Je veux t'aimer

☆甘宮リンゴ☆

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#6 力と契約 from Sagesse

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地上で語られる天使の存在。
彼らは人間に救いの手を伸ばし、心の拠り所となる。
それは、天使にも同じ。
互いの不足を補い、共に成長していく。
そうして彼らは「契約」し、力をつけていく。



-side:Sagesse-

サジェスが街の入り口まで行くと、既に1人の少女が立っていた。
「……あなたは。」
「お待ちしておりました、天使様。私、アルベール家次女のイノセンス・アルベールと申します。」
少女は深くお辞儀をした。
まだ幼いながらも、威厳を持った無垢な瞳は、じっと見つめられた人を虜にしそうである。
サジェスは少し戸惑って、落ち着いてから言った。
「お出迎えありがとう。早速で悪いのですが、すぐに御自宅まで案内出来ますか?」
「はい。……お急ぎの用ですので、お早めに移動します。」
少女は落ち着いて返した。

町長の家へ向かう最中、次女がこの街の事を話してくれた。
この街、トリアングルは、3つの泉への巡礼の際に訪れる人が多い。
さらに、悪魔や異教徒に対して働く結界があるため、街の秩序は護られていた。
だが、一度結界に穴が開いてしまうと、たちまちのうちに侵略されてしまう。
元々、資源も豊富で作物の栽培環境も良いため、この街を狙う国が多いらしい。
「結界が揺らいだ時、隣国から大軍が押し寄せて来たこともありました。この街はあまり大きな軍隊を持っていません。父がなんとか押し返していましたが、それももう昔の話です。」
町長は、御歳76だという。
「最後に侵略してきたのは、今からちょうど30年前。隣国も、しびれを切らして来たのでしょう。一刻も早く、結界を強化しないと…。」
「……えぇ。」
サジェスはただ、頷くしか出来なかった。

「着きました。ここに、私の兄がおります。」
街のほぼ中心部に、その家はあった。
他の家に比べて少し大きく、赤い屋根が印象的だ。
サジェスは教会以外の建物を見るのは初めてである。
「…凄い。」
その大きさだけではない。
庭の草木には植物の精霊が宿り、光の精霊と戯れている。
風の精霊が、土の精霊が、家にあいさつをする。
精霊達に愛された、心地の良さそうな家だ。
「こちらへどうぞ。」
案内され、家の中へ入るとすぐ、が目に入った。
室内だというのに、ステンドガラスの張られた窓から差し込む日差しを浴びて、力強く咲く向日葵だ。
まるで、神々しさを帯びてサジェスを迎えているようだった。
「…この花は、先の病で亡くなられた母が、大切に育てていた向日葵です。病に倒れられる前までは、母が天使さまと契約しておりました。」
次女は少し、寂しそうに言った。

階段を登った所にあった祭壇の間に、1人の男が立っていた。
若く血色のいい肌色をし、つややかな銀の髪は後ろに束ねられていた。
そして、彼の周りには多数の精霊が漂っている。
やがて、彼がこちらに気づくと、深くお辞儀をした。
「はじめまして。わたくしがクラージュ・アルベールです。この度は、契約に応じて下さりありがとうございます。」
丁寧な言葉遣いで、透き通った声が、彼のカリスマ性を表していた。
「はじめまして。僕はサジェスです。まだまだ未熟な天使ですが、よろしくお願いします。」
サジェスも深くお辞儀をした。
「早速ですが、今から契約をします。内容は、『この街の守護と3女神のサポート』で。」
「はい、わかりました。」

互いに懐から十字架を取り出す。
そして、空いてる手を重ね、祈りを唱える。
「我が名はクラージュ・アルベール。主の忠実なる下僕なり。」
「我が名はサジェス。願い聞き給う天使なり。」
「「互いの祈りを持って、ここに『契約』となす。」」
触れ合った手から光の粒が溢れ、帯状になり、中指に羽のような模様が巻きつく。
『契約』の証だ。
「ふぅ、これで私とサジェスさまは『契約』した状態になりました。お疲れ様です。」
彼が握手を求める。

「…………。」
だが、サジェスは応答しない。
下を向いたまま、動かない。
「……サジェスさま?」
彼がサジェスの肩に手を置くと、その身体が震えていることがわかった。
「!これは……。」
サジェスの身体がグラグラと動き、そのまま、後ろに倒れた。
「!大変!すぐ、寝室へ!」
儀式を見守っていた次女が、慌てて駆け寄る。
「……ぁ、ぁ、ぁ、ぅ。」
サジェスは、ヒューヒューと喉を鳴らしていた。
そして、そのまま意識が遠ざかっていった。

「……ん、んあ?」
サジェスが目覚めたのは、陽も沈んだ頃。
視界がまだ揺れており、酷い頭痛に見舞われた。
「……あぁ、お目覚めですか?」
側のチェアには、彼が座っていた。
「あの、僕、何があったんですか?」
「光中毒を起こしていました。おそらく、契約したことによって急激に光の力が入ったからでしょう。」
彼が水をグラスに入れ、サジェスに渡す。
「サジェスさまは天界から降りてきたばかりだと聞きます。地上では少し訓練をしないと、漂う光の力をたくさん吸収してしまいますので。」
彼から渡された水を飲みながら聞く。
少し、恥ずかしくなった。
光の力を操り、己の力に変えて法術を使うというのに、その力によって倒れるとは。
「(……まだまだ、未熟だな。)」
サジェスは、心の中でそう思った。

「さて……、私とサジェスさまは契約状態になりましたが、サジェスさまは知の女神様の元で、修行をなされるのでしたね?」
「えぇ、そうです。」
「でしたら、その指輪を見えなくした方がいいでしょう。知の泉には、巡礼者も訪れますからね。」
普通、『契約』をした人間と天使は離れて行動しない。
契約者と離れた天使など、悪魔の格好の的だ。
「そうですね。教えて下さりありがとうございます。」
サジェスは深々とお辞儀をした。
そして、指輪を軽く指で弾くと、その模様がスっと消えた。

「改めて。私はクラージュと呼んでください。サジェスさま。」
彼がまた握手を求めた。
「わかりました、クラージュ。これからよろしくお願いします。」
サジェスは、強くその手を握った。
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