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第20話 無理だ諦めろ
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あれは奴隷につける『従属の呪い』がベースとなった『口封じの呪い』である。決められた言葉がいえなくなるほか、遠隔操作で心臓を潰すこともできるので、敵地で侵入捜査させる兵を送るときに使う。
だから俺も存在と魔方陣の形は覚えていたのだ。
非常に強力な呪いではあるからこそ、平民での利用は許可されていない。例え豪商が金を積んだとしても不可能である。見つかれば即処刑だ。
人を縛って良いのは貴族、しかも上位の者だけという発想の元、制限されているのである。
ちなみに奴隷は人ではないので『従属の呪い』で縛ってもいいらしい。俺にはよく分からない建前を使って、例外を作っているのだ。
「呪いをかけるほど、お前は信用されてなかったんだな」
『口封じの呪い』は使えるものが限られているので、自然と犯人は絞られてしまう。今回の場合は侯爵以上の存在が関わっているとわかる。そんな情報を俺に渡してでも、呪いをかけなければいけないと思われていたのだ。
「この通り。取引の内容は言えません。もちろん、呪いをかけた人たちの名前も。どうされますか?」
目の奥に怯えがある。俺が妹を殺す判断を下さないか心配で仕方がないんだろう。
「妹が生き残るためなら、どのような環境下でも耐えられるか?」
「もちろんです。すべてを犠牲にする覚悟があります」
俺を裏切ったヤツの言葉なんて信じる理由は一切ないのだが、妹のために何でも受け入れるという点だけは気に入った。俺もナターシャのためなら何でもするつもりではあるので、共感できるのだ。そう思うと妹を殺すというのは、気が引けてくるから面白い。ピーテルを少し気に入ってしまった俺の負けだ。良いだろう。望み通り生かしてやるか。奴隷としてな。
「では妹は生かしてやろう。結婚祝いだって送ってやる」
喜んだ顔をしたが。まだ早いぞ。
「その代わりピーテルは奴隷になってもらおう。妹に手紙を送るのも禁止だ。死ぬまで屋敷の中でゴーレムの研究をすることになる。それでもいいか?」
「断ったら……」
「妹が住む村に野盗が現れるだろうな」
「……わかりました。奴隷になることを受け入れます」
ガクッと頭を下げた。妹に連絡すらできない環境を嘆いているのだろうが、殺されなかっただけありがたいと思え。
俺じゃ『口封じの呪い』は解呪できないので魔導士を連れてこなければいけない。人を呼びに行くか。
「うぐぐっ、ガアアァツッ!!」
ピーテルが頭を上げると苦悶の表情を浮かべている。固定されている手足を動かそうとして皮膚が破れ、血が流れ出る。目は充血していて真っ赤だ。口からはよだれが出ていて失禁までしていた。
「クソッ! 呪いが発動したのか!」
秘密裏に進めていたのだが、ピーテルが捕まったことを知ったようだ。
街の中にスパイが紛れ込んでいる可能性は高いな。
「だ、ずげて」
「無理だ。呪いが発動したら誰も止められない」
残念ながらピーテルは死ぬ。ゴーレムを作れる錬金術師を新しく探さなければ。
「だのみまず……なんでぼするどで」
「無理だ諦めろ」
ばっさりと切り捨てると、恨むような目をしてきた。
「呪いを受け入れた時点で命を他人に預けると決めたんだ。こうやって、突然死ぬのもわかっていたことだろ。運命だと思って受け入れろ」
俺は運命ってやつは嫌いなので最後まで抗うが、ピーテルが諦めるには必要な言葉だったはず。
お互いに妹が好きな者同士だ。
最後に悔いなく逝けるよう、慈悲を与えようじゃないか。
「お前が死んでも妹の面倒だけは見てやる。誰かと違って義理堅い男だから安心していいぞ」
「まーじゃるざま」
苦しそうにしているが、どこか安心したようにも見える。俺への恨みはあるかもしれないが、善人でない自覚はあるので甘んじて受け入れよう。
俺が死んだ後に……いや。なぜか蘇るから死ねないのか? そういえば忙しくて放置していたが、死んでも過去に戻ってやり直せる現象について調べないと。後始末が終わったらさっさと行動を始めよう。
「……」
考え事をしていたら、いつのまにかピーテルが息絶えていた。
「最後まで見られなかった。すまんな」
まあ最低限伝えるべきことは言ったのだから良いか。それよりも今後について考えなければいけないことが山のようにある。
特に、死ぬと人生をやり直せる理由については優先度が高い。ナターシャの次ぐらいに。
* * *
屋敷へ戻ると、金の鉱山の情報が漏れたことを手紙に書くと父に送った。これで状況は共有できるだろう。
少し時間ができたので書斎へ入ることにする。
目的は死に戻る現象について調べることだ。
魔導士になるナターシャのために魔法関連の本を買ってあった。
書斎のはじにある本棚に置いてあったのですぐ見つけると、適当に開いて読んでみる。
……わからん。本当に俺の知っている言語で書かれているのか? ゴブリンの話す言語だと言われたほうが納得がいくほど、理解ができない。ちゃんと解読できたナターシャの偉大さを感じるな。
だが諦めるわけにはいかないので、別の本を手に取って調べてみる。
お、今度は何を書いてあるのか分かりそうだ。ええと、魔法には属性があると。これは知っている。火、風、水、土、光、闇が大属性で、氷、植物、音、精神といった種類は全てマイナー属性となるのだ。
魔族の場合は限られた属性しか使えないが、人は勉強さえすれば全属性扱えるようになる。ただ一つの属性を極めようとしたら人生をかけても足りないので、そこそこ使える属性を三つ覚えるのが一般的だ。
