Je veux t'aimer

☆甘宮リンゴ☆

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#7 隣町の現状

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-side:Haine-

陽も完全に昇りきった頃。
1人の男が、トリアングルより戻った。
その背中に、1人の悪魔を携えて。
その様子を、一人の男が見ていた。
「おぉ!オンブル殿!よく戻られた。」
男は戻ってきた彼を見て喜び、すぐに後ろの悪魔に気づき驚いた。
「そ、その背中の方は?」
「あぁ、俺の契約した悪魔だ。ちょっと成り行きでな。」
悪魔は、男の前に出て、うやうやしく礼をした。
「はじめまして、私はルヴァンシュ。彼と契約した、影の悪魔よ。」
「お、おう。俺はアベルだ。オンブルの、上司だ。」
アベルと名乗った男が握手を求めるが、エーヌは応答しない。
「私は契約者マスター以外と馴れ合うつもりはないわ。命令されたらするけど。」
「お、おう。すまねぇ。」
別に握手しようと思えばした。
だが、エーヌはしなかった。

この町に、他の悪魔がいる。
それも、だいぶ近くに。
もし、目の前の男が契約者ならかなり不利になる。
同じ悪魔だとしても、地上では関係ない。
「アベルさん。それより、トリアングルの守護姫を殺したんだ。すぐ様軍部に報告しないと。」
「あぁ、そうだ。30年前の屈辱を晴らさんとな。」
男は娘の遺体を受け取り、町の中へ走って行った。
「……貴方も行かないの?」
エーヌが彼に聞くと、
「俺は、寄るところがある。それに、下っ端が行っても何の意味もねぇからな。」
彼からは、先程の覇気を微塵も感じなかった。

町の商店街を通り抜ける。
だが、開いている店は少なく、町の住民は生気のない顔をしている。
排水路に積まれた死体の上を、ハエやうじが集っている。
「……酷い町並みだろ?みんな、流行病に怯えてる。」
彼もまた、流行病を恐れている。
話を聞いた所、数年前から流行りだした病は、彼の家族を奪った。
トリアングルでも病は確認されていたが、病の拡大を恐れ、治療薬を渡さなかった。
元々抗体を持っていたのか、彼は病にかからなかった。
それで、トリアングルへの報復を誓った。
「流行病、か。それで、貴方は今どこへ向かっているの?」
エーヌは、少し分かりきった質問をした。
「もちろん、報告だよ。」
彼は呟くように言った。

町の中心を抜け、別の門から町の外へ出る。
少し寂れたそこは。
「墓地……。」
「あぁ、俺の家族が眠ってる。」

-クウィニー・バロック ここに眠る-

-ハーレンシア・バロック ここに眠る-

冷たい石に刻まれた名は、不格好で少し汚い。
「俺が、彫ったんだ。この町の墓守は、もうジジイ共しかいないからな。」
彼は、その文字を愛おしそうになぞる。
「なぁ、ルヴァンシュ。俺の復讐が済んだら、お前はどうするんだ?」
エーヌは、まっすぐ見る彼の目に感じた。
この男は、復讐に動かされていたにすぎない。
この前のような覇気は、きっと消えてしまう。
「……私は私よ。貴方に失望したら、他の契約者を探しに行くだけ。」
だから、精々楽しませてちょうだい。
そう、付け加えた。

「……では、アベルどのの部下が殺害に成功したという事で、トリアングルに攻め込む。この好機を逃がしてたまるか!」
町の中の屋敷。
そこで、数人の男が作戦会議をしていた。
町長グローリーは、痺れを切らしていた。
この町、スクウェイの現状は相当な物だ。
なんとかして、現状打破したかった。
「……町長。アベルどのの部下が契約したという悪魔は、いかが致しますか?」
参謀の1人が問いかけた。
「無論、彼に言い聞かせ戦争に参加させる。ただ、守護姫とその天使を殺したことはすぐ3女神に伝わるだろう。厄介な事になる前にアルベール家を根絶やしにするぞ!」
町長が大きく宣言した。

咆哮の中、1人の参謀官は座ったまま。
誰にも聞こえない声で呟いた。
「(…オンブルが契約した悪魔を探ってこい。いいか、手出しも姿も出すなよ。)」
「(あら、大丈夫よ。この僕が、そんなヘマをすると思って?)」
男のすぐ下、影の中から声が聞こえた。
「(ただ……、気に入らなかったら殺してもいいかしら?)」
僅かに舌なめずりをする音も聞こえた。
「(アレもまた戦力になる。その戦力を削る行為は控えていただきたい。)」
男は冷静に、少し動揺を隠せずに言った。
「(はいはい。じゃあ行ってくるわ。)」
闇の中から、気配が消えた。
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