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第14話 接客は面倒
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ミスラムを錬成すると、操作の習熟に時間を使うことにした。
元々、下位精霊を使役することに慣れていたユミは、あっという間に操作を覚えてしまう。また武具としても使えるよう、命令になるキーワードをミスラムに仕込んだので、今度ドラゴンと会ったら正面からでも戦えるはずだ。
ユミがミスラムの練習をしている間、俺は何をしていたかといったら、何もしていなかった。
部屋でゴロゴロしながら錬成した物を見て、ニヤニヤと笑いながら整備していただけ。
後はご飯を食べたぐらいか。
お店を追い出されてから、最も充実した日々だった。
だけど、そろそろこの生活も終わらせないといけない。8月も中旬となってしまい、家を追い出される日が近づいてしまったのだ。
「マスター、お金はどうします?」
ベッドに座り、銀色のミスラムを抱きながら顎を乗せているユミが質問をした。柔らかいので気持ちよさそうである。
回復ポーションが入っている瓶を磨いている手を止めて、考えてみるけど答えは出ない。
「どうしようかねー」
ダンジョン行商が大変だと分かってしまった。
お金のためにまたやらないといけないけど、ヤル気が出てこない。
外に出るのが億劫だ。
天から勝手に素材が落ちてこないかなぁ。あ、ついでにお金もね。
「このままだと路上生活になります。私はマスターと一緒ならそれでもいいですけど、部屋の物は差し押さえられてしまいますよ?」
それは嫌だな。錬成した物を売るならともかく、取られるのは納得がいかない。
「でも働きたくないなぁ~~」
俺の意志に反して、体はだらけている。
いつものようにユミは半目で俺を見て、ミスラムをポンポンと軽く叩きながら呆れていた。
「そんなこと言っても返済期限は待ってくれませんよ?」
「まあね~」
気のない返事をしながら、また回復ポーションの瓶を磨こうとしたらチャイムが鳴った。
俺の家に来るなんて知晴さんか大家ぐらいだ。良い話ではなさそうなので無視していると、二度、三度と鳴る。
在宅だと確信されているようで止まらない。
居留守は失敗のようだ。
ユミはミスラムを抱いたままベッドから立ち上がると、ドアを開ける。
「えーと、誠さん、でしたっけ?」
「おう。久しぶりというわけでもないが、元気にしていたか?」
「はい。ポーションを買っていただいたお金で、まともに食事ができるようになりましたから」
「食うに困るレベルだったのかよ……」
契約している人工精霊が主人の悪口をさらっと行ったおかげで、俺の評価が下がってしまった。
もっと敬うような言動をしても良いのではないか?
優しい、かっこいい、とかそんな感じで。
「それで何のご用でしょうか?」
「回復ポーションが欲しければ家に来いって言ってただろ? だから来たんだが」
「ああ、そうでした」
忘れてた。そんなこと言ってたな。
ということはお金がもらえるのかな? 何もしなくても降ってきたよ。やったね。
「マスター、お客様です」
「対応は任せたよ」
ユミは誠を家の中へ入れてしまったが、俺は回復ポーションの瓶を磨き始めた。
店をやっていたときも、こんな感じだった。
俺は何もせずに、バイトの店員やユミにまるっとお願いする運営スタイルなんだよね。
「追い出されても変わらないのですね」
「むしろ、変わると思っていた?」
「いえ。期待はしていませんでした」
淡々と言われてしまうと、少しだけ罪悪感を覚える。
やっぱりちょっと変わった方が良いのかな?
飽きられて契約切られたら悲しいし、今回はちゃんと接客をしよう。
立ち上がって誠に近づく。
「それで上級回復ポーションが欲しいの?」
「ああ。10本ぐらいお願いできるか」
「いいけど、この前買ったばかりじゃないか。使い切ったの?」
「強制依頼を受けちまってな。死ぬ可能性もあるから、多めに確保しておきたいんだ。他に対冷気ポーションもあれば買わせてくれ」
ダンジョンもしくは探索者ギルドで、何か起こったのだろうか。
きな臭い空気を感じるけど、世の中知らない方が幸せに過ごせることもある。誠が忠告しないなら俺には関係ないことなんだろうし、スルーしておこう。
「それもあるよ。対冷気ポーション4個も含めると……580万ぐらいになるけど」
「安いな」
「ダンジョン販売じゃないから定価なんだよ」
「裕真、お前相場が変わったの気づいてないのか? 今は上級回復ポーションが一本200万まで値上がっているんだぞ」
「錬金術ギルドの動きが早いですね」
価格上昇について、ユミが突っ込みを入れた。
確かに半月も経たずに定価が上がっている。早いどころじゃないぞ。
価格のつり上げについて、俺が知るずっと前から準備していたんだろう。
「ふーん。二人も多少は事情を知っているみたいだな」
「まあね」
事情を話すべきではないので、具体的なことは言わず、自慢げに返事をしておいた。
「それで、どうするんだ。俺は安い分には助かるが」
「計算が面倒だから前の相場でいいよ。友達価格って感じにしておく」
580万も手に入れば家賃の滞納分は全額振り込める。家を追い出されることはなくなるので、それ以上のお金が欲しいとは思わなかった。
それよりも誠と長く付き合えた方が、長期的には得になるはず。
「その代わり、安く買えたことは黙っていてね」
「約束する。裕真のことは他人には言わないさ」
これなら知晴さんも怒らないだろうし、ギルドからも目を付けられない。
今日は考えが冴え渡っている!
「あとは貴重な素材を手に入れたら安く譲ってください」
ユミも冴えているようだ! 最高の条件を提示してくれた!
「ああ。任せろ。とびっきりのを持って帰ってやる」
自信ありげに誠が言った。
本当に期待しちゃうからね! 待っているから!
