年下クンと始める初恋

鈴屋埜猫

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 お先にどうぞ、という葉一の言葉に従い、茉歩が先にシャワーを借りた。いくらたまに遊びにきていたとはいえ、お風呂まで借りたことはない。
 他人の家で裸になるのは初めてだ。しかも、これからそれ以上のことをしようとしている。恥ずかしさで死にそうだ。だが、葉一なら、と思う自分がいる。キスだけでも気持ちよかった。ならその先も。
 怖くないと言えば嘘になる。だが、たとえ痛くても、我慢できる気がしてくるから不思議だ。
 葉一が貸してくれた着替えはダボダボで、Tシャツ一枚でもワンピースのように太ももまで隠れる。一応、ズボンも用意してくれていたが、あまりにも長く、ロールアップするにも生地が厚めで難しい。
 とりあえずTシャツだけを借りて、仏間にいる葉一に声をかけると部屋で待つよう言われた。それから数分後、階段を上がってくる足音が聞こえ、茉歩は慌てて居住まいを正す。

「何で正座してんの?」
「だって……」

 床に敷かれたカーペットの上に座る茉歩に近付き、葉一はベッドに腰掛ける。そして、まだ乾き切っていない髪をガシガシとタオルで拭き始めた。

「怖い?」
「ううん……」
「横、来て」

 拭く手を止めた葉一に手を引かれ、茉歩は彼の隣に腰を下ろす。

「茉歩姉、拭いてくれる?」
「え? うん……」

 言われるがまま、茉歩は葉一の頭に手を伸ばす。横に体を捻るとやりにくいので、片足を曲げてベッドに乗せた。葉一もやりやすいようにとベッドの上で胡座をかく。
 しばらく茉歩が彼の頭を拭く音だけが響いた。だが、唐突に茉歩の手が止まる。

「あっ……っ」
「茉歩姉? どうしたの?」

 ビクンと茉歩の身体が跳ねて、ベッドのスプリングが軋んだ音を立てる。ベッドサイドに下ろした茉歩の太ももの内側を葉一が撫でたのだ。
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