俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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 小さく首を振られて、ブーケを持ち変えて左手を出す。すると、背後でごそごそとした侑李が、奈月の左手を取った。薬指に感じた冷たい感触。それが指の付け根に到達した時、奈月は一瞬呼吸をするのを忘れた。

「サイズ、ピッタリみたいだね」

 確かめるように指を撫でてくる侑李を、見上げる。ブルーの瞳に奈月の姿が映っている。きっと奈月の瞳にも、彼の姿しか映っていない。キスの予感にそっと目を閉じれば、期待通り、唇に柔らかな感触が降ってくる。
 頬を伝った涙を拭われ、目を開けると、微笑まれた。

「嬉しい……」

「本当? 良かった」

「ありがとう、侑李さん」

 微笑み返すと、彼は一瞬笑みを引っ込め息を詰めた。

「侑李さん? えっ?」

 フッと下に下がった彼の顔を視線で追いかける。驚く間もなく身体が浮き上がり、にこやかな彼の顔が間近にあって、お姫様抱っこされたのだと気付いた。
 侑李はそのまま奈月をベッドまで連れていく。ベッドの中央に下ろされて、持っていたブーケを取られる。一度ベッドを降りた彼は、テーブルの上に丁寧にブーケを置く。

「それは?」

 代わりに手に取ったのは白い紙袋。ソファの上に置いてあったものだけど、アメニティか何かだろうか。

「必要なもの。さすがに挙式の時には持ち込めないから、前日から預けてた」

 ベッドサイドのチェストに紙袋を置いて、ベッドに上がってきた侑李が奈月のパンプスを脱がす。

「あ、自分で……」

「いいから」

 やんわりと制されて、両足から抜かれた靴は揃えてベッドの下へ。そこに自分の靴も並べた侑李は、すぐに奈月の方へと向かってくる。四つん這いで寄ってくる彼を見て、奈月はもっと上に上がろうと腕を使って身体をずらす。

「奈月さん、逃げないで?」

「ちが……もっと上がいいかなって……」

 掛け布団の上に座っている状態なのが気になって、ずり上がって行ったのだけど、追い付いてきた侑李は笑いながら奈月の上に乗ってきた。体重をかけながら、そのまま抱き締められて身動きが取れなくなってしまう。

「捕まえた」

 逃げてない、と思いながら見上げると、チュッと音を立ててキスされる。見つめてくるブルーの瞳が、劣情に揺れているように見える。その瞳にそっと手を伸ばして、目の下の辺りを撫でると、微笑んでくれたことに嬉しくなった。

「侑李さんの瞳、綺麗ですね」

「そう?」

「綺麗なブルー……クォーターだから?」

「かな。祖母の血が濃く出たみたい」

 彼の祖母はフランス人だと前に聞いた。その血が濃く出ているから、彼の瞳は青く、彫りが深い日本人離れした顔立ちなのだろう。

「この瞳、好き?」

 ずっと目の下辺りに指を這わせていたせいだろう。目を細めながら侑李がクスッと笑う。

「好き」

「良かった。奈月さんの好みの男性は、落ち着く声の人、だったかな?」

「……よく、覚えてますね?」

 好みの男性の話なんてしたっけ、と奈月自身、忘れてしまっていた。

「俺の声は、どう?」

「んっ……」

 目の下を撫でていた手をベッドに押さえつけられる。そのまま頬を擦り寄せてきた侑李の唇が耳朶に触れ、脳内に彼の声が響く。ぞくぞくとした感覚に身を捩ると、侑李の舌が耳の中に入って濡れた音を立てる。

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