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18 ローレンス視点

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ジュリエッタ……!

こんなにきっぱりと断ってくれるなんて!

”ローレンス”はさっきまでの自信満々な顔が打ち砕かれて、顔を歪めている。もしかして、成功するつもりだったのか?

「その……ジュリエッタさん……? 決して焦る必要はないのですよ。ローレンス様と別れてほしいとも言っていません。ただ、お友達でもよいので、これから関係を築けていけたらと思っているのです」

”ローレンス”は最後のあがきをしている。懇願するような目で、ジュリエッタを見つめている。膝をついて胸の前で手をすり合わせ、無様な姿だ。

「いえ、あなた様とはお友達になる義理もありません。どこの貴族様か存じませんが、私は主人一筋です。ここまでご足労いただきましてありがとうございました」

ジュリエッタははっきりこう言った。目には確信の色が宿っていて、迷いはなさそうだった。



決着はついただろう。
僕は使用人に目配せをした。



腕を引かれた”ローレンス”は「なんだ! 触るな! クソが!」と悪態をついた。

ジュリエッタがびっくりしていたので、僕は「大丈夫だよ。この男爵様は気性が少し荒くてね。ちょっと送っていくから、また戻ってくるよ」と言い残して、”ローレンス”に付き添った。とっさに”男爵様”という設定にしてしまった。

屋敷から離れると、僕の使用人が怒って”ローレンス”を殴った。「お前みたいな盗賊が本来喋れるようなお方じゃないだぞ! えらそうにしやがって!」と言ったあと、また殴った。

僕はやめさせた。殴ってもしかたないからだ。ジュリエッタが毅然とした態度で断ってくれたおかげで、僕の気持ちは晴れている。

「王都警察に任せよう。こいつは報いを受けるよ」

後ろ手に縄で縛られた”ローレンス”は「ちくしょう!」と叫びながら、血のかたまりをペッと口から出した。いまさらながら、こんな男をジュリエッタの前に出したことを後悔した。

ただ、もしこうしなかったとしても、僕は後悔していただろう。盗賊相手に勝つのではなく、一人の男として勝ちたかったからだ。それが僕の納得する道だった。ジュリエッタを試すようなことになってしまい、申し訳なかった。僕が夫として……これからもジュリエッタを愛していくために必要だった。そういう意味では、間違いなくエゴだった。




王都の街へ戻り、王都警察へ”ローレンス”の身柄を引き渡した。これでようやく、長い旅が終わったのだ。




屋敷へ再び帰ると、すでに外にいたジュリエッタが迎えてくれた。もしかして……ずっと外で待っていたの……?

「おかえりなさい! ローレンス様!」
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