元々、下位精霊を使役することに慣れていたユミは、あっという間に操作を覚えてしまう。また武具としても使えるよう、命令になるキーワードをミスラムに仕込んだので、今度ドラゴンと会ったら正面からでも戦えるはずだ。
ユミがミスラムの練習をしている間、俺は何をしていたかといったら、何もしていなかった。
部屋でゴロゴロしながら錬成した物を見て、ニヤニヤと笑いながら整備していただけ。
後はご飯を食べたぐらいか。
お店を追い出されてから、最も充実した日々だった。
だけど、そろそろこの生活も終わらせないといけない。8月も中旬となってしまい、家を追い出される日が近づいてしまったのだ。
「マスター、お金はどうします?」
ベッドに座り、銀色のミスラムを抱きながら顎を乗せているユミが質問をした。柔らかいので気持ちよさそうである。
回復ポーションが入っている瓶を磨いている手を止めて、考えてみるけど答えは出ない。
「どうしようかねー」
ダンジョン行商が大変だと分かってしまった。
お金のためにまたやらないといけないけど、ヤル気が出てこない。
外に出るのが億劫だ。
天から勝手に素材が落ちてこないかなぁ。あ、ついでにお金もね。
「このままだと路上生活になります。私はマスターと一緒ならそれでもいいですけど、部屋の物は差し押さえられてしまいますよ?」
それは嫌だな。錬成した物を売るならともかく、取られるのは納得がいかない。
「でも働きたくないなぁ~~」
俺の意志に反して、体はだらけている。
いつものようにユミは半目で俺を見て、ミスラムをポンポンと軽く叩きながら呆れていた。
「そんなこと言っても返済期限は待ってくれませんよ?」
「まあね~」
気のない返事をしながら、また回復ポーションの瓶を磨こうとしたらチャイムが鳴った。
俺の家に来るなんて知晴さんか大家ぐらいだ。良い話ではなさそうなので無視していると、二度、三度と鳴る。
在宅だと確信されているようで止まらない。
居留守は失敗のようだ。
ユミはミスラムを抱いたままベッドから立ち上がると、ドアを開ける。
「えーと、誠さん、でしたっけ?」
「おう。久しぶりというわけでもないが、元気にしていたか?」
「はい。ポーションを買っていただいたお金で、まともに食事ができるようになりましたから」
「食うに困るレベルだったのかよ……」
契約している人工精霊が主人の悪口をさらっと行ったおかげで、俺の評価が下がってしまった。
もっと敬うような言動をしても良いのではないか?
優しい、かっこいい、とかそんな感じで。
「それで何のご用でしょうか?」
「回復ポーションが欲しければ家に来いって言ってただろ? だから来たんだが」
「ああ、そうでした」
忘れてた。そんなこと言ってたな。
ということはお金がもらえるのかな? 何もしなくても降ってきたよ。やったね。
「マスター、お客様です」
「対応は任せたよ」
ユミは誠を家の中へ入れてしまったが、俺は回復ポーションの瓶を磨き始めた。
店をやっていたときも、こんな感じだった。
俺は何もせずに、バイトの店員やユミにまるっとお願いする運営スタイルなんだよね。
「追い出されても変わらないのですね」
「むしろ、変わると思っていた?」
「いえ。期待はしていませんでした」
淡々と言われてしまうと、少しだけ罪悪感を覚える。
やっぱりちょっと変わった方が良いのかな?
飽きられて契約切られたら悲しいし、今回はちゃんと接客をしよう。
立ち上がって誠に近づく。
「それで上級回復ポーションが欲しいの?」
「ああ。10本ぐらいお願いできるか」
「いいけど、この前買ったばかりじゃないか。使い切ったの?」
「強制依頼を受けちまってな。死ぬ可能性もあるから、多めに確保しておきたいんだ。他に対冷気ポーションもあれば買わせてくれ」
ダンジョンもしくは探索者ギルドで、何か起こったのだろうか。
きな臭い空気を感じるけど、世の中知らない方が幸せに過ごせることもある。誠が忠告しないなら俺には関係ないことなんだろうし、スルーしておこう。
「それもあるよ。対冷気ポーション4個も含めると……580万ぐらいになるけど」
「安いな」
「ダンジョン販売じゃないから定価なんだよ」
「裕真、お前相場が変わったの気づいてないのか? 今は上級回復ポーションが一本200万まで値上がっているんだぞ」
「錬金術ギルドの動きが早いですね」
価格上昇について、ユミが突っ込みを入れた。
確かに半月も経たずに定価が上がっている。早いどころじゃないぞ。
価格のつり上げについて、俺が知るずっと前から準備していたんだろう。
「ふーん。二人も多少は事情を知っているみたいだな」
「まあね」
事情を話すべきではないので、具体的なことは言わず、自慢げに返事をしておいた。
「それで、どうするんだ。俺は安い分には助かるが」
「計算が面倒だから前の相場でいいよ。友達価格って感じにしておく」
580万も手に入れば家賃の滞納分は全額振り込める。家を追い出されることはなくなるので、それ以上のお金が欲しいとは思わなかった。
それよりも誠と長く付き合えた方が、長期的には得になるはず。
「その代わり、安く買えたことは黙っていてね」
「約束する。裕真のことは他人には言わないさ」
これなら知晴さんも怒らないだろうし、ギルドからも目を付けられない。
今日は考えが冴え渡っている!
「あとは貴重な素材を手に入れたら安く譲ってください」
ユミも冴えているようだ! 最高の条件を提示してくれた!
「ああ。任せろ。とびっきりのを持って帰ってやる」
自信ありげに誠が言った。
本当に期待しちゃうからね! 待っているから!
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