上がって執務室に入ってみるけど姿は無かった。
「隠し通路とかあるのかな?」
そう言った瞬間、ベラトリックスが魔法を使った。岩が次々と壁に当たり吹き飛ぶ。隣の部屋とつながり、外が見えるようになった。暴力的な対応ではあるけど効率は良い。近くに居た調査隊の兵は驚いていたけど文句は言ってこなかった。
「ないみたい」
「だったらどこかに隠れているのかも。他も見に行きましょう」
二人は私の提案にうなずいた。
事前に教えてもらっていた寝室に入ると、さっきと同じように魔法で壁を吹き飛ばして隠し通路や部屋がないか探すけど、何もなかった。予告なく突入したので逃げているとは思えない。どこかにいるはず。
屋敷を破壊しながら歩き回るけど、何も出てこない。二階も同じ。成果は全くなく一階に戻ると、調査隊の隊長と再会した。
「事前情報になかった地下室があった」
「中は?」
地下から逃げ出すことも考えられる。早く確認したい。
「ドアは施錠されていてわからない。破壊を頼めないか」
「案内して」
私を押しのけて会話に割り込んだのはベラトリックスだった。ややのけぞりながらも隊長はうなずき、小走りで移動する。
地下に続く階段は食堂の壁に隠されていた。飾り気のない石造りで、しばらく下っていくと目的地に到着する。
金属製のドアがあって先に進めないようになっていた。
スタスタと歩いたベラトリックスは鉄の扉に手をつける。
『ヒート』
接触対象を熱する魔法だ。冷えた食べ物を暖めるときに使うため、魔法使いなら大抵覚えている。殺傷能力が出るほどの威力はでないはずなんだけど……鉄の扉がドロドロに溶けてしまった。熱が離れている私にまで伝わってくる。もしかして魔法を改造した……? そんなことできたんだ。付き合いは長いはずなのに知らなかったよ。
ベラトリックスは周囲の空間を急速に冷やしながら奥へ進んでいく。
「行きましょう」
置いていかれるわけにはいかない。私とテレサも続いて溶けたドアを踏みつけ、部屋に入った。
逃げられそうな通路やドアはなく、頭を抱えた中年の汚い男がいた。あれがバドロフなのは服装からして間違いないと思う。姿を見たら怒りのあまり、即座に斬り殺しちゃうと思ったけど、意外と冷静でいる自分に驚いている。
「ベラトリックス、テレサ、手を出すのはまだ、だからね」
「わかってる。さっさと終わらせて」
部屋の壁に背を付けてベラトリックスは道を譲ってくれた。テレサは弓を調査隊の方に向けて構えた。私の尋問を邪魔させないようにしているみたい。気が利く人で助かった。
カツカツカツと音を立てて歩き、汚い中年男の前に立つ。
加齢臭がして鼻が曲がりそうになった。
「汚染獣について聞きたい。すべて教えて」
「ワシは関係ない! 許してくれ!」
私にしがみついて懇願しようとしてきたので、腹を蹴り飛ばした。ゴロゴロと転がって壁にぶつかると、うつ伏せのまま私を見た。
「汚い手で触るな。聞かれたことだけ答えろ」
「ううっ……」
情けないことに泣き出し始めた。これがバドロフなの? 想像していたよりも心が弱い。
「腕を一本飛ばせば口が軽くなるんじゃない?」
様子を見守っているベラトリックスは我慢できなくなったみたい。殺気を放ちながらバドロフ子爵を睨んでいる。
「ま、まってくれ! 言うから!」
「なら早くすること。私の仲間は気が短いの」
「一年前、ワシの前に汚染獣を操れるという男が来た。そいつが、すべてを知っている!」
命がかかっているというのに満足させる情報が出てこない。
さっさと殺すべきかな。
鞘から剣を抜いて切っ先を突きつける。
「それで終わり?」
「違う! まだある! その男は汚染獣を操る笛と瘴気を防ぐマスクをくれて……あれ、なんだ……思い出せない……どうして……俺は……そこまでして……ルビー鉱山を…………?」
頭を抱えながらバドロフ子爵は震え始めた。さらに喉の部分が太くなってうごめく。
考える前に剣で喉を突き刺してから、後ろに大きく跳躍する。
噴水のように血を出して床を汚していると、口から何かが飛び出た。
『ファイヤーアロー』
すかさずベラトリックスが魔法を放ったけど、飛び跳ねて天井に張り付き回避されてしまう。
見上げると、小さい人の形をした皮膚のない肉だった。
部屋中に瘴気が発生する。
「テレサ!」
「はいっ!」
名前を呼んですぐに光の矢が放た。汚染獣は動かずにいる。当たった。そう思ったけど、瘴気によってかき消されてしまった。
サイズは小さいけど能力が高い。本気を出せばこの場にいる人間は全員殺される。
バドロフは厄介なものを体内で飼っていたみたいね。
「ふむ……あの男はいないか。残念だ」
「あの男?」
「私の分体を消滅させた人間のことだ。どこに居るか知っているか?」
まさか……村で倒した汚染獣と意識を共有している個体……?
だたとしたら復讐のためにポルン様を狙っているかもしれない。殺さなきゃ。
「例え知っていたとしてもお前には教えない」
刀身を魔力で覆いながら、伸ばして天上にいる汚染獣を突いた。黒い体液を流しているけどダメージを与えた感覚はない。
「邪魔だな」
汚染獣から瘴気が吹き出た。体が侵されていく感覚があり、力が抜けていく。私やベラトリックスはまだ耐えているけど、調査隊やテレサは倒れてしまっている。生きてはいるけど意識は失っているみたい。
瘴気は止まるどころか濃くなっていくだけ。私はもうすぐ同じように倒れてしまいそう。そうなる前に、最後の攻撃を……。
「それ、止めなさい」
私と汚染獣の間に一人の女性――メルベル宰相が立った。
なぜこの国にいる。
「理由を言え」
「手駒だから死なれたら困るの。断ったら私が相手するけど、どうする?」
「…………貸しだからな」
「覚えておいてあげる」
部屋を満たしていた瘴気が消えると、天井に張り付いていた汚染獣は高速で移動して部屋から出て行ってしまった。体から瘴気が抜けきれない私たちは追えず、見逃してしまう。
「どうしてここに」
「特殊な汚染獣と聞いてたから、こうなるって予想できてたのよ。契約を遂行するまで勝手に死なないでね」
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