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19 ジュリエッタ視点
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偽物の”ローレンス様”が変なことを言ってきた……。「結婚してもらえませんか」ですって?
私には夫たるローレンス様がいるのよ。それなのに本人がいる前でそんなこと言うなんて……。頭おかしいんじゃないの? 本当に貴族なのかしら……?
そもそも、ローレンス様のほうが100倍素敵よ。呆れて物も言えないわ。こんなのにお返事しなくちゃいけないの……?
そうこう悩んでいると、偽物の”ローレンス様”は、
「わたしは今こうしてジュリエッタさんを前にして、運命を感じています。あなたが私に惹かれたのもきっと運命で、わたしたちは結ばれる将来にあるのだと確信しています。今の夫のローレンス様との関係もあるでしょうから、わたしはいつまででも待ちます。あなたを待つ権利が……わたしにありますか?」
とペラペラ喋ってきた。
この男……自分に酔ってる? まるで自分はフラれるはずがないとでも思っているみたい。はあ……私はこんな人に恋してしまっていたんだ……。反省しなきゃな……。頭の中であれこれ考えるんじゃなくて、これからは実際に会って話した人を大切にしよう。
「あの、何を勘違いなさっているのですか? 私はあなた様のことなんてこれっぽっちも好きではありません。私の夫はこちらにいるローレンス様だけです。失礼ですが、あなた様が入ってくる隙はないのです」
はっきり言っておかないと、ローレンス様に愛を疑われてしまうわ。そうなると、迷惑以外のなにものでもない。
偽物の”ローレンス様”は、わかりやすいほどうろたえていた。
断るに決まってるでしょ、ばーか。
「その……ジュリエッタさん……? 決して焦る必要はないのですよ。ローレンス様と別れてほしいとも言っていません。ただ、お友達でもよいので、これから関係を築けていけたらと思っているのです」
なんであんたと友達にならなきゃいけないのよ! 媚びるような目が気持ち悪いし、嫌になってきた。膝をついても無駄だし、手をコネコネさせるその動きは何!? 早く帰ってくれないかな。
「いえ、あなた様とはお友達になる義理もありません。どこの貴族様か存じませんが、私は主人一筋です。ここまでご足労いただきましてありがとうございました」
ローレンス様のお客様にあたるのだろうけど、きちんと言わせてもらった。変に勘違いされても困るしね。
偽物の”ローレンス様”はあからさまに面白くなさそうな顔をしている。使用人に腕を引かれると「なんだ! 触るな! クソが!」と大声を出した。びっくりした。ヤバい人……なのかしら……?
ローレンス様は私に「大丈夫だよ。この男爵様は気性が少し荒くてね。ちょっと送っていくから、また戻ってくるよ」と言い残して、また屋敷を出てしまった。
わざわざ私のためにあの偽物の”ローレンス様”を探し出してくれたのだろうか。とすると、長い間出張に行ったのは、捜索をするため?
ああ……私はなんて愚かな妻だったのだろう。ローレンス様は私のために長い間留守にしていたというのに、私はといえば「早く帰ってこないかな」と愚痴るばかり。人違いで恋をしてしまった私を許してください。
日は傾き、散り散りになりながら空を流れている雲も、夕焼けに染まっていった。
私は屋敷の外でローレンス様を待った。
それがせめてもの、私の務めだった。
私には夫たるローレンス様がいるのよ。それなのに本人がいる前でそんなこと言うなんて……。頭おかしいんじゃないの? 本当に貴族なのかしら……?
そもそも、ローレンス様のほうが100倍素敵よ。呆れて物も言えないわ。こんなのにお返事しなくちゃいけないの……?
そうこう悩んでいると、偽物の”ローレンス様”は、
「わたしは今こうしてジュリエッタさんを前にして、運命を感じています。あなたが私に惹かれたのもきっと運命で、わたしたちは結ばれる将来にあるのだと確信しています。今の夫のローレンス様との関係もあるでしょうから、わたしはいつまででも待ちます。あなたを待つ権利が……わたしにありますか?」
とペラペラ喋ってきた。
この男……自分に酔ってる? まるで自分はフラれるはずがないとでも思っているみたい。はあ……私はこんな人に恋してしまっていたんだ……。反省しなきゃな……。頭の中であれこれ考えるんじゃなくて、これからは実際に会って話した人を大切にしよう。
「あの、何を勘違いなさっているのですか? 私はあなた様のことなんてこれっぽっちも好きではありません。私の夫はこちらにいるローレンス様だけです。失礼ですが、あなた様が入ってくる隙はないのです」
はっきり言っておかないと、ローレンス様に愛を疑われてしまうわ。そうなると、迷惑以外のなにものでもない。
偽物の”ローレンス様”は、わかりやすいほどうろたえていた。
断るに決まってるでしょ、ばーか。
「その……ジュリエッタさん……? 決して焦る必要はないのですよ。ローレンス様と別れてほしいとも言っていません。ただ、お友達でもよいので、これから関係を築けていけたらと思っているのです」
なんであんたと友達にならなきゃいけないのよ! 媚びるような目が気持ち悪いし、嫌になってきた。膝をついても無駄だし、手をコネコネさせるその動きは何!? 早く帰ってくれないかな。
「いえ、あなた様とはお友達になる義理もありません。どこの貴族様か存じませんが、私は主人一筋です。ここまでご足労いただきましてありがとうございました」
ローレンス様のお客様にあたるのだろうけど、きちんと言わせてもらった。変に勘違いされても困るしね。
偽物の”ローレンス様”はあからさまに面白くなさそうな顔をしている。使用人に腕を引かれると「なんだ! 触るな! クソが!」と大声を出した。びっくりした。ヤバい人……なのかしら……?
ローレンス様は私に「大丈夫だよ。この男爵様は気性が少し荒くてね。ちょっと送っていくから、また戻ってくるよ」と言い残して、また屋敷を出てしまった。
わざわざ私のためにあの偽物の”ローレンス様”を探し出してくれたのだろうか。とすると、長い間出張に行ったのは、捜索をするため?
ああ……私はなんて愚かな妻だったのだろう。ローレンス様は私のために長い間留守にしていたというのに、私はといえば「早く帰ってこないかな」と愚痴るばかり。人違いで恋をしてしまった私を許してください。
日は傾き、散り散りになりながら空を流れている雲も、夕焼けに染まっていった。
私は屋敷の外でローレンス様を待った。
それがせめてもの、私の務めだった。
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