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ディートハルト様は私の申し出に即答せず、しばらく無言で考えていました。
「……あの丘で話していた頃は……気楽だった。悩んでいる時間がたくさんあった」
彼はつぶやくようにしてこう言った後、暖炉に近づくと、そばにある薪の束に手を伸ばしました。そしてしゃがみこみ、勢いの弱まった火をじっと観察します。彼が手に取った一本の木は少しくすんでいましたが、まっすぐな木目をしているように見えました。
(離縁……か……)
自ら申し出たにもかかわらず、言葉を戻したくてしかたありませんでした。安心しきって眠っているブチ丸の寝顔が、私のざわめく心と対照的に感じました。
婚姻関係を終わらせることが……進むべき道なのだと、自分に言い聞かせました。
「たまに思い出します。寝転がっていたディートハルト様の横顔。頬をかすめた風の匂い、夕空のきらめき……」
ディートハルト様は膝を伸ばし、握った薪をまた元に戻そうとするも、手を離しませんでした。
「約束を破ってしまって……ごめん」
「え?」
「のんびり生活を……送らせてあげるはずだった」
「私が至らなかったのです」
「君は……よくやってくれているじゃないか。どうしてそんなことを」ディートハルト様が首をかしげます。
「いえ……その……なんでもありません……」
愛を告げる権利はありません。それをしないという契約で、私は結婚しました。最後まで貫きたいと考えました。
「僕が契約を果たせなかった。君がもし王太子妃になったら、月に一度の会食だけでは難しい。式典などにも出てもらわなくてはいけないし、視察もある」
「大忙しですね……。そんな生活……望んでいません」
目から涙が出てきました。もっとディートハルト様と一緒にいたい。夫婦でいたい。
「契約違反に伴い……僕は君の家に賠償金を支払う。離縁の手続きについて……追って知らせるよ」
私は涙を拭いながら言いました。
「賠償金を頂く必要はありません。私も契約違反をしたのですから……」
ディートハルト様も目に涙を浮かべ、声をかすませます。
「君は契約違反なんてしていない! 僕が悪かったんだ。君が夢見たのんびり生活を、ぶち壊してしまった!」
彼はさきほど手に取っていた薪をつかみ直すと、火にくべました。ろうそくの火のようになっていた炎が息を吹き返し、薪のくすみが払われていきます。
「ビアンカ……君の幸せが……僕の幸せなんだ」
彼の思いを聞いた瞬間、私の心を縛りつけていた緒が解けました。
「ディートハルト様を好きになってしまいました。毎日毎日あなたのことを考えています。だから……」
「……あの丘で話していた頃は……気楽だった。悩んでいる時間がたくさんあった」
彼はつぶやくようにしてこう言った後、暖炉に近づくと、そばにある薪の束に手を伸ばしました。そしてしゃがみこみ、勢いの弱まった火をじっと観察します。彼が手に取った一本の木は少しくすんでいましたが、まっすぐな木目をしているように見えました。
(離縁……か……)
自ら申し出たにもかかわらず、言葉を戻したくてしかたありませんでした。安心しきって眠っているブチ丸の寝顔が、私のざわめく心と対照的に感じました。
婚姻関係を終わらせることが……進むべき道なのだと、自分に言い聞かせました。
「たまに思い出します。寝転がっていたディートハルト様の横顔。頬をかすめた風の匂い、夕空のきらめき……」
ディートハルト様は膝を伸ばし、握った薪をまた元に戻そうとするも、手を離しませんでした。
「約束を破ってしまって……ごめん」
「え?」
「のんびり生活を……送らせてあげるはずだった」
「私が至らなかったのです」
「君は……よくやってくれているじゃないか。どうしてそんなことを」ディートハルト様が首をかしげます。
「いえ……その……なんでもありません……」
愛を告げる権利はありません。それをしないという契約で、私は結婚しました。最後まで貫きたいと考えました。
「僕が契約を果たせなかった。君がもし王太子妃になったら、月に一度の会食だけでは難しい。式典などにも出てもらわなくてはいけないし、視察もある」
「大忙しですね……。そんな生活……望んでいません」
目から涙が出てきました。もっとディートハルト様と一緒にいたい。夫婦でいたい。
「契約違反に伴い……僕は君の家に賠償金を支払う。離縁の手続きについて……追って知らせるよ」
私は涙を拭いながら言いました。
「賠償金を頂く必要はありません。私も契約違反をしたのですから……」
ディートハルト様も目に涙を浮かべ、声をかすませます。
「君は契約違反なんてしていない! 僕が悪かったんだ。君が夢見たのんびり生活を、ぶち壊してしまった!」
彼はさきほど手に取っていた薪をつかみ直すと、火にくべました。ろうそくの火のようになっていた炎が息を吹き返し、薪のくすみが払われていきます。
「ビアンカ……君の幸せが……僕の幸せなんだ」
彼の思いを聞いた瞬間、私の心を縛りつけていた緒が解けました。
「ディートハルト様を好きになってしまいました。毎日毎日あなたのことを考えています。だから……」
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