不純な浮気夫が許せないので、痛い目を見てもらいましょう。

Hibah

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いつの時代も見栄っ張りは、使いもしない外国語の習得に励む。習得できれば素晴らしいことだが、はたして現実は厳しいものだ。

田舎の小さな領地を治めるゴードン男爵もそんな見栄っ張りのうちの一人だった。勉強にも外国語にも無縁な彼だが、蒸し暑いある夏の夜、ナタリエル男爵と夕食を囲んでいた。ナタリエル男爵は無造作に伸びた髭を豊かな髭だと自慢する愉快な男であり、ゴードン男爵の親友である。彼はゴードン男爵の隣の領地を治めていたため、毎週のようにともに飲み明かしていた。


「なあゴードン卿。これからは外国語の時代だよ。わしら貴族が外国語の教養もないなんて、この国際化の時代にあってはならんことさ。想像してみろよ。フランス語をペラペラ喋って、舞踏会でちやほやされる姿を! さぞかし気持ちがいいだろうなあ。我が国の伯爵様たちだって、フランス語に堪能な人はそういない。自己紹介だけでもできれば、社交界でモテモテ間違いなしだろう」


「うぬっ! よいことを聞いた。なるほどフランス語か……。響きだけでもかっこいい。フランス語で『こんにちは』は確か『グーテンターク』だったか?」ゴードン男爵はだらしなく膨らんだ自身のお腹を叩きながら言った。


「さすがゴードン卿、物知りだ! すでにフランス語を一語でも知っているならしめたもんだ。続けてもう一語、もう一語と学んでいけば、あっという間にペラペラじゃないか! 羨ましいな。わしはゴードン卿のような知性がないから、口惜しいかぎりだよ」


「いやいやナタリエル卿、わしも一朝一夕で知識人になったわけではないぞ。日々たゆまぬ好奇心を抱き続けているからこそ、知的な会話ができるようになったのだ。そしてわしの知性を理解してくれるのは、こんな田舎だとあなただけだ。田舎者でも教養があるのだと、王都の天狗貴族どもにわからせてやりたいのう! さっそく家庭教師を見つけるぞ!」


意気込んだゴードン男爵は女使用人アガーフィヤを呼び、王都にフランス語の家庭教師募集の貼り紙を出すよう命令した。自領の民ではフランス語はおろか、自国語の読み書きすら普及していないが、そんな小さな現実には目もくれない。いかに自分がちやほやされるか、いかに自分が目立てるかが大事なのである。

ゴードン男爵の迅速な手配に感動したナタリエル男爵は、パンと膝を叩いた。


「即断即決! これぞゴードン卿! わしも帰ったら手配しよう。ああ! なんて素晴らしい日なんだ。わしらはもはや立派な志を持った。この鉄のように固い志は明日も明後日もずっと続くだろう。つまり今日は……もう一杯ワインを飲もう! ゴードン卿の偉大なる教養の道に乾杯!」


こうしてゴードン男爵とナタリエル男爵はワインとチーズを平らげて朝まで語り明かした後、深い眠りについた。前の晩何を話していたかは互いに忘れ、翌々日まで頭痛と吐き気に苦しんだ。高い教養を身に着けるためには、苦しみもまた必要なのである。



ゴードン男爵の妻カチェリーナは、困惑したアガーフィヤから彼の指示について聞き、ため息をついた。

(またあの人はかっこつけのためだけに周りを振り回して……。どうせ忘れているだろうけど、どうしましょうか……。貼り紙をする必要すらないかしら)

カチェリーナはこのように迷ったものの、今回は夫の指示通り、とりあえず王都に家庭教師募集の貼り紙を出すことにした。続くか続かないかは別にして、何かを学びたいという欲求に害はない。もしフランス語が性に合って身につくなら――万が一だが――素晴らしい教養になる違いないと考えたからである。

しかし、夫を思う妻の献身的な気持ちは簡単に裏切られることになる。



   ***



志高き会合(?)から一か月後、吉報を携えたカチェリーナがゴードン男爵に話しかけた。


「やっとフランス語の家庭教師が見つかりましたよ。大変だったんですから! あなたにこの苦労がわかりますかね? まずは先生に面会した後、今後の学習スケジュールを組まなくちゃいけませんね。続くかどうかは……やってみてのお楽しみですね。あなたの本気度合いを見させてもらいますわ」


ゴードン男爵は猟銃を磨きながら、胸を張るカチェリーナを見つめてぽかんとしている。


「はて……ん? フランス語……? 何の話だ?」
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