泉の聖

大器晩成らしい

文字の大きさ
53 / 61

50

しおりを挟む
「お待ちしておりました」

いや、寝てたよね?

ほんとなら、あの白い空間でご対面じゃないの?

「えっ、いえっ、ここで合ってますよ」

じ~、めっちゃ目が泳いでいるんだけど。

「そんな事より、やっと一区切りついたのですね。永い間、あの世界の浄化をして下さり、ありがとうございました」

自分の意思で居た訳じゃないですよ。

何百年も、軟禁の上、強制労働だからね。

訴えられるものなら、訴えたいくらいだからね。

娯楽や便利な物が溢れている世界から、あんな何にも無い不便で退屈な所に行かされるのは、苦痛以外の何ものでもないからね。

それに、一区切りってどういう事?

「申し訳ないのですが、世界の汚染が進んだ時、異世界から聖なる者を泉に送り込み、それによって、少しずつ清浄化して貰っているのです。そして、世界の浄化が完了すると同時に、自動的にここに通じる門が、現れるようになっているのです。」

送り込み?

私、自分の意思で、あの泉まで行ったんだけど。

「ええ、探検心を利用しました。こんな大きなお店あったかな?こんな道あったかな?貴女の場合、こんな洞窟あったかな?ですね。興味を惹きそうなものを目の前に出現させて、自ら来てくれる様に、誘導しました。」

なるほど、まんまと嵌った訳だ。

「でも、貴女のおかげで、一旦ですが、浄化が終了したので、大体300~400年くらいは、あの泉に誰かを送り込まないで済むのです。感謝しています」


・・・でっ?

感謝をしてくれるなら、言葉ではなく、長年の勤務に対する対価をプリーズ。

「勿論です。願い事を三つ叶えましょう」

では、一つ目ですが、十個、願い事を叶えてください。

「それは、無理です」

《元の世界の記憶を全部思い出させる》というのと、《ここに来た時点の世界に戻す》というお願いは最低でもしないと、元の世界の記憶があやふやな状態で、どの時代に戻されるか判らないと聞いたのですが、そんなの、ここから帰される時に、願わなくてもするのが、当たり前ですよね。

何百年も奉仕をさせておいて、実質一個しか願いを叶えないのは、おかしくないですか?

「ぐぬぬぬ、全部で四個」

十個。

「五個」

十個。

「六個!これ以上は無理です!」

しょうがないですね。

では、六個で手を打ちましょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―

柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。 最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。 しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。 カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。 離婚届の上に、涙が落ちる。 それでもシャルロッテは信じたい。 あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。 すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

処理中です...