7 / 7
#7 隣町の現状
しおりを挟む
-side:Haine-
陽も完全に昇りきった頃。
1人の男が、トリアングルより戻った。
その背中に、1人の悪魔を携えて。
その様子を、一人の男が見ていた。
「おぉ!オンブル殿!よく戻られた。」
男は戻ってきた彼を見て喜び、すぐに後ろの悪魔に気づき驚いた。
「そ、その背中の方は?」
「あぁ、俺の契約した悪魔だ。ちょっと成り行きでな。」
悪魔は、男の前に出て、うやうやしく礼をした。
「はじめまして、私はルヴァンシュ。彼と契約した、影の悪魔よ。」
「お、おう。俺はアベルだ。オンブルの、上司だ。」
アベルと名乗った男が握手を求めるが、エーヌは応答しない。
「私は契約者以外と馴れ合うつもりはないわ。命令されたらするけど。」
「お、おう。すまねぇ。」
別に握手しようと思えばした。
だが、エーヌはしなかった。
この町に、他の悪魔がいる。
それも、だいぶ近くに。
もし、目の前の男が契約者ならかなり不利になる。
同じ悪魔だとしても、地上では関係ない。
「アベルさん。それより、トリアングルの守護姫を殺したんだ。すぐ様軍部に報告しないと。」
「あぁ、そうだ。30年前の屈辱を晴らさんとな。」
男は娘の遺体を受け取り、町の中へ走って行った。
「……貴方も行かないの?」
エーヌが彼に聞くと、
「俺は、寄るところがある。それに、下っ端が行っても何の意味もねぇからな。」
彼からは、先程の覇気を微塵も感じなかった。
町の商店街を通り抜ける。
だが、開いている店は少なく、町の住民は生気のない顔をしている。
排水路に積まれた死体の上を、ハエやうじが集っている。
「……酷い町並みだろ?みんな、流行病に怯えてる。」
彼もまた、流行病を恐れている。
話を聞いた所、数年前から流行りだした病は、彼の家族を奪った。
トリアングルでも病は確認されていたが、病の拡大を恐れ、治療薬を渡さなかった。
元々抗体を持っていたのか、彼は病にかからなかった。
それで、トリアングルへの報復を誓った。
「流行病、か。それで、貴方は今どこへ向かっているの?」
エーヌは、少し分かりきった質問をした。
「もちろん、報告だよ。」
彼は呟くように言った。
町の中心を抜け、別の門から町の外へ出る。
少し寂れたそこは。
「墓地……。」
「あぁ、俺の家族が眠ってる。」
-クウィニー・バロック ここに眠る-
-ハーレンシア・バロック ここに眠る-
冷たい石に刻まれた名は、不格好で少し汚い。
「俺が、彫ったんだ。この町の墓守は、もうジジイ共しかいないからな。」
彼は、その文字を愛おしそうになぞる。
「なぁ、ルヴァンシュ。俺の復讐が済んだら、お前はどうするんだ?」
エーヌは、まっすぐ見る彼の目に感じた。
この男は、復讐に動かされていたにすぎない。
この前のような覇気は、きっと消えてしまう。
「……私は私よ。貴方に失望したら、他の契約者を探しに行くだけ。」
だから、精々楽しませてちょうだい。
そう、付け加えた。
「……では、アベルどのの部下が殺害に成功したという事で、トリアングルに攻め込む。この好機を逃がしてたまるか!」
町の中の屋敷。
そこで、数人の男が作戦会議をしていた。
町長グローリーは、痺れを切らしていた。
この町、スクウェイの現状は相当な物だ。
なんとかして、現状打破したかった。
「……町長。アベルどのの部下が契約したという悪魔は、いかが致しますか?」
参謀の1人が問いかけた。
「無論、彼に言い聞かせ戦争に参加させる。ただ、守護姫とその天使を殺したことはすぐ3女神に伝わるだろう。厄介な事になる前にアルベール家を根絶やしにするぞ!」
町長が大きく宣言した。
咆哮の中、1人の参謀官は座ったまま。
誰にも聞こえない声で呟いた。
「(…オンブルが契約した悪魔を探ってこい。いいか、手出しも姿も出すなよ。)」
「(あら、大丈夫よ。この僕が、そんなヘマをすると思って?)」
男のすぐ下、影の中から声が聞こえた。
「(ただ……、気に入らなかったら殺してもいいかしら?)」
僅かに舌なめずりをする音も聞こえた。
「(アレもまた戦力になる。その戦力を削る行為は控えていただきたい。)」
男は冷静に、少し動揺を隠せずに言った。
「(はいはい。じゃあ行ってくるわ。)」
闇の中から、気配が消えた。
陽も完全に昇りきった頃。
1人の男が、トリアングルより戻った。
その背中に、1人の悪魔を携えて。
その様子を、一人の男が見ていた。
「おぉ!オンブル殿!よく戻られた。」
男は戻ってきた彼を見て喜び、すぐに後ろの悪魔に気づき驚いた。
「そ、その背中の方は?」
「あぁ、俺の契約した悪魔だ。ちょっと成り行きでな。」
悪魔は、男の前に出て、うやうやしく礼をした。
「はじめまして、私はルヴァンシュ。彼と契約した、影の悪魔よ。」
「お、おう。俺はアベルだ。オンブルの、上司だ。」
アベルと名乗った男が握手を求めるが、エーヌは応答しない。
「私は契約者以外と馴れ合うつもりはないわ。命令されたらするけど。」
「お、おう。すまねぇ。」
別に握手しようと思えばした。
だが、エーヌはしなかった。
この町に、他の悪魔がいる。
それも、だいぶ近くに。
もし、目の前の男が契約者ならかなり不利になる。
同じ悪魔だとしても、地上では関係ない。
「アベルさん。それより、トリアングルの守護姫を殺したんだ。すぐ様軍部に報告しないと。」
「あぁ、そうだ。30年前の屈辱を晴らさんとな。」
男は娘の遺体を受け取り、町の中へ走って行った。
「……貴方も行かないの?」
エーヌが彼に聞くと、
「俺は、寄るところがある。それに、下っ端が行っても何の意味もねぇからな。」
彼からは、先程の覇気を微塵も感じなかった。
