泉の聖

４８

バラのアーチまで辿り着き、バラに触れてみる。

ちゃんとある・・・

棘に気をつけながら、アーチを掴み、片足を入れてから、後ろを振り返り、ヴァンに大きく手を振りながら、叫んだ。

《　ありがとう、さよなら、元気でね！！　》

「聖様～、永い間、ありがとうございました～。お元気で～。ワオ～～ン」

ヴァンが遠吠えをすると同時に、そこかしこから、動物や鳥達の鳴き声が響いてきた。

うおっ！凄っ！

ちょっと胸にジ～ンとくる。

《　ありがとう！！　》

もう一度感謝の言葉を叫んでみたけど、聞こえたかな？


よしっ、行くか。

自分に気合を入れ、アーチを潜った。


真っ白な空間に扉が一つ浮かんでいる。


・・・体感的に２０分くらいここにいるんだけど、誰も出てこない。

え～と、やっぱりここは、あの扉をくぐるが正解なのかな？

出来れば案内人を置くか、若しくは、張り紙くらいはしておいて欲しい。

初めての場所だから、進んでいいのかいけないのか、一々躊躇してしまう。


コンコン

入ります。

一応ノックして、声をかけてから扉を開いた。

う～わ、なんだこりゃ。

扉から、なだらかな丘の上まで道が続いているが、それ以外は、一面真っ赤なバラで埋め尽くされている。

絶景ではあるが、生き物の気配はまるでない。

中に入って、地面や空間を、目を凝らして探してみても、虫一匹見当たらない。

これ、進んでも大丈夫なのかな？

不安になって、振り返ってみる。


・・・またか。

扉は消えていた。

ハァ、前進あるのみなのね。