人外さんと恋をする〜狼さんは怖くない〜

鈴屋埜猫

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 喉の渇きを覚えて目が覚めた。上体を起こそうとすると、関節がギシギシと音を立てる。

 痛みに顔を顰めたメイベルは、ポトリと胸元に落ちて来た布に首を傾げた。同時に額を冷たい風が撫で、湿り気を帯びた布が置かれていたのが自分の額だと気付き、さらに首を傾げた。

 辺りを見渡すと、そこはメイベルが良く知る部屋だった。が同時に疑問を抱く。ここはメイベルがいつも使っている女子部屋ではない。過去、シスター・モリーが。そして今はクロードが使っているはずの部屋だ。

 いつの間に孤児院に帰ってきたのだろう。服もシュミーズ一枚だし、窓の外は真っ暗だ。静まり返っているところを見ると、子供たちはすでに寝静まっているのだろう。かなり遅い時間のようだ。クロードは仕事だろうか。

 ベッドから抜け出したメイベルは、キッチンへ向かおうとそっとドアを開け、廊下に出ようとして固まった。

「……」

 ドアを開けた先で、驚いたようにこちらを見上げているのはクロードだった。制服姿の彼は廊下に座り込み、片膝を抱えるようにして壁に寄りかかっていたようで、メイベルが開けたドアが伸ばした足に当たっている。

「起きた、のか」
「はい……」

 どうしようかと思っていると、クロードが先に動いた。立ち上がった彼は、メイベルの姿に目を留め、毛布を差し出してきた。

「冷えるぞ」
「それじゃ、クロードさんが寒いです」
「病人が気を使うな」

 春先の季節、夜はまだ冷える。廊下は特に隙間風の影響もあって寒いはずで、暖を取るために毛布を使っていたのだろう。それを取り上げてしまうことに躊躇していると、半ば強引に毛布に包まれた。

「起きて平気か? 気分は悪くないか?」
「喉が、渇いて……」

 喋っていると、喉につっかえた感じがして少し咳き込む。すかさず伸びてきたクロードの手が背中に添えられ、優しく摩ってくれた。

「すみませ……」
「いいから。飲み物を持ってくる、寝ていろ」
「自分で……」
「病人なんだから、甘えていいんだ」

 部屋に押し戻されて、キッチンへと向かうクロードの背中を見送る。後を追うべきか迷いながら、結局、メイベルは大人しく待つことにした。ベッドに腰掛け、部屋を見渡す。

 そこでようやく、部屋に普段は居間に置かれているはずのストーブがあることに気付いた。サイドチェストには水が張られた洗面器。恐らく、額に置かれていた布を濡らすためのものだろう。
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