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第35話 ダンジョンの奥から来た者
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隠れて背後に回ると絶刃を抜いた。
ヒヒイロカネの刀身は赤く、炎が揺らめいているように見える。全ての存在を両断できると、確信するほどの力を感じた。
「その武器、すごいな……」
斧を持った誠の仲間が食い入るようにして見ていた。他の人たちも似たり寄ったり。
じーちゃんが作った武器は、最前線で戦う探索者すら魅了する力を持っているようだ。
売りに出したら、いくらになるかな?
なんて邪な考えがよぎるぐらい、見ている人の反応はすごかった。
気づかれないようにドラゴンの背後に回る。最適なポジションについたので、後はチャンスを待つだけだ。ユミと久我さんが数秒の隙を作ってくれれば、喉元に絶刃を突き立てられるはず。
じっと黙って待っていると……背筋が凍り付くほどの悪寒を感じた。
凶暴化したドラゴンが可愛く思えるほどの圧力を感じる。
近くで激しい戦闘をしているというのに、カツン、カツンと地下2階へ向かう階段から音が聞こえ、この場にいる全員の動きが止まった。
特にドラゴンの反応は激しかった。尻尾を巻いて怯えている。
「ユミ! こっちに来るんだ!」
震える口を何とか動かして声を出すと、ハッとした顔をして駆けつけてくれた。
無事だというのに心配になって、小さい体を抱きしめる。
「怪我はない?」
「マスターは心配性ですね。見ての通り元気ですよ」
気丈に振る舞っているけど、ユミの声も震えていた。それほど近づいている存在が恐ろしいのだ。
少し遅れて久我さんもドラゴンから離れようとすると、階段の奥から黒い塊が飛び出してドラゴンの頭上に乗った。
見た目は年老いた老人だ。神官風の赤黒く禍々しいボロボロの服を着ていて、邪悪な存在のように感じるが、どこか神々しさも覚える。ヒヒイロカネのように神性を持っているのだろう。
肌は青白くて目はくぼんでいる。まるで死人のようだ。腰からは二対の黒い翼が映えていて、彼が人外の存在だと物語っている。
「グギャオォォォン!」
凶暴化しているというのに、ドラゴンは逃げだそうとしているが、足が折れて思うように動けない。
神官は手に持っていた杖を頭に突き刺した。
ミスラムの大剣ですら弾き飛ばした鱗や肉を容易に突き通して、脳に到達したようだ。ドラゴンは叫び声すら上げることなく、力が抜けて舌を出しながら倒れた。
「………………」
逃げるべきなんだろうけど、驚くべき光景を前にして誰も動けない。
ドラゴンを一撃で殺した神官は、久我さんを見ると口を開いた。
「━━━━━━」
俺たちには聞き取れない言葉で何かを言っている。
言語ではなく、発声自体が人間と違いそうだ。
「お前何者だ……?」
「━━━━」
人間の言葉は相手に伝わっているのだろうか。久我さんの声に神官は反応して、ドラゴンから飛び降りた。
無防備に歩き始めたので、久我さんはハンマーを振り上げて神官の頭上に落とした。
「え?」
驚いたのは誠の仲間の男だった。確か光輝とか呼ばれていたかな。
俺も声には出さなかったけど気持ちは同じだ。ハンマーをまともに受けた神官はダメージを受けてないのだ。肉体強化ポーションを使っていて、凶暴化したドラゴンの骨を折ったんだよ?
初めて見たときに感じた神性、これは勘違いじゃなさそうだ。普通の武器じゃ絶対に倒せない。
久我さんごとハンマーを吹き飛ばした神官は、俺と目が合った。そして視線は下がって絶刃に向かう。
「やば……っ!」
危険を察知したユミが俺の前に立つとミスラムを『小盾』にして、迫り来る神官の杖を受け止めた。
貫通こそしなかったけど、高圧縮したミスリル水銀を大きく歪めるほどの威力があって、俺はユミを抱きしめながら後ろに飛ばされて叩きつけられた。
「がはっ」
肺から空気が一気に抜けた。
視界がチカチカする。
骨は折れてはいない。三層構造の鎧、特に二層目にあるスライムをベースにした弾力性のあるクッションが、俺とユミの体を守ってくれたのだ。
追撃を警戒していたんだけど、久我さんと誠が神官と戦っていて足止めをしてくれているみたい。誠の方は買ったばかりの肉体強化ポーションを使っているようで、動きは敵に劣っていない。
ただ殴りつけても、ダメージは与えられてないみたいだけど……。
「天宮さん! 逃げるわよ!」
誠パーティ唯一の女性、圭子さんが俺の手を引っ張った。
時間を稼いでいる間にダンジョンを脱出しようとの計画なんだろう。あんなヤバイ相手を前にしても護衛の仕事を全うしようだなんて、誠のパーティは真面目だなぁ。
「ユミをお願い。俺は残るよ」
「マスター!?」
驚愕しているユミを圭子さんに渡して、俺は立ち上がった。ユミは抜け出そうとしているけど、光輝と信也が取り押さえてくれたので時間はかかっている。
神官を倒すには絶刃が必要。
数少ない友人を助けるために、無茶だと思われても俺は残る。
ポーチから回復ポーションを取り出して、飲み干してから瓶を投げ捨てると、俺は絶刃を鞘に収めて気配を消し、移動することにした。
ヒヒイロカネの刀身は赤く、炎が揺らめいているように見える。全ての存在を両断できると、確信するほどの力を感じた。
「その武器、すごいな……」
斧を持った誠の仲間が食い入るようにして見ていた。他の人たちも似たり寄ったり。
じーちゃんが作った武器は、最前線で戦う探索者すら魅了する力を持っているようだ。
売りに出したら、いくらになるかな?
