シャム猫

大器晩成らしい

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疾風の場合9

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キャンプファイヤーの準備が始まり、係りが、丸太割薪を井桁型に、組み上げるのを待っている間、湖箔が、両手で口元を隠しながら、度々欠伸をしていた。

バスの中では、美和に寄りかかって、寝ていたようだが、かなり眠そうだ。

ぐらぐらしているから、目が離せない。

湖箔がいつ倒れて来ても大丈夫なよう、俺と森羅で、両脇を固めておいた。


フォークダンスのくじ引きでは、鬼気迫るものを感じた。

何かに拝んでいる者までいる。

誰もが息を呑む中、湖箔がくじを引き、俺達に見せてくれた。

女役だ。

紙に書かれたパートに分かれ、湖箔が女役の列に並ぶや否や、場のざわつきがピークに達した。

男役を引き当てた者は、喜びのガッツポースを出し、女役を引いた者は、湖箔と踊れない事に打ちひしがれ、いろいろと終わった感を出していた。

ちなみに俺も女役だ・・・

スカートを穿かされ、男と3曲も踊るのは、地獄以外の何ものでもない。

だが、普段、湖箔と接する事のできない奴等への、サービスタイムとして、一回りはできるよう考えての、3曲らしい。

だから、彼女持ちなのに男役を引いたって奴とかは、湖箔と踊りたい奴と役を交換してやり、代わりに貸しという形を作っているようだ。

そして、森羅は男役を引いていた。

〝普段一緒にいるのだから交換してくれ〟って泣きつかれていたようだが、どうやら、拒否したみたいだな。

戻って来て、湖箔の隣に並んでいた。

「俺、女役なんて踊った事ないんだけど」

「奇遇だな。俺もだ」

「森羅は?」

「ないな」

まぁ、そうだろ。

大概、数合わせは、背の低い奴等でやるからな。


施設のスタッフにステップを教わり、曲に合わせ踊り始めたのだが、俺は教えてやりたい〝お前等がっつき過ぎ、湖箔を見てみろ、お前らの鼻息の荒さに引いてるぞ〟って。










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