町の商店街を通り抜ける。
だが、開いている店は少なく、町の住民は生気のない顔をしている。
排水路に積まれた死体の上を、ハエやうじが集っている。
「……酷い町並みだろ?みんな、流行病に怯えてる。」
彼もまた、流行病を恐れている。
話を聞いた所、数年前から流行りだした病は、彼の家族を奪った。
トリアングルでも病は確認されていたが、病の拡大を恐れ、治療薬を渡さなかった。
元々抗体を持っていたのか、彼は病にかからなかった。
それで、トリアングルへの報復を誓った。
「流行病、か。それで、貴方は今どこへ向かっているの?」
エーヌは、少し分かりきった質問をした。
「もちろん、報告だよ。」
彼は呟くように言った。
町の中心を抜け、別の門から町の外へ出る。
少し寂れたそこは。
「墓地……。」
「あぁ、俺の家族が眠ってる。」
-クウィニー・バロック ここに眠る-
-ハーレンシア・バロック ここに眠る-
冷たい石に刻まれた名は、不格好で少し汚い。
「俺が、彫ったんだ。この町の墓守は、もうジジイ共しかいないからな。」
彼は、その文字を愛おしそうになぞる。
「なぁ、ルヴァンシュ。俺の復讐が済んだら、お前はどうするんだ?」
エーヌは、まっすぐ見る彼の目に感じた。
この男は、復讐に動かされていたにすぎない。
この前のような覇気は、きっと消えてしまう。
「……私は私よ。貴方に失望したら、他の契約者を探しに行くだけ。」
だから、精々楽しませてちょうだい。
そう、付け加えた。
「……では、アベルどのの部下が殺害に成功したという事で、トリアングルに攻め込む。この好機を逃がしてたまるか!」
町の中の屋敷。
そこで、数人の男が作戦会議をしていた。
町長グローリーは、痺れを切らしていた。
この町、スクウェイの現状は相当な物だ。
なんとかして、現状打破したかった。
「……町長。アベルどのの部下が契約したという悪魔は、いかが致しますか?」
参謀の1人が問いかけた。
「無論、彼に言い聞かせ戦争に参加させる。ただ、守護姫とその天使を殺したことはすぐ3女神に伝わるだろう。厄介な事になる前にアルベール家を根絶やしにするぞ!」
町長が大きく宣言した。
咆哮の中、1人の参謀官は座ったまま。
誰にも聞こえない声で呟いた。
「(…オンブルが契約した悪魔を探ってこい。いいか、手出しも姿も出すなよ。)」
「(あら、大丈夫よ。この僕が、そんなヘマをすると思って?)」
男のすぐ下、影の中から声が聞こえた。
「(ただ……、気に入らなかったら殺してもいいかしら?)」
僅かに舌なめずりをする音も聞こえた。
「(アレもまた戦力になる。その戦力を削る行為は控えていただきたい。)」
男は冷静に、少し動揺を隠せずに言った。
「(はいはい。じゃあ行ってくるわ。)」
闇の中から、気配が消えた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※「なろう」にも重複投稿しています。
私と義弟の安全は確保出来たので、ゆっくり恋人を探そうと思います
織り子
恋愛
18歳で処刑された大公家の令嬢、セレノア・グレイス。
目を覚ますと――あの日の6年前に戻っていた。
まだ無邪気な弟ルシアン、笑う両親。
再び訪れる“反逆の運命”を知るのは、彼女だけ。
――大公家に産まれた時点で、自由な恋愛は諦めていた。だが、本当は他の令嬢達の話を聞くたびにうらやましかった。人生1度きり。もう少し花のある人生を送りたかった。一度でいいから、恋愛をしてみたい。
限られた6年の中で、セレノアは動き出す。
愛する家族を守るため、未来を変えるために。
そして本当の願い(恋愛)を叶えるために。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
マリアンヌ皇女の策略
宵森みなと
恋愛
異国の地シンホニア国に、帝国から輿入れした若き王妃セリーヌの死。
王妃としての務めを果たし、民との交流に心を尽くしてきた、優しき王妃の裏の顔は誰も知らなかった。セリーヌ王妃の死は、なぜ起こったのか。なぜ、シンホニア国は帝国の手に落ちたのか、そこには一人の少女の静かなる策略があった。
虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……
くわっと
恋愛
21.05.23完結
ーー
「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」
差し伸べられた手をするりとかわす。
これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。
決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。
彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。
だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。
地位も名誉も権力も。
武力も知力も財力も。
全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。
月並みに好きな自分が、ただただみっともない。
けれど、それでも。
一緒にいられるならば。
婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。
それだけで良かった。
少なくとも、その時は。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる