危ない愛人を持つあなたが王太子でいられるのは、私のおかげです。裏切るのなら容赦しません。

Hibah

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国王陛下は、クリフォード様が平民の愛人を囲っていることや自身への毒殺計画を聞くと、顔をゆがめて怒鳴り声をあげた。
「クリフォード! あいつは何をやっておるのだ! お前たちもお前たちだ。なぜもっと早く報告しない?」

ライナス様は恐縮して答えた。
「父上、今まで申し上げられずにいたこと申し訳ございません。わたくしは兄上をずっと説得していたのです。いつの日かわかってくださると信じて……。しかしそれも今日の今日まで叶わず、平民と子を作るという事態にまで発展しました。このうえはわたくしを王族から追放してください」

国王陛下は苦々しい表情を見せた。手に力が入っていたが、やがて緩んだ。
「……お前を追放したところでしかたなかろう。バイロンを呼べ! 宰相なのにクリフォードのことを知らなかったとは言わせんぞ!」

バイロンはうやうやしく国王陛下の前に現れ、ひざまずいた。
「陛下、お呼びでしょうか」

国王陛下はバイロンの正面まで来て同じように体勢を低め、バイロンの肩に手を乗せた。
「おいバイロン。わしの目を見ろ」

バイロンはゆっくり顔を上げて、国王陛下を見た。
国王陛下はバイロンを睨みつけた。
「バイロン。お前はクリフォードが平民と森で会っていることを知っていたな。釈明があるなら言ってみよ」

バイロンは目を見開いて驚きの表情を見せた。
「……なん……ですと!? クリフォード様が森で平民と……? 申し訳ございません。存じ上げませんでした」

私はバイロンがそう言った瞬間、ドキッとした。

バイロンは……知らないふりをするつもりなんだ。

国王陛下の目をぼんやり見つめるバイロンは、まるでやましいことなど何もないといった態度である。二人の睨み合いはしばらく続き、私と……おそらくライナス様も、何度も生唾を飲み込んだ。

国王陛下が立ち上がった。私は怖くて見ていられなかった。国王陛下はかつて隣国との戦争で自ら軍を率いて、戦場を駆け抜けたという。大きな身体と迫力が城の空気を圧迫するかのようだった。

国王陛下が口を開いた。
「よかろう。バイロン、お前は何も知らなかったんだな」

バイロンは落ち着き払った様子で、変わらず国王陛下を見つめて言った。
「さようでございます」

「ではバイロンに聞く。このあと、お前だったらどうするべきだと考える?」

「クリフォード様を廃太子とし、平民へ落とすのがよろしいかと。平民と子をなす王太子など、この国の歴史が許しません。新しい王太子には第二王子ライナス様を推薦いたします」

国王陛下は不服そうに「ふんっ」とため息をつき、王座に座った。
「わしもクリフォードを廃太子とする以上は、自分の目で確かめてから決断したい。その森の小屋とやらに行く。案内しろライナス」

ライナス様は国王陛下に頭を下げる。
「はい父上。かしこまりました」


こうして国王陛下との面会は終わった。バイロンがどうして国王陛下の追及を逃れることができたのか、このときの私にはわからなかった。


次の「狩り」が行われる日、クリフォード様とライナス様と私はいつもどおり出かけ、あとから国王陛下とバイロンが合流するという段取りとなるのであった。
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