俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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 ぞろぞろと会場から人が流れ出てくる。中には寄り添って出てくる男女もいて、今回、数組のカップルが誕生したようだ。
 街コンの最後に、意中の相手に連絡先を渡すというイベントがあり、後は相手次第となっているがその場で交換する人が多いらしい。時間的にはまだ九時前。彼らはこれからバーにでも行くのだろう。
 亜也はどうなったのだろう。途中からスタッフの男性と話していたため、見失ってしまった後輩を奈月は出口から少し離れた所で待っている。だが、奈月が会場を出た時には、既に三分の一程の人が会場を後にしていた。亜也も既に帰っているかもしれない。
 ともかく、連絡を入れようとスマホを取り出した奈月は、電源を切ったままだったことに気付いた。もしかすると、亜也は連絡を入れてくれていたかもしれない、とスマホを立ち上げる。

「あの」

 真っ暗な画面にロゴマークが浮かぶのを見つめていると、声が聞こえた。顔を上げると、カジュアルな服に身を包んだ刈り上げの男性が立っていた。

「街コンの参加者の方ですよね?」

「ああ、はい……」

 その一言で、この人もそうなのか、と思う。人の良さそうな笑みで近付いてくるが、その目が何となく怪しい感じがして、あまり関わらない方がいいなと直感した。

「この後、お暇でしたら……」

「すみません。友人を待っておりますので」

 スタッフの男性の言葉が頭を過ったわけではないのだが、奈月の中の警戒心が働いた。仕事上、営業相手から食事に誘われることも多い。女だから、独り身だからと甘く見られているのだろう。だが、これまでの経験からそこに含みがあるかないかを察知するのは、得意だ。

「じゃあ、そのご友人も一緒に……」

「一緒に、何ですか?」

 やんわりと断ったにも関わらず、さらに距離を近付けてくる男性に一歩後退る。すると、彼の声とは違う低い美声が会話に割って入ってきた。声のした方を見ると、グレーのスーツ姿の男性が歩み寄ってくるのが見えた。スタッフの小鳥遊だ。
 にこやかな笑みを浮かべながら、大股に近付いてきた侑李を見て、今度は男性が後退る。

「何だよ、街コンに参加したくせに男連れなのかよ」

 憎々しげに言葉を吐き捨て、男性は逃げるように立ち去った。

「大丈夫ですか?」

「ええ。すみません、助かりました」

 離れていく男から近付いて来た小鳥遊に視線を移す。耳に心地よい低い美声にホッとした。
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