不純な浮気夫が許せないので、痛い目を見てもらいましょう。

Hibah

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カチェリーナは「やっぱりな」とは思いつつも、すっかり忘れている夫を腹立たしく感じた。使用人の動きを取りまとめるのは彼女の仕事だが、フランス語の家庭教師探しは一朝一夕ではなかった。

カチェリーナは両手を腰に当てて、呆れ顔をした。悲しかった。


「そんなことだろうと思っていましたよ。ひと月ほど前、ナタリエル男爵とお飲みなさっていたときに、盛り上がっていましたよね? これからは外国語の時代だとか、フランス語が喋れると自慢できるとか、とてもご機嫌だったそうじゃないですか?」


ゴードン男爵は猟銃磨きをやめ、それを丁寧にガラスケースの中にしまった。怖がりなので猟には行けないが、猟銃を持てるという貴族特権は大好きだった。少しお金が貯まると猟銃のコレクションに充てるため、家計はいつまでも潤わなかった。

ゴードン男爵はおもむろにカチェリーナのそばまで寄り、浮かない顔をしつつ首をかしげた。


「なんだかそんな話をした気もするが……うーん……今は時機でない気もするなあ……。わしは領民たちの裁判もあれば税の徴収もせねばならんし、なにより自分で畑仕事もせんと食っていかれやせんし……学ぶ時間なんてあるかのう?」



人は面倒臭くなると、やる理由よりできない理由を探すものである。決心は、行動という栄養を与えなければ瞬く間に枯れてしまう。



夫婦関係が長いので、夫がこうしてやめてしまうこともカチェリーナの想定内だった。しかし、彼女はいつも夫を信じて、必要なことをするのである。「今回だけは違うかもしれない」という期待を持っていたのも事実だが、信じないよりは信じるというほうが習慣になっているのだろう。

カチェリーナ自身が一番、そんな自分の性格を憎らしく思っているのだが、寄る年波には勝てないと言おうか、この日だけは涙腺がゆるんだ。


「なんだか……あなたのためを思って奔走してきた私の人生は……何だったのだろうかと思えてきました。私の一か月間を返してもらえませんか? 私たちには無限の時間があるわけではないのですよ……」


鼻声のカチェリーナの様子を見て、ゴードン男爵は(このままじゃまずいぞ……)と慌て始めた。


「お、おい、悪かった。わしが悪かったから……泣かないでくれ。よく探し出してくれたな、礼を言うぞ。どんな先生なんだ? お前が見つけてきたのなら、さぞかし優秀なのだろう!」


カチェリーナは片目を拭いながら答えた。


「エレオノーラという者です。平民の女性でまだ二十代なのですが、貿易商の娘で、各国を遍歴した経験があります。最近王都に居を構えて定住を始めました。事情はよくわかりませんが、彼女は王都で読み書きの教室をしたいそうです。ここは少し離れていますが……貴族にも教えるならいい宣伝になると思ったのかもしれません」


「エレオノーラ……?」


ゴードン男爵はその名前に聞き覚えがあった。
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