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まずはベンジャミンとガーネットが寝ている間に、赤ん坊を牢の外に出した。ゆりかごのなかに入れ、じっくり観察した。すやすや気持ちよさそうに眠っている。私が赤ん坊の手に指で触れると、握り返してきた。温かかった。これが生命の温かみなのだと思った。
そして私は、赤ん坊のその指を切断した。赤ん坊は泣き叫び、その叫び声で二人も起きた。
ベンジャミンは私に言った。
「何をしているんだ! 僕たちの子に!」
「何をって…指を切ったのよ」
ガーネットが「いやああああ!!!!!」と大声で叫んだ。牢の鉄格子を力づくで壊そうとし、頭突きもしていた。ガーネットは今までに見せた中で一番目立った反応を示している。素晴らしい……! このガーネットの苦悩は、ベンジャミンが癒やさなければならない。そうすれば二人の恋はまた燃え上がる。私はベンジャミンの恋の力になれる。
ベンジャミンも絶叫しながら私を睨んだ。
「この人でなしめ! 狂ったクソ女め! 早くその子を返せ!」
「返さないわ。それよりも……あなたは頭を打ちつけているガーネットを止めなさい。このままでは頭がボロボロになるわよ」
私の言葉を聞いたベンジャミンはガーネットを抱きしめ、ガーネットの自傷行為をやめさせようとした。しかしガーネットはベンジャミンを突き飛ばし、号泣する。そうかと思えばまた鉄格子を殴りつけ始め、全身の至るところから血が出るようになってしまった。
ベンジャミンはガーネットに言った。
「ガーネット。気を確かに持て。このままでは死んでしまう」
「うるさいわね! この状況でよくそんなことが言えるわね。赤ん坊まで取り上げられてしまって……わたしはこれからどうすればいいのよ……」
「大丈夫だよ。いつかきっと助けが来る。それまでの辛抱だ。僕がいるよ」
私はベンジャミンの瞳が恋を取り戻したように感じて、拍手をした。だが二人は不服そうな面持ちで私を睨みつけ、唾を吐いた。そのあと私は、二人の目の前で赤ん坊の首を締めて……一つの生命を終わらせた。
ガーネットは何日経っても正気に戻らなかった。もはや廃人のようになってしまい、ベンジャミンが呼んでも反応しなくなった。どんどんやせ衰えて、ベンジャミンもまた瞳の生命力がなくなった。
ある日、ガーネットは首を吊って亡くなっていた。私が鉄格子のそばに置きっぱなしにしてしまっていたロープを使い、実行したようだった。私はベンジャミンの様子も見てみたが、ベンジャミンはガーネットが首を吊っていることにも気がついていない。地下室に入ってから三年の時を経て、二人の恋は終わった。恋の賞味期限は三年だと聞いていたけど、本当に三年であるという事実に驚いた。
私はガーネットを埋葬し、廃人となったベンジャミンを牢の中で飼い続けた。しかしそれも一か月ともたなかった。ベンジャミンも死に、地下室には誰もいなくなった。
私は優しい。ベンジャミンの墓とガーネットの墓を隣どうしにしてあげた。天国でベンジャミンがまた恋できるように。
そして私は、赤ん坊のその指を切断した。赤ん坊は泣き叫び、その叫び声で二人も起きた。
ベンジャミンは私に言った。
「何をしているんだ! 僕たちの子に!」
「何をって…指を切ったのよ」
ガーネットが「いやああああ!!!!!」と大声で叫んだ。牢の鉄格子を力づくで壊そうとし、頭突きもしていた。ガーネットは今までに見せた中で一番目立った反応を示している。素晴らしい……! このガーネットの苦悩は、ベンジャミンが癒やさなければならない。そうすれば二人の恋はまた燃え上がる。私はベンジャミンの恋の力になれる。
ベンジャミンも絶叫しながら私を睨んだ。
「この人でなしめ! 狂ったクソ女め! 早くその子を返せ!」
「返さないわ。それよりも……あなたは頭を打ちつけているガーネットを止めなさい。このままでは頭がボロボロになるわよ」
私の言葉を聞いたベンジャミンはガーネットを抱きしめ、ガーネットの自傷行為をやめさせようとした。しかしガーネットはベンジャミンを突き飛ばし、号泣する。そうかと思えばまた鉄格子を殴りつけ始め、全身の至るところから血が出るようになってしまった。
ベンジャミンはガーネットに言った。
「ガーネット。気を確かに持て。このままでは死んでしまう」
「うるさいわね! この状況でよくそんなことが言えるわね。赤ん坊まで取り上げられてしまって……わたしはこれからどうすればいいのよ……」
「大丈夫だよ。いつかきっと助けが来る。それまでの辛抱だ。僕がいるよ」
私はベンジャミンの瞳が恋を取り戻したように感じて、拍手をした。だが二人は不服そうな面持ちで私を睨みつけ、唾を吐いた。そのあと私は、二人の目の前で赤ん坊の首を締めて……一つの生命を終わらせた。
ガーネットは何日経っても正気に戻らなかった。もはや廃人のようになってしまい、ベンジャミンが呼んでも反応しなくなった。どんどんやせ衰えて、ベンジャミンもまた瞳の生命力がなくなった。
ある日、ガーネットは首を吊って亡くなっていた。私が鉄格子のそばに置きっぱなしにしてしまっていたロープを使い、実行したようだった。私はベンジャミンの様子も見てみたが、ベンジャミンはガーネットが首を吊っていることにも気がついていない。地下室に入ってから三年の時を経て、二人の恋は終わった。恋の賞味期限は三年だと聞いていたけど、本当に三年であるという事実に驚いた。
私はガーネットを埋葬し、廃人となったベンジャミンを牢の中で飼い続けた。しかしそれも一か月ともたなかった。ベンジャミンも死に、地下室には誰もいなくなった。
私は優しい。ベンジャミンの墓とガーネットの墓を隣どうしにしてあげた。天国でベンジャミンがまた恋できるように。
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「最期まで一緒にいられて良かったじゃんと同じく思った私もヤバいのか?(笑)」→ヤバいかもしれませんが、ヤバくないでしょう! どんな人に対しても、いえ、動物にだって物にだって感情移入できるのが人間ですから。
「あんなバカな事言わないできちんとイブリンを説得して婚約破棄しておけば慰謝料云々はあったかもだけど、この結末にならなかったのかも…(いや、怪しいが。笑)と思ったり。」→おっしゃるとおりですね。婚約破棄をしておけばましだった……というパターンもあるかもしれませんし、この物語よりももっと怖いことになっていたパターンもあるかもしれません笑。選択を迫られた場合、決断しなくてはならないので、いずれにせよ決断した先にある未来を生き切るしかありませんね!
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