毒殺された脳筋マーシャルのやり直し~愛する領地と義妹のために俺は何度でも戦う~

わんた

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第19話 素直に答えれば妹に会わせてやっても良いぞ

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 プルップを逃してしまった後始末で忙しい。

 冒険者ギルド職員への事情説明、崩壊した冒険者ギルドの代わりになる建物の手配、魔族が街に潜んでないか徹底した捜索、治安維持強化など、作業は山のようにある。

 また魔族が出現したので急ぎ父に報告の手紙を出したが、届くのは明日以降になるだろう。魔の森で発生している問題が解決するまでは戻ってこないだろうし、街の安全は引き続き俺が守らなければいけない。



 寝不足の状況が続いているのに休むことなく働き続けている俺は、屋敷の地下にある特別な牢獄エリアに来ている。

 空気は淀んでいて冷たい。どこからか糞便の臭いもただよってくるので、数日滞在しただけで病気になってしまいそうだ。

 コツコツと足音を立てながら石畳の通路を進む。左右には牢があり、特別な重犯罪者が鎖に繋がられている。

 声を出す気力すら残ってないようで、横たわりながら濁った瞳で俺を見ているだけ。顔色が悪いのでそろそろ死ぬかもしれない。罪を犯したことを後悔しながら誰にも知られず屍となるが良い。お前たちには、苦しみながら死ぬ義務があるのだから。

 通路の途中に金属製のドアがあるので足を止める。
 看板には尋問室と書かれていた。

 鍵を取り出して開場してから中に入る。

 鉄の椅子に座らせられ、手と足を紐で拘束されている男――錬金術師のピーテルがいた。拷問は禁止させているのでケガはしていないが、眠る時間すら与えず尋問を続けているので、憔悴しきった顔をしている。髪は乱れて頬が腫れているところから、目覚ましついでにビンタぐらいはされたんだろうな。

 ピーテルの隣には副騎士団長のローバーが立っていて、俺を見ると笑顔になった。

「ご足労いただきありがとうございます」
「情報は得られたか?」
「隠し鉱山の情報を漏らしたのは間違いないようです」
「ほぅ……」

 我が家の生命線を冒険者ギルドに流しやがったのか。家族の面倒まで見てやったのに裏切るとは良い度胸じゃないか。

「理由は?」
「黙ったままです」
「わかった。後は俺が引き継ぐ。ローバーは仮眠を取った後、プルップ調査の指揮を執ってくれ」
「かしこまりました」

 ローバーが出て行くと重い音を立ててドアが閉まる。
 ガチャリと鍵のかかる音がした。
 
 これでピーテルと二人っきりだ。

「なぜギルドに情報を流した?」
「…………」

 無反応か。睨みつけることさえしないとは、恩も怨みもないってことなのだろうか。

 ゆっくりと歩き、ピーテルの耳に口を近づける。汗臭いが我慢だ。

「エウロ村を狙っている野盗がいると聞いた。大切な妹が無事だといいな」
「マーシャル様! まさか妹を人質に取るつもりですかッ!!」
「よかったよ。叫べるほど元気じゃないか」

 笑いながら顔を離す。

 エウロ村には愛しい妹が住んでいるからな。野盗、いや、ブラデク家から派遣された兵士に荒らされたくないんだろう。脅しとしては充分な効果を発揮している。

「なぜイスカリに情報を漏らした?」
「その前に妹の安全を……グハッ」

 腹を蹴り上げるとピーテルは咳き込んでしまう。力は加減したので内臓は破裂していない。尋問は引き続き行える。

「俺の質問に答えろ」

 きりっと睨みつけてくる。反抗的な目をしているな。自分の立場を思い知らせる必要があるか?

 いや、違うな。逆に希望を与えてやろう。

「素直に答えれば妹に会わせてやっても良いぞ」
「ほ、本当か?」

 質問に答えず、壁により掛かってピーテルをじっと見る。
 しばらく時間が経過すると、ふぅと息を吐いて語り出す。

「鉱山の存在が周囲に知れ渡れば、自由になれると思ったんです」
「妹に会いたかったのか」

 首を縦に振ってから、ピーテルは罪を告白するように話し出す。

「借金取りに追われていた私に、働く環境とお金を用意してくれたことには感謝しています。ですが、結婚するという話を聞いてどうしても我慢できなくなったんです。妹の晴れ姿をこの目に焼き付けたいと思うのは、おかしいことでしょうか? マーシャル様ならこの気持ち、分かってもらえるのではないでしょうか」

 全てを捨てて妹を取ろうとする考えは理解できる。俺も似たような立場になったら、同じ選択をするはずだ。

 しかしだからといって、ピーテルの罪を許す理由にはならん。

「もう一つ聞きたいことがある。ピーテルからイスカリに話を持ちかけたのか?」
「ご想像の通りです。手紙を出した際、イスカリに取引を持ちかけられました」
「なるほど……そういうことか」

 少しだけ全容が見えてきたぞ。ストークと繋がっていたのはイスカリの方で、ブラデク家の情報を得ようとしてピーテルに近づいたのだ。ヤツらとしては、脅せる情報が手に入れば内容はどうでも良かったんだろう。偶然手に入れたものが特大のネタだというのだから、盛大に喜んだはず。

 毒殺されたときにもストークは隠し鉱山のことを知っていたから、初回の死の時もピーテルは裏切っていたんだろう。愛する領地をクソに売り飛ばすとは許せん。

 激しい怒りを覚えるが、内に留めて外には出さない。冷静に話を進める。

「取引の内容は?」
「ブラデク家の情報を渡す代わりに、自由の身にしてくれる、というのものです」
「お前、そんな与太話をすぐに信じたのか?」
「そんなことありません。最初は拒否しました」

 冒険者ギルド長とはいえ、辺境伯であるブラデク家に手は出せない。秘匿情報をもっているピーテルが解放されるなんてあり得ない。

「だが取引に応じた。なぜだ?」
「…………言えません」
「エウロ村に野盗が現れるとしても、か?」
「はい」

 何かを訴えかけるような目をしながら俺を見ていた。

 隠す理由があるようだ。なんとなく心当たりがあるので、剣を抜くとピーテルの服を切り裂く。

 予想は的中していたようで、胸に小さな魔方陣が刻み込まれていた。
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