なんて邪な考えがよぎるぐらい、見ている人の反応はすごかった。
気づかれないようにドラゴンの背後に回る。最適なポジションについたので、後はチャンスを待つだけだ。ユミと久我さんが数秒の隙を作ってくれれば、喉元に絶刃を突き立てられるはず。
じっと黙って待っていると……背筋が凍り付くほどの悪寒を感じた。
凶暴化したドラゴンが可愛く思えるほどの圧力を感じる。
近くで激しい戦闘をしているというのに、カツン、カツンと地下2階へ向かう階段から音が聞こえ、この場にいる全員の動きが止まった。
特にドラゴンの反応は激しかった。尻尾を巻いて怯えている。
「ユミ! こっちに来るんだ!」
震える口を何とか動かして声を出すと、ハッとした顔をして駆けつけてくれた。
無事だというのに心配になって、小さい体を抱きしめる。
「怪我はない?」
「マスターは心配性ですね。見ての通り元気ですよ」
気丈に振る舞っているけど、ユミの声も震えていた。それほど近づいている存在が恐ろしいのだ。
少し遅れて久我さんもドラゴンから離れようとすると、階段の奥から黒い塊が飛び出してドラゴンの頭上に乗った。
見た目は年老いた老人だ。神官風の赤黒く禍々しいボロボロの服を着ていて、邪悪な存在のように感じるが、どこか神々しさも覚える。ヒヒイロカネのように神性を持っているのだろう。
肌は青白くて目はくぼんでいる。まるで死人のようだ。腰からは二対の黒い翼が映えていて、彼が人外の存在だと物語っている。
「グギャオォォォン!」
凶暴化しているというのに、ドラゴンは逃げだそうとしているが、足が折れて思うように動けない。
神官は手に持っていた杖を頭に突き刺した。
ミスラムの大剣ですら弾き飛ばした鱗や肉を容易に突き通して、脳に到達したようだ。ドラゴンは叫び声すら上げることなく、力が抜けて舌を出しながら倒れた。
「………………」
逃げるべきなんだろうけど、驚くべき光景を前にして誰も動けない。
ドラゴンを一撃で殺した神官は、久我さんを見ると口を開いた。
「━━━━━━」
俺たちには聞き取れない言葉で何かを言っている。
言語ではなく、発声自体が人間と違いそうだ。
「お前何者だ……?」
「━━━━」
人間の言葉は相手に伝わっているのだろうか。久我さんの声に神官は反応して、ドラゴンから飛び降りた。
無防備に歩き始めたので、久我さんはハンマーを振り上げて神官の頭上に落とした。
「え?」
驚いたのは誠の仲間の男だった。確か光輝とか呼ばれていたかな。
俺も声には出さなかったけど気持ちは同じだ。ハンマーをまともに受けた神官はダメージを受けてないのだ。肉体強化ポーションを使っていて、凶暴化したドラゴンの骨を折ったんだよ?
初めて見たときに感じた神性、これは勘違いじゃなさそうだ。普通の武器じゃ絶対に倒せない。
久我さんごとハンマーを吹き飛ばした神官は、俺と目が合った。そして視線は下がって絶刃に向かう。
「やば……っ!」
危険を察知したユミが俺の前に立つとミスラムを『小盾』にして、迫り来る神官の杖を受け止めた。
貫通こそしなかったけど、高圧縮したミスリル水銀を大きく歪めるほどの威力があって、俺はユミを抱きしめながら後ろに飛ばされて叩きつけられた。
「がはっ」
肺から空気が一気に抜けた。
視界がチカチカする。
骨は折れてはいない。三層構造の鎧、特に二層目にあるスライムをベースにした弾力性のあるクッションが、俺とユミの体を守ってくれたのだ。
追撃を警戒していたんだけど、久我さんと誠が神官と戦っていて足止めをしてくれているみたい。誠の方は買ったばかりの肉体強化ポーションを使っているようで、動きは敵に劣っていない。
ただ殴りつけても、ダメージは与えられてないみたいだけど……。
「天宮さん! 逃げるわよ!」
誠パーティ唯一の女性、圭子さんが俺の手を引っ張った。
時間を稼いでいる間にダンジョンを脱出しようとの計画なんだろう。あんなヤバイ相手を前にしても護衛の仕事を全うしようだなんて、誠のパーティは真面目だなぁ。
「ユミをお願い。俺は残るよ」
「マスター!?」
驚愕しているユミを圭子さんに渡して、俺は立ち上がった。ユミは抜け出そうとしているけど、光輝と信也が取り押さえてくれたので時間はかかっている。
神官を倒すには絶刃が必要。
数少ない友人を助けるために、無茶だと思われても俺は残る。
ポーチから回復ポーションを取り出して、飲み干してから瓶を投げ捨てると、俺は絶刃を鞘に収めて気配を消し、移動することにした。
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