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しおりを挟む「ここって……?」
車を降りた茉歩は、目の前の建物を見て開いた口が塞がらなかった。ここはどう見てもお年寄りが住むための施設だ。ということは。
「ばあちゃんが連れてきてくれって。会いに行きたくても、自分からは行けないからってさ」
立ち尽くす茉歩の手を取り、葉一はズンズンと歩を進める。入口で入居者と来た者の名前と続柄を記入し、彼は迷わず進んでいく。茉歩はただただ戸惑いつつ、彼に手を引かれるままその後に続いた。そして。
「茉歩ちゃん!」
「……春江おばあちゃん」
部屋に入るなり、茉歩の姿を認めた春江が声を上げる。その元気そうな笑顔に、茉歩は泣きそうになった。
「春江おばあちゃん、元気そうでよかった……」
「あらあら、泣かせちゃったわね。心配かけちゃって、ごめんね?」
堪えきれず溢れた涙に、春江が困った顔をする。だから我慢しようと思ったのに、ホッとしたやら嬉しいやらで茉歩の涙腺は崩壊していた。
「春江さん、お孫さんかい?」
「こっちの大きいのが孫。この子は私の命の恩人」
ベッドの脇に置かれたティッシュを箱ごと差し出され、茉歩は礼を言いつつ三枚引き抜いた。その間に、隣のベッドに腰掛けていた同室のおばあちゃんが話しかけてくる。
「まぁ、じゃあお孫さんのお嫁さん? 可愛らしい子で。春江さんが自慢するわけだわ」
「でしょう。いい子なのよ」
同室のおばあちゃんに向かって胸を張る仕草をする春江に、茉歩はくすぐったい気持ちになる。けれど、大好きな春江に自慢されることは茉歩とって嬉しいことだ。ただ、孫の嫁と言われたことを否定しないのにはちょっと疑問が残る。
「お孫さんもイケメンだし、そのお嫁さんは可愛らしくて、良いわねぇ」
「あの、私、嫁じゃ…」
「あら、今日は賑やかね」
茉歩が否定する前に、施設の職員が入ってきた。時刻は昼前。ちょうど昼食の時間らしい。名残惜しさがあったが、葉一に促され二人は春江に別れを告げて施設を後にした。
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