異世界への迷い人?

大器晩成らしい

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「上がるなら、さっさと上がれ」

こいつで最後だな。

これ以上は、安全に座れるスペースがない。

「上り切ったら、梯子を引き上げろ。これ以上は無理だ」

獣に見つからないよう、コテージまで逃げて来られた人のみ、梯子へと誘導し、屋根に避難させた。

いつ救助がくるか分からない現状、ずっと立ちっ放しでいるのは無理がある。

それに、生き残ってる人が少なくなってくると、獣に見つからずに上らせるのも難しい。

いま、ここにいる人達を、危険に晒す訳にはいかない。

皆も解かっているのだろう、反論は出なかった。



「グルグワアア」

一際大きな唸り声が、キャンプ場に響き渡った。

そして、それが合図だったのか、獣達はピタッと攻撃を止めると、一斉に森の中へと、駆け込んで行った。

・・・帰っ、たのか?

怪我をして、動けない生徒もいるのに??

あと少しの所だったのに、止めも刺さずに立ち去るなんて。

こう言っちゃ何だが、何でだ?

いや、助かって良かったと思うよ、もちろん。

でも、あまりにも不可解な行動だから。


歓声があがり、戦ってる最中だった者は、気が抜けたのか、しゃがんだり、寝転んだりしてる。

まだ、油断するには早くないか?

確かに獣は立ち去った。

だが、まだ近くにいると思う。

戻ってくるかどうかは分からないが、戻ってこないと確定している訳ではないのだから、気は緩めるべきじゃない。


俺達は、救助が来るまで、屋根の上に留まる事にした。

下に下りるのは何時だってできるのだから、様子を見た方がいいって事で、意見が一致している。



どのくらいの時間が経ったのだろう。

パトカーや救急車のサイレンの音が、微かにだが、耳に届いた。

どんどん近付いてきている。

・・・助かった?

そこら中から、安堵のため息と、鼻をすする音が聞こえてきて、俺もやっと、肩の力を抜く事ができた。





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