見えない君と恋をする。

きーち

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数日後、自宅にて愛奈は受話器片手に、岬の電話番号が書いてあるメモをしきりに見返していた。たった、11個の数字を。何度まなこでなぞったかしれない番号を、やっと打ち出した。カタ、カタと軽い音が響く。そんな中、最後の数字、5の数字は鈍い感触がしたのだ。順調に数字を打っていたというのに、最後の「5」のせいで後味が悪かった。そして感触の悪さを傍に、コールを鳴らした。プルルル、プルルル、プルルル………。あと何回の「プルルル」を聞けば岬と繋がる?。あなたは今何をしてる、何処にいる??。早く、出てくれよ。甲高い発信音が頭に響く。
「はい」
こもったような、聞き取りづらい声が聞こえた。
「あの・・・」
電話越しとはいえ緊張のせいか、あまり口が動かなかった。沈黙の後、向こうから遂に口を開いた。
「ん?、その声は・・・あの、この間の・・・えーと、愛奈さんでした?ですよね?」
「!」
まさか名前を覚えられていたなんて。夢だろうか。
「あ、違いましたか。申し訳ありません」
「い、いやっ合ってます…」
「ですよね、良かった。どうしたんですか?」
「いや、あのー。来週の土日暇でした、らあのなんというか」
「・・・何を言いたいんだい」
岬は笑っていた。
うわー、笑ってるんだ。笑った時に出た息のせいで耳がこそばゆくなった。岬の口元の大きな三日月を想像していた。そうしていたら、少し愛奈も緊張がほぐれた気がして、愛奈の口元にも細い細い三日月が昇った。
「来週の土日、予定ありますか。良かったら、、、」
「来週の土日・・・んー。その日は駄目かな」
あぁ、駄目か。仕方ないな。
「で、その日がなんなの?」
なんなの…か。「会いたい」、いやそれは気持ちが悪い。「遊びたい」、いや小学生か、はたまた夜の遊びか。なんてね。「出かけたい」…………うーん、いまいちしっくりこないな。理由といえばそれなのだが。そんな時、愛奈は都合のいい嘘を思いついた。これなら自然だと思った。
「あの、遊園地のチケット2枚もらって、友達誘ったんですけど来れなくて、岬さんどうかなぁ・・・なんて」
「あー。でも来週の土日は・・・」
「じゃあ、再来週は!?」
愛奈が切り込んで言った。しまった。しつこいぞ、私。岬も何だこの「しつこい女は」なんて思っているに違いない。だって、私なら思うもん。自分で言ったくせ受動的にそう思わされた。
「えっ。えー、と」
ほら、岬も困った顔をしているではないか。見えはしないけど。
「いや、大丈夫です!ごめんなさい!」
愛奈は過去を顧みつつ、反省した。久し振りの岬とのつながりを、断つ事が嫌でならなかった。今日電話をかけたなら、あと3週間は電話をし難い。
「・・・来週の土日は空いてるけど。チケットもったいないじゃん。どうせ僕も暇だし。いいよ?」
「えっ」
愛奈は一気に高揚した。また、会える。岬に会える。
11月29日・遊園地のエントランスゲートを待ち合わせ場所に、愛奈はじっとその日を待った。もちろん、美嘉には直ぐにLINEで伝えた。まだ行ってもないのに、夢のようだった。
きっと、当日は緊張して楽しむ事も忘れるだろう。今のうちに想像、妄想に胸を膨らませて楽しんでおこう。
待ち遠しくも、まだ来なくていいと相容れない思いに揺れる愛奈だった。
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