借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた

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第48話 裕真の悪いクセ

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 炭や乾燥した薪が山小屋の倉庫にあったので、今日の夕食は外でバーベキューだ。

 もうすぐで陽が沈みそうな中、電気ランタンをいくつか設置して光源を確保し、ビールを飲みながら食事をしている。

 俺とユミは酒が飲めないので、倒木に腰掛けて眺めていた。

「明日は放置ダンジョンの調査だ。今日は遠慮なく食って飲むぞーーーー!」

 パーティメンバーの士気を高めるためなのか、スーツを着ている誠は一人で叫んでいた。

 顔は真っ赤だ。よく見ればフラフラしていて今にも倒れそうである。

 意外とアルコールに弱いんだな。

 今はブツブツと何かを言いながら焼いた野菜を食べているので、まともに話せる状態じゃない。パーティメンバーも近寄ろうとしていなかった。

「高級な肉ばかりじゃん! ユミちゃんありがとう!」

 少年のように見える光輝さんがユミに飛びつこうとしたので、クロちゃんが間に入って邪魔をした。蜘蛛に抱きついたような形だ。

 光輝さんは逃げようとしているけど、糸が絡みついていて離れない。

 ナイスだ! よくユミを守った!

 鉄壁ガードのクロちゃんという異名を授けよう!

