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「素晴らしいお部屋ですね」
「ご予約のお部屋がこちらの手違いでご用意できなくなりまして、代わりのお部屋をご用意させていただいたんです」
部屋の大きさに侑李が戸惑っているのが分かる。彼には先程の深月との会話が聞こえていなかったらしい。すると、深月がすかさずもっともらしいことを言いながら頬に手を当てて困ったフリをした。
「では、差額を……」
「とんでもない、こちらの不手際ですから。こちらのお部屋には露天風呂も完備しております。お時間を気にせず、どうぞごゆっくりおくつろぎください」
受け答えしている姉を見て、さすがだな、と感じる。幼い頃から母の英才教育の元、女将修行をしていただけある。
「では、お言葉に甘えて」
絶対に折れない意思を深月から感じ取ったのか、侑李は苦笑しながら素直に従うことにしたらしい。
「お夕飯は18時頃ご用意するつもりでおります。お昼は?」
「まだなの。外で適当に済ませようと思ってたけど……」
飛行機の都合で着いたのは昼過ぎだった。お昼はどこかで済ませよう、と予約の際には断っていたのだ。奈月が侑李を見上げると、彼は少し考えた後、深月に言った。
「その前にご両親にご挨拶させていただいても?」
「父はあいにく不在でして。母は母屋におります。ご案内しましょう」
荷物を運んでくれた従業員を下がらせ、三人連れ立って歩き出す。
深月たちが暮らすスペースへは一旦表に出るか、事務所を通った裏口から行く方法がある。深月はその最短距離である事務所を通る道を選び、カウンター脇から奥へ進んだ。中で休憩していた従業員たちに挨拶しながら進むと、その中に熊井の姿もある。彼はこちらに視線は向けて来たが、よっぽどさっき深月に叱られたのが怖かったのか、ちょっかいを出してくることはなかった。
裏口から出るとすぐ、家の勝手口に出る。そこで靴を脱いで上がり、居間へと向かうと帳簿を付けている母の姿があった。
「お母さん、奈月が来たわよ。話してた小鳥遊さんも一緒」
「あら、もうそんな時間?」
顔を上げた母は、白髪が目立ち始めた髪を撫で付ける。それは母の癖で、奈月は懐かしく感じた。
「ただいま、お母さん」
「おかえり。やっと帰って来たのね」
ニコリともしない母は、奈月だけを見据えている。すぐ側に立つ侑李のことは目に入っているだろうが、意識的に排除しているのだろう。それが分かっているから、奈月は侑李の隣に移動し母を見た。
「お母さん、こちら小鳥遊侑李さん。先日、プロポーズを受けて、承諾しました」
「小鳥遊侑李です。よろしくお願いします」
綺麗な一礼を見せた侑李に、母の眉がピクリと動く。
「……この方と、結婚するつもりなの?」
「はい。侑李さん以外には考えられません」
きっぱりと言い放つと、目を見開いた母は深く息を吐いた。その真意が分からず、奈月は内心ドキドキしている。と、母の表情が少し和らいだ。
「座りなさい。小鳥遊さんも、どうぞお座りになって」
深月ぐすかさず用意してくれた座布団に座り、母を見る。テーブルの上に置かれていたポットのお湯を注ぎ、母が4人分のお茶を淹れる間、誰も口を開かなかった。
「ご予約のお部屋がこちらの手違いでご用意できなくなりまして、代わりのお部屋をご用意させていただいたんです」
部屋の大きさに侑李が戸惑っているのが分かる。彼には先程の深月との会話が聞こえていなかったらしい。すると、深月がすかさずもっともらしいことを言いながら頬に手を当てて困ったフリをした。
「では、差額を……」
「とんでもない、こちらの不手際ですから。こちらのお部屋には露天風呂も完備しております。お時間を気にせず、どうぞごゆっくりおくつろぎください」
受け答えしている姉を見て、さすがだな、と感じる。幼い頃から母の英才教育の元、女将修行をしていただけある。
「では、お言葉に甘えて」
絶対に折れない意思を深月から感じ取ったのか、侑李は苦笑しながら素直に従うことにしたらしい。
「お夕飯は18時頃ご用意するつもりでおります。お昼は?」
「まだなの。外で適当に済ませようと思ってたけど……」
飛行機の都合で着いたのは昼過ぎだった。お昼はどこかで済ませよう、と予約の際には断っていたのだ。奈月が侑李を見上げると、彼は少し考えた後、深月に言った。
「その前にご両親にご挨拶させていただいても?」
「父はあいにく不在でして。母は母屋におります。ご案内しましょう」
荷物を運んでくれた従業員を下がらせ、三人連れ立って歩き出す。
深月たちが暮らすスペースへは一旦表に出るか、事務所を通った裏口から行く方法がある。深月はその最短距離である事務所を通る道を選び、カウンター脇から奥へ進んだ。中で休憩していた従業員たちに挨拶しながら進むと、その中に熊井の姿もある。彼はこちらに視線は向けて来たが、よっぽどさっき深月に叱られたのが怖かったのか、ちょっかいを出してくることはなかった。
裏口から出るとすぐ、家の勝手口に出る。そこで靴を脱いで上がり、居間へと向かうと帳簿を付けている母の姿があった。
「お母さん、奈月が来たわよ。話してた小鳥遊さんも一緒」
「あら、もうそんな時間?」
顔を上げた母は、白髪が目立ち始めた髪を撫で付ける。それは母の癖で、奈月は懐かしく感じた。
「ただいま、お母さん」
「おかえり。やっと帰って来たのね」
ニコリともしない母は、奈月だけを見据えている。すぐ側に立つ侑李のことは目に入っているだろうが、意識的に排除しているのだろう。それが分かっているから、奈月は侑李の隣に移動し母を見た。
「お母さん、こちら小鳥遊侑李さん。先日、プロポーズを受けて、承諾しました」
「小鳥遊侑李です。よろしくお願いします」
綺麗な一礼を見せた侑李に、母の眉がピクリと動く。
「……この方と、結婚するつもりなの?」
「はい。侑李さん以外には考えられません」
きっぱりと言い放つと、目を見開いた母は深く息を吐いた。その真意が分からず、奈月は内心ドキドキしている。と、母の表情が少し和らいだ。
「座りなさい。小鳥遊さんも、どうぞお座りになって」
深月ぐすかさず用意してくれた座布団に座り、母を見る。テーブルの上に置かれていたポットのお湯を注ぎ、母が4人分のお茶を淹れる間、誰も口を開かなかった。
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