俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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 怪我から2週間。抜糸も終わり、亜也の見舞いにと病室に向かった。彼女の経過も順調で、今はギブスも取れ、四人部屋に移っている。
 先日も来たから、彼女が右手の窓際にいるのは知っている。手前のベッドの人に会釈しながら向かうと、カーテンの向こうから話し声が聞こえてきた。誰か来てるのかな、とこっそり覗くと怒った顔の亜也と見知った顔。

「あら? あなた……」

「あ、どうも!」

「主任! 来てくれたんですか!」

 怒っていた様子の亜也が満面の笑みを浮かべる。その隣でニコリと笑って会釈をするのは、広報部の新堂保(しんどうたもつ)だった。

「香山先輩、お久しぶりです」

「新堂くん、私のこと覚えててくれたの?」

「そりゃ、先輩にはさんざんお世話になりましたから」

 そう言って人当たりのいい笑みを浮かべる彼は、亜也の同期で奈月が指導を担当した中の一人だ。元々、営業志望で入ってきたのだけど、今は人員不足の広報に駆り出されている。研修の時から何でも卒なくこなす、オールマイティさがあるが故の抜擢だ。

「主任、聞いてください! 新堂、酷いんです!」

「何がだよ。健康診断のついでに見舞いに寄ってやっただけありがたく思え」

 保に頭をぐしゃぐしゃと撫で回され、亜也が涙目になっている。彼らの年代の同期はもうこの2人だけだ。会えば憎まれ口は叩くけど、互いに仕事に誇りを持って、尚且つ相手をリスペクトする気持ちはある。そんな中でのじゃれあいは、奈月には微笑ましく感じられる。

「あなたたち、仲良しよね」

「「どこがですか!?」」

 同じタイミングで振り向き、ハミングするところかな、とは言えずに奈月は微笑みだけを返す。すると、亜也の頭から手を離した保が奈月の手元に視線を向けた。

「先輩はお怪我の具合は?」

「大したことないのよ。今日、抜糸してきたし」

 名誉の勲章だ、と肌色のテープが貼られた手のひらを翳す。保はそれにニッコリ笑って、席を立った。

「じゃ、俺はお先に戻ります」

「もう行くの?」

「はい、先輩もお大事に。真壁、さっさと治して戻ってこいよ」

「わっ!」

 彼は言いながらまた亜也の髪をぐしゃぐしゃにする。亜也が睨みつけるのを笑って受け流した彼は、奈月に一礼して病室を出て行った。

「もー、あいつのせいで酷い目に……」

「入った時から仲が良いわよね、あなたたち」

「やめてくださいよ! 仲良くなんてないんです! 私、あいつのこと嫌いなんですから!」

 保が座っていた椅子に腰掛けながら、全力で否定する亜也に微笑む。

「でも、お見舞いに来てくれたじゃない」

「それは……健康診断のついででしょう?」

「そうかもしれないけど、真壁さんの同期はもう彼だけになっちゃったし、彼にとっても大事な存在だからじゃないかな?」

 大所帯の会社において、やっぱり同期は特別だと思う。同じ時期に入社して、一緒に研修を受けると仲間意識は少なからず生まれる。中には相容れない相手もいるにはいるが、奈月には亜也たちの関係は悪いものには見えない。

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