「あれは大丈夫なのかしら」
「天宮さんのペットらしいから問題ない…………よな?」

 唯一の女性メンバーである圭子さんに返事したのは、体格の良い信也さんだ。

 自信なさげに言って俺を見たので、首を横に振ってからユミを指さした。

 主人が誰なのか分かってくれたようだ。

 信也さんは口に入っている肉をビールで流し込んでから、ユミの隣に移動した。

「あれって黒死蜘蛛だよな? 間違って噛んだりしないのか?」
「優しい子だから、攻撃なんてしませんよ」
「そうは見えないが……」

 光輝さんの状態はさらに悪くなっていた。簀巻きにされて地面に横たわっている。

 糸によって口が塞がられていて、助けを求めることすら難しいそうだね。

 あ、目が合った。

 視線をそらす。

 だってユミにセクハラしようとした男だよ? もう少し反省した方が良いと思うんだ。

「本当に大丈夫か?」
「気になるなら言い聞かせましょうか」

 ユミがパチンと指を弾くと、クロちゃんが走りながら跳躍して抱きついた。体は軽いこともあって、よろけることなく受け止める。

「あの人もマスターのお仲間です。遊ぶだけなら許しますが、絶対に攻撃したらダメですよ」

 声を出せないクロちゃんは、前足を上げて返事をすると、また光輝さんの所へ戻った。

 簀巻きになった光輝さんを持ち上げ、クルクルと回している。

 遊んでいいと言われたから実行しているのかな。

「ユミちゃんは魔物と話せるのか?」
「虫系統限定ですけど」
「すげぇな。天宮さんの所は……」

 魔物と会話できる精霊なんて、レアという言葉ですら表現できないほど珍しい。もしかしたら世界で唯一の存在かもしれない。

 死体を使っているから肉体的な変化は見込めないが、精神的には違う。これからもっと成長していくだろう。

 将来が楽しみだ。

 偉業を成し遂げて欲しいとは思わないけど、せめて健全であってくれとは思う。

「裕真君~。何してるのかしら?」

 手持ち無沙汰になったのか、圭子さんが隣に座った。

 距離が近い。お尻を半分だけ横に動かして少し離れた。

「何もしてないことをしている、かな」
「哲学的ね。錬金術師はみんな頭がいいのかしら?」

 適当に流したつもりだったんだけど、評価されてしまったみたいだ。

 圭子さんは手に持っている缶ビールを一気に飲み干し、地面に置いた。

 物言いたそうな顔をしているけど、話のネタがないので黙ったまま。酔っ払って地面に倒れている誠を見ていると、痺れを切らしたのか質問をしてきた。

「ドラゴン討伐で使った回復ポーションは、裕真君だけしか作れないの?」
「錬金術師なら誰でも作れるんじゃないかな」

 最も需要の多い商品が回復ポーションだ。

 錬金術師であれば最初に学ぶレシピであり、作れない者はいない。

「違う、違う。腕すら瞬時に回復させるほどの効果を持った回復ポーションのことよ」
「どうだろう。他と比べたことがないからわからないなあ」

 錬金術のことばかり考えていたので、他の人が錬成した回復ポーションの品質なんて気にしたことなかった。

 俺と同じぐらいはできるんだと思っていたけど、圭子さんの口ぶりやドラゴン討伐で探索者が使っていた回復ポーションを見る限り、少し違いそうだ。

 人によっては、俺より数段落ちる回復ポーションしか作れないのだろう。

「だけど、もし回復ポーションの効果に差が出てしまうのであれば、原因は素材の品質とスキルの熟練度の差だね」
「どういうことかしら。後学のために詳しく教えてもらえない?」

 これは得意分野だ。知りたいというのであれば、じっくりと教えてあげよう。

「回復ポーションに使うのはブルーボルド草とエーテル純水なんだけど、両方ともエーテルの含有量によって品質が左右されるんだ。ブルーボルド草は、育てた環境によってエーテルをどこまで吸収できるかが決まるんだけど、最高品質はダンジョンの中。次点で、付近の土地が最適だと言われている。ここも空気中にあるエーテルは豊富だから、高品質のブルーボルド草が育成できると思うよ。それで、採取した後なんだけど……」
「ストーーーープっ!!」

 まだ序盤だというのに圭子さんに止められてしまった。

 遠慮しなくていいのに。不完全燃焼だ。もう少し説明させてくれないかな。

「品質の件はもうお腹いっぱい。もう大丈夫よ。今度はスキルの熟練度についてに教えて欲しいわ」

 簡単の部分を強調されてしまった。

 できるだけ頑張ってみるか。

「スキルは使えば使うほど、威力が上がって能力が向上するのはわかるよね?」
「うん。私は闇魔法のスキルを持っているんだけど、使い続けていたらいろいろとできるようになったわ」

 俺は包括ほうかつ系スキルと呼んでいるんだけど、魔法系統みたいに自由度の高まるスキルがある。逆に誠の粉砕ようにピンポイントのスキルは、使い続けていると威力が跳ね上がるんだよね。

 錬金術スキルは、どちらかというとピンポイントの方に属する。

「それはすごいね。俺が使うような錬金術スキルは、やれることは変わらないけど品質に影響するんだ。使えば使うほど、完成品の効果が高くなる」
「ってことは、裕真君はすごく練習したんだ」

 否定はしない。それなりに錬金術スキルを磨いてきたけど、品質が上がる要素はそれだけじゃないんだ。

 例えば生まれてから大人になるまでサッカーの練習量が同じでも、人によって上手さに差が出るように、錬金術スキルから得られる恩恵にも差が出る。

 熟練度の最大値にバラツキがあるのだ。

 俺はそれを才能の差と呼んでいた。

「うん、って言えるほどには頑張ったかな」

 会話を終わらせて立ち上がり、駆けつけてきたユミが飛び込んできた。

 腰を落としてしっかりと受け止める。

 地面に下ろしてあげると、手を引っ張られた。

「マスター、お肉が焼けました。食べに行きましょう!」
「わかった、わかったよ」

 抵抗せず足を動かすと、ユミは圭子さんの方を見ていた。

 眉がつり上がっていて怒っているようにも思える。

「気に入らないことでもあった?」
「ありません」

 俺を見るユミの表情は一変して、笑顔になった。

 機嫌が悪くないなら細かいことはどうでもいいか。

 お腹も減ったし、俺もお肉を食べよう。
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