裏切られた霊力使いの最強剣士は、拾った魔物付きの少女を弟子にしたら育てすぎてしまった〜二人は幻の理想郷を目指して旅をする〜

わんた

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重くない?

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「では私は衣装の用意をしてくるので、お昼になったら部屋に来てください」

 上手くハラディンに仕事を受けさせたペイジは紅茶を一気に飲み干すと席を立つ。

 パーティー用の服を取りに行くため宿を出て行ってしまった。

「どうするの?」

 先ほどの会話はメーデゥには難しかった。ほとんど理解していないので、今の疑問は仕事の話ではない。純粋に今日の予定を聞いたのだ。

 椅子に座りながら足をブラブラとさせて、今日も良いことが起こらないか期待している。

 毎日が楽しみに思えるなんて今までになかった感情だ。

 渇いていた心が急速に潤っている。

「俺たちは昼過ぎから仕事をすることになる。遊べるのは午前だけだ」

「どこにも行けない?」

 しゅんとへこんでしまい、フードの下で悲しそうな顔をしている。
 
「買い物をする時間ぐらいはあるだろう。そうだなぁ……」

 視線が食堂にまで持ってきたメーデゥの剣に向かう。自分のものというのが嬉しくて常に持ち歩いているのだが、さすがにボロボロになってきた。今はまだ大丈夫だが、近いうちに刃こぼれなども出てくるだろう。

 気前よいペイジから前金をもらっている。買い物をする余裕はありそうだ。

「新しい武器を見に行くぞ」

「うん」

 短い言葉であったため元気がないように感じるかもしれないが、嬉しそうな顔をしていた。

 新しい武器が手に入るかもといった期待感もあるが、何よりもハラディンと一緒に知らない場所を探索できることが楽しいのだ。一人では絶対に得られなかった充実感。それをメーデゥは、ようやく手に入れたのだった。

 早く外に出たい少女は残っていた食事を急いで口に入れていく。リスのように頬を膨らましながら咀嚼をしていて、貴族が見たらマナーについて指摘しただろうが、ハラディンは元気でよろしいなどと温かく見守っている。

 大雑把というか、懐の深い男であった。

「んっ、ぐっ」

 急いで飲み込むと胸を叩く。さらに水を流し込むと、ようやく詰まっていた肉が胃袋に落ちた。

「ぷはぁ……」

 コップを置きながら深く息を吐いた。

「大丈夫か?」

「食べ終わった」

 首を縦に振りながらメーデゥは目を輝かせながらハラディンを見る。

 早く行こうと無言で訴えかけていた。

 まだ彼の皿にはパンが残っている。腹も満たされてはいないが、そんなもの重要ではない。優先度は一番低いのだ。

「良いだろう。行こうか」

 食事は残したまま席を立つと外に出た。

 今日も天気が良い。太陽の光が強く日よけのためにフードをかぶる人も見かける。

 少し遅れて出てきたメーデゥは、自然とハラディンの手を握った。

 二人は目を合わせることもなく無言のまま歩き出す。

 大通りを進んで海から離れ、武具や鍛冶屋が集まっているエリアに向かっていると歩く人々の種類が変わった。

 冒険者や傭兵など荒っぽい見た目が多い。

 鎧を着込んでいるため全体的に大きく、また背の低いメーデゥが視界に入らないこともあって何度もぶつかってしまう。

 衝撃でフードが外れたらマズイ。ハラディンは手を離した。

 何かあったのかと見上げる少女の脇の下に手を入れ、持ち上げて抱きかかえる。これで誰にも衝突しない。安全だ。

「重くない?」

「刀より軽い。気にするな。それよりバレないようにして注意するんだ」

「うん」

 メーデゥは両腕を首に回して密着する。

 首に鼻をつけると汗臭い。筋肉のせいで体は固めで抱かれ心地は良くないのだが、密着している状態が嬉しい。

 上下に揺られながら、ゆっくりと流れる景色を見る。

 子供を抱きかかえている姿が珍しく視線を集めているが、魔物付きだとはバレていない。ハラディンが霊力を垂れ流していることもあって、誰かに絡まれることもない。

 人間が多い町なのに平和だ。
 それがメーデゥにとって不思議な時間だった。


 抱かれたまま無事、武器屋へ入った。

 店内にはナイフ、剣、槍、斧、弓といったオーソドックスな武器が置かれている。量産品は大きいカゴに入れられて雑に扱われているが、高級品はケースに入って一本一本丁寧に並べられている。

 客の懐具合にあった商品が提案できる店だ。

「ここでメーデゥの新しい武器を探す」

 今晩から仕事で使うため、重量やサイズは似たような剣を選びたい。

 抱きかかえている少女を床に立たせてから武器を見て行く。

 量産品は現在使っているものより質は悪いので買い換えの方補には入らない。だからといって高級品は、手持ちじゃ足りないほどの値段だ。前金だけじゃ買えない。

 であれば掘り出し品を買うしかないのだが、都合良く見つかることはなかった。

 顎に手を当てて悩んでいると、メーデゥが服の裾を引っ張る。

「どうした?」

「あれ」

 店主がいるカウンターの方を指さしていた。

「探している武器なんてないぞ」

「奥に金属と血が混じった臭い」

「ああ、なるほど。この店は、曰く付きの品を一時保管しているのかもしれん」

 持ち主が悲惨な死を遂げた、魔物が使っていたなどといった不吉な由来がある武器を曰く付きと言っている。

 戦いを生業にするものは縁起を気にするため、そういった武器は買わない。鉄くずにして別のものに作り替えるぐらいの価値しかなく、だからこそ安価で買えるのだ。

「どういうこと?」

「安く、良い武器が手に入るかもしれない、ってことだ。俺についてこい」

「うん」

 わざと足音を立ててカウンターにいる店主の前に立つ。

 霊力を強めに放出してプレッシャーを与えながら話しかけた。

「曰く付きの武器を買いたい」

「正気か?」

「もちろん。ちょっとした事情があるんだよ」

 放っている気配からベテランの戦士だというのはわかる。事情というのは気になるが、たまに新人をいびる戦士が度胸試しとして使うこともあるので、そういった類いの目的なんだろうと店主は自己完結した。

「……今は剣しかないぞ」

「それでいい。早く見せてくれ」
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