俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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 そこまで考えて、ふと奈月は自分が当たり前のように彼と歩む未来を描いてしまっていることに気付く。結婚を前提とはいえ、まだ付き合いだしたばかりだというのに。

「うん、俺も困る。だから、無茶しないで?」

「……はい」

 コツンとおでこを合わせられ、一緒に笑い合う。そのひと時が、かけがえのないものだと、改めて思った。

「さて、じゃあ荷物をまとめて」

「え?」

 言われた意味を理解できず、首を傾げる。すると、奈月の鼻先をチョンと指で軽く押した侑李はため息を吐いた。

「両手が使えないんじゃ、大変だろうから。治るまで、俺の家においで」

 パチパチと瞬くと、頭を優しく撫でられた。そして、部屋を見渡し、タンスの方へと歩き出した侑李に我に返る。

「待って。待ってくださいっ!」

「なに?」

「家にって……一緒に暮らすってこと、ですか?」

「そう。とりあえずはその手が良くなるまで」

 いや?と聞かれて答えに迷う。嫌ではないけれど、良いんだろうか。

「俺がそうして欲しいんだ。だから、迷惑だとかは考えないで。ただ、無理強いはしたくない。奈月さんが、嫌ならこのまま帰るよ。」

 その言い方はずるくないだろうか。結婚を考えている相手と、一緒に過ごしたくない訳がない。少しでも長く、彼といられたら幸せだろうと思っていたくらいだ。手が治るまでという期間限定であっても、一緒に過ごせるなら願ってもないこと。

「分かりました。じゃあ、しばらくお世話になります」

 ここは素直に好意に甘えよう。不安がない訳じゃない。でもそれより、彼と過ごせることの方が魅力的に映った。
 とりあえず必要最低限の着替えや生活用品を、出張の時以外出番がなかったトランクに詰めていった。

 ※  ※  ※

 侑李の車で彼の家へと連れて来られた奈月は、彼の家に来るのはこれで三回目だなとふと思う。最初はシミ抜きのため。あの時はまだ出会ったばかりだった。2回目は酔って彼に迷惑をかけてしまった時。でも、おかげで彼と想いを確認し合って、お付き合いが始まった。その時、合鍵はもらったけれど、お互いに忙しかったし、時間があって外で食事をした後はいつも彼が家まで送ってくれていた。
 部屋に入るとやっぱり部屋の中は綺麗に片付いていて、奈月より忙しいだろうにちゃんとしている彼はすごいな、と関心してしまった。

「奈月さん、座ってて」

「あ、はい」

 リビングの入口で呆然と立ち尽くしていると、奈月の荷物をソファーの隣に置いた侑李がキッチンに入っていく。手伝おうか、と思ったけど、今の奈月は全くの役立たず。大人しくソファーに座って待ちながら、ふと窓際に可愛らしいチェストがあるのが目に入った。
 以前来た時もあっただろうか、と記憶を辿っていると、マグカップを両手に持った侑李がキッチンから戻って来る。
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