本を読みながらマイナー属性を見ていくと、意外と量が多い。数ページ分ある。その中で気になったものが一つあり、それは時空属性であった。
だから俺も存在と魔方陣の形は覚えていたのだ。
非常に強力な呪いではあるからこそ、平民での利用は許可されていない。例え豪商が金を積んだとしても不可能である。見つかれば即処刑だ。
人を縛って良いのは貴族、しかも上位の者だけという発想の元、制限されているのである。
ちなみに奴隷は人ではないので『従属の呪い』で縛ってもいいらしい。俺にはよく分からない建前を使って、例外を作っているのだ。
「呪いをかけるほど、お前は信用されてなかったんだな」
『口封じの呪い』は使えるものが限られているので、自然と犯人は絞られてしまう。今回の場合は侯爵以上の存在が関わっているとわかる。そんな情報を俺に渡してでも、呪いをかけなければいけないと思われていたのだ。
「この通り。取引の内容は言えません。もちろん、呪いをかけた人たちの名前も。どうされますか?」
目の奥に怯えがある。俺が妹を殺す判断を下さないか心配で仕方がないんだろう。
「妹が生き残るためなら、どのような環境下でも耐えられるか?」
「もちろんです。すべてを犠牲にする覚悟があります」
俺を裏切ったヤツの言葉なんて信じる理由は一切ないのだが、妹のために何でも受け入れるという点だけは気に入った。俺もナターシャのためなら何でもするつもりではあるので、共感できるのだ。そう思うと妹を殺すというのは、気が引けてくるから面白い。ピーテルを少し気に入ってしまった俺の負けだ。良いだろう。望み通り生かしてやるか。奴隷としてな。
「では妹は生かしてやろう。結婚祝いだって送ってやる」
喜んだ顔をしたが。まだ早いぞ。
「その代わりピーテルは奴隷になってもらおう。妹に手紙を送るのも禁止だ。死ぬまで屋敷の中でゴーレムの研究をすることになる。それでもいいか?」
「断ったら……」
「妹が住む村に野盗が現れるだろうな」
「……わかりました。奴隷になることを受け入れます」
ガクッと頭を下げた。妹に連絡すらできない環境を嘆いているのだろうが、殺されなかっただけありがたいと思え。
俺じゃ『口封じの呪い』は解呪できないので魔導士を連れてこなければいけない。人を呼びに行くか。
「うぐぐっ、ガアアァツッ!!」
ピーテルが頭を上げると苦悶の表情を浮かべている。固定されている手足を動かそうとして皮膚が破れ、血が流れ出る。目は充血していて真っ赤だ。口からはよだれが出ていて失禁までしていた。
「クソッ! 呪いが発動したのか!」
秘密裏に進めていたのだが、ピーテルが捕まったことを知ったようだ。
街の中にスパイが紛れ込んでいる可能性は高いな。
「だ、ずげて」
「無理だ。呪いが発動したら誰も止められない」
残念ながらピーテルは死ぬ。ゴーレムを作れる錬金術師を新しく探さなければ。
「だのみまず……なんでぼするどで」
「無理だ諦めろ」
ばっさりと切り捨てると、恨むような目をしてきた。
「呪いを受け入れた時点で命を他人に預けると決めたんだ。こうやって、突然死ぬのもわかっていたことだろ。運命だと思って受け入れろ」
俺は運命ってやつは嫌いなので最後まで抗うが、ピーテルが諦めるには必要な言葉だったはず。
お互いに妹が好きな者同士だ。
最後に悔いなく逝けるよう、慈悲を与えようじゃないか。
「お前が死んでも妹の面倒だけは見てやる。誰かと違って義理堅い男だから安心していいぞ」
「まーじゃるざま」
苦しそうにしているが、どこか安心したようにも見える。俺への恨みはあるかもしれないが、善人でない自覚はあるので甘んじて受け入れよう。
俺が死んだ後に……いや。なぜか蘇るから死ねないのか? そういえば忙しくて放置していたが、死んでも過去に戻ってやり直せる現象について調べないと。後始末が終わったらさっさと行動を始めよう。
「……」
考え事をしていたら、いつのまにかピーテルが息絶えていた。
「最後まで見られなかった。すまんな」
まあ最低限伝えるべきことは言ったのだから良いか。それよりも今後について考えなければいけないことが山のようにある。
特に、死ぬと人生をやり直せる理由については優先度が高い。ナターシャの次ぐらいに。
* * *
屋敷へ戻ると、金の鉱山の情報が漏れたことを手紙に書くと父に送った。これで状況は共有できるだろう。
少し時間ができたので書斎へ入ることにする。
目的は死に戻る現象について調べることだ。
魔導士になるナターシャのために魔法関連の本を買ってあった。
書斎のはじにある本棚に置いてあったのですぐ見つけると、適当に開いて読んでみる。
……わからん。本当に俺の知っている言語で書かれているのか? ゴブリンの話す言語だと言われたほうが納得がいくほど、理解ができない。ちゃんと解読できたナターシャの偉大さを感じるな。
だが諦めるわけにはいかないので、別の本を手に取って調べてみる。
お、今度は何を書いてあるのか分かりそうだ。ええと、魔法には属性があると。これは知っている。火、風、水、土、光、闇が大属性で、氷、植物、音、精神といった種類は全てマイナー属性となるのだ。
魔族の場合は限られた属性しか使えないが、人は勉強さえすれば全属性扱えるようになる。ただ一つの属性を極めようとしたら人生をかけても足りないので、そこそこ使える属性を三つ覚えるのが一般的だ。
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