危ない愛人を持つあなたが王太子でいられるのは、私のおかげです。裏切るのなら容赦しません。

Hibah

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私エリザベスは王妃教育を経て、王太子妃になった。この国の王妃教育は、数ある名家の令嬢たちから一人を王太子妃として選ぶ仕組みである。幼少期より選抜されて激しい競争をし、脱落した者から実家に帰される。

晴れて王太子妃となった今日、私は王太子のクリフォード様と初めて会う。クリフォード様は国の第一王子。次の国王に最も近い方だ。ただ、この国は競争を好むため、王太子といえども油断ならない。国王の一存で簡単に次の国王候補が変わる。王族にも常にピリピリした雰囲気が漂い、城は緊張感に満ちていた。

応接室で待機していた私に、城の使用人が言った。
「エリザベス様、大変お待たせしました。クリフォード様の準備が整いました。これからクリフォード様のお部屋で対面していただきます。ご案内します」

「ありがとう。よろしくお願いします」

待ちに待った日がようやく来たかと思うと、感慨深いものがあった。クリフォード様がどんな方であれ、乗り越えていける自信はある。なぜなら今日に至るまでの王妃教育があまりにもきつかったからだ。礼儀作法や歩き方、振る舞いや言葉づかいまで、ありとあらゆることに神経をすり減らした。王太子妃になる嬉しさよりも、王妃教育を逃れることができた嬉しさのほうが上回っているかもしれない。

私を案内する使用人がクリフォード様の部屋の扉をノックし、クリフォード様を呼ぶ。

「入れ」

クリフォード様の返事が聞こえた。
クリフォード様の部屋に入れる人はそうそういない。王太子妃になったからこそ入れるとも言える。普通の貴族であれば城の応接室すらめったに呼ばれないのに、王太子の部屋に入れるという優越感は相当なものだった。何がなんでも王太子妃として務め、苦労して手に入れたこの立場を奪われないようにしなければならない。

私はクリフォード様にご挨拶した。
「お初お目にかかります。このたび王太子妃になりましたエリザベスです。末永くよろしくお願いします」

クリフォード様は椅子に腰を掛け、足を組みながらゆったり座っていた。
「やあエリザベス、話には聞いてるよ。王妃教育を勝ち抜いてご苦労さま。もう君は立派な王太子妃だ、よかったね」

「はい。ねぎらいのお言葉感謝します」

クリフォード様はニコッと笑うと、自分の座る椅子の正面にもう一個椅子を置き、立っていた私を手招きした。手で椅子を指し示し「どうぞ」と言った。

「ありがとうございます。失礼します」

今まで座ったことのないような上質な椅子だった。クリフォード様の部屋にある家具一つひとつが華美で、目移りをしないようにするのがやっとである。

クリフォード様は正面に座った私の顔を覗き込むようにして言った。
「エリザベス。君には言っておくことがある。僕には好きな人がいる。君を王太子妃として迎えるが、僕の生活には極力関わらないでくれ」
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