借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた

文字の大きさ
14 / 64

第14話 接客は面倒

しおりを挟む
 ミスラムを錬成すると、操作の習熟に時間を使うことにした。

 元々、下位精霊を使役することに慣れていたユミは、あっという間に操作を覚えてしまう。また武具としても使えるよう、命令になるキーワードをミスラムに仕込んだので、今度ドラゴンと会ったら正面からでも戦えるはずだ。

 ユミがミスラムの練習をしている間、俺は何をしていたかといったら、何もしていなかった。

 部屋でゴロゴロしながら錬成した物を見て、ニヤニヤと笑いながら整備していただけ。

 後はご飯を食べたぐらいか。

 お店を追い出されてから、最も充実した日々だった。

 だけど、そろそろこの生活も終わらせないといけない。8月も中旬となってしまい、家を追い出される日が近づいてしまったのだ。

「マスター、お金はどうします?」

 ベッドに座り、銀色のミスラムを抱きながらあごを乗せているユミが質問をした。柔らかいので気持ちよさそうである。

 回復ポーションが入っているびんを磨いている手を止めて、考えてみるけど答えは出ない。

「どうしようかねー」

 ダンジョン行商が大変だと分かってしまった。

 お金のためにまたやらないといけないけど、ヤル気が出てこない。

 外に出るのが億劫おっくうだ。

 天から勝手に素材が落ちてこないかなぁ。あ、ついでにお金もね。

「このままだと路上生活になります。私はマスターと一緒ならそれでもいいですけど、部屋の物は差し押さえられてしまいますよ?」

 それは嫌だな。錬成した物を売るならともかく、取られるのは納得がいかない。

「でも働きたくないなぁ~~」

 俺の意志に反して、体はだらけている。

 いつものようにユミは半目で俺を見て、ミスラムをポンポンと軽く叩きながら呆れていた。

「そんなこと言っても返済期限は待ってくれませんよ?」
「まあね~」

 気のない返事をしながら、また回復ポーションの瓶を磨こうとしたらチャイムが鳴った。

 俺の家に来るなんて知晴さんか大家ぐらいだ。良い話ではなさそうなので無視していると、二度、三度と鳴る。

 在宅だと確信されているようで止まらない。

 居留守は失敗のようだ。

 ユミはミスラムを抱いたままベッドから立ち上がると、ドアを開ける。

「えーと、誠さん、でしたっけ?」
「おう。久しぶりというわけでもないが、元気にしていたか?」
「はい。ポーションを買っていただいたお金で、まともに食事ができるようになりましたから」
「食うに困るレベルだったのかよ……」

 契約している人工精霊が主人の悪口をさらっと行ったおかげで、俺の評価が下がってしまった。

 もっと敬うような言動をしても良いのではないか?

 優しい、かっこいい、とかそんな感じで。

「それで何のご用でしょうか?」
「回復ポーションが欲しければ家に来いって言ってただろ? だから来たんだが」
「ああ、そうでした」

 忘れてた。そんなこと言ってたな。

 ということはお金がもらえるのかな? 何もしなくても降ってきたよ。やったね。

「マスター、お客様です」
「対応は任せたよ」

 ユミは誠を家の中へ入れてしまったが、俺は回復ポーションの瓶を磨き始めた。

 店をやっていたときも、こんな感じだった。

 俺は何もせずに、バイトの店員やユミにまるっとお願いする運営スタイルなんだよね。

「追い出されても変わらないのですね」
「むしろ、変わると思っていた?」
「いえ。期待はしていませんでした」

 淡々と言われてしまうと、少しだけ罪悪感を覚える。

 やっぱりちょっと変わった方が良いのかな?

 飽きられて契約切られたら悲しいし、今回はちゃんと接客をしよう。

 立ち上がって誠に近づく。

「それで上級回復ポーションが欲しいの?」
「ああ。10本ぐらいお願いできるか」
「いいけど、この前買ったばかりじゃないか。使い切ったの?」
「強制依頼を受けちまってな。死ぬ可能性もあるから、多めに確保しておきたいんだ。他に対冷気ポーションもあれば買わせてくれ」

 ダンジョンもしくは探索者ギルドで、何か起こったのだろうか。

 きな臭い空気を感じるけど、世の中知らない方が幸せに過ごせることもある。誠が忠告しないなら俺には関係ないことなんだろうし、スルーしておこう。

「それもあるよ。対冷気ポーション4個も含めると……580万ぐらいになるけど」
「安いな」
「ダンジョン販売じゃないから定価なんだよ」
「裕真、お前相場が変わったの気づいてないのか? 今は上級回復ポーションが一本200万まで値上がっているんだぞ」
「錬金術ギルドの動きが早いですね」

 価格上昇について、ユミが突っ込みを入れた。

 確かに半月も経たずに定価が上がっている。早いどころじゃないぞ。

 価格のつり上げについて、俺が知るずっと前から準備していたんだろう。

「ふーん。二人も多少は事情を知っているみたいだな」
「まあね」

 事情を話すべきではないので、具体的なことは言わず、自慢げに返事をしておいた。

「それで、どうするんだ。俺は安い分には助かるが」
「計算が面倒だから前の相場でいいよ。友達価格って感じにしておく」

 580万も手に入れば家賃の滞納分は全額振り込める。家を追い出されることはなくなるので、それ以上のお金が欲しいとは思わなかった。

 それよりも誠と長く付き合えた方が、長期的には得になるはず。

「その代わり、安く買えたことは黙っていてね」
「約束する。裕真のことは他人には言わないさ」

 これなら知晴さんも怒らないだろうし、ギルドからも目を付けられない。

 今日は考えが冴え渡っている!

「あとは貴重な素材を手に入れたら安く譲ってください」

 ユミも冴えているようだ! 最高の条件を提示してくれた!

「ああ。任せろ。とびっきりのを持って帰ってやる」

 自信ありげに誠が言った。

 本当に期待しちゃうからね! 待っているから!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

処理中です...