ネオ・クリーチャー

Aiリアン

文字の大きさ
8 / 12

人間とクリーチャー

しおりを挟む
 私の住んでいた町が死んだ。町の知り合い達は、みんな建物の瓦礫の下に埋もれて死んだでいた。
 何も受け入れられない自分がいる。いや、何も受け入れたくない。
 ついさっきまで怪物がこの町を襲撃し、次々と人間を襲いだした。一体何者かわからない人間でもなく獣でもない謎の怪物は、さっきまで平凡だったこの町に現れ全てを壊した。
 私の目の前で人が殺されていく。食われて、引きちぎられて、辺りには殺されていく人間の赤黒い血が飛び散る。肉片がそこら中に転がる。こんな残虐なことが次々と起こる中、私にできることはただ逃げることだけだった。
 自分が狙われるのを避けるためにひたすら逃げる。警察が駆け付け止めようとするが、警察でも対処できず次々と惨劇に巻き込まれた。警察は全滅した。
 私はそれでも悲鳴も出さずに逃げた。そして私は助かった。
 
 避難シェルターが設けられたことによって、同じ地域に住む住民たちの生き残りが集まった。老若男女問わず、シェルターにみんな避難し、自衛隊による援助により用意されたみんなインスタント食品を口にする。
 中にはあまりのショックで何も喋らず、食事にも手を付けず壁際に身を置いてじっと体育座りでいる人もいた。
 怪我人等の手当てに忙しい自衛隊は、シェルター内で他に怪我人がいないか確かめている。私は奇跡的にどこも怪我していなかったため、駆け寄ってきた自衛隊に異常がないよう報告した。
 怪我人にはトリアージと呼ばれるテープが張られている。これでどの程度の重症かを分かるようにするためである。
 私が怪我人が運ばれているのを見ていると、私の視界左側から誰かをおんぶして運んでいる若い青年がいた。

 「この人を治療してあげてください。大怪我してるみたいです」

 その青年が運んでいた人は40代程の男性で、頭から血を流している。その男性を自衛隊の方に預けたあと、その青年はまたどこかへ行った。急いでいるみたいだったので何かあるのかと思い追いかけていく。
 玄関先に辿り着いた私は青年の様子を後ろから見ていた。

 「さぁ、僕の背中に」

 また誰かをおんぶしている。若い男性だった。その男性を運んでいると私と青年が目と目が合って、青年が私の方へ近づいてくる。
 
 「ごめん。手が空いてるなら手伝ってくれない?まだ大勢怪我人がいるんだ」

 私は言われたとおりにまだ玄関先にいる大怪我をした住民の人達をおんぶして運んで行った。
 何とか全員運び終えた時、青年が私に近寄ってお礼をしてくれた。

 「ありがとう。いきなりごめんね。僕一人じゃ時間がかかるし体力が持たないと思ってつい呼んじゃった。でも助かったよ。僕シラって言うんだ。君は?」

 私はその青年に素直に答えた。

 「ローナ...」

 私はあまり人と接するのが苦手な性格だったことからあまり人と会話するのが得意じゃなかった。何より今こんな悲惨な生活を強いられたらなおさらだ。よくこういった被災地では知らない人が女性を狙う犯罪に巻き込まれるというのがよく聞かれる。だからこの青年もあまり仲良くするのは私的に嫌だった。
 被災地だからこそ助け合わなきゃいけない。これはよく聞くことだが、実際に被害に遭った人じゃない人に言われると真に受けることができなかった。ここにいる人で既に精神的にも限界が来ている人も何人かいて、他人に暴力をふるった様子だって何度も見ている。だから怖いんだ。
 私はそのシラという少年から被災状況のことや、私の知らないシェルターでの便利な生活用品を与えられたり、また何かあった時のためにお互いの連絡先の交換などをした。あまり他人と仲良くすることが苦手であり、いきなり連絡先の交換など大丈夫かと思ったが念のため交換しておいた。
 私はシラと別れを告げ、再び私がいた場所に戻った。そこでは自衛隊が用意したテレビ中継が繋がった様子を映しているパッドを用意されていた。私は画面の奥に映っている映像に思わず食いつく。

 「黒き戦士...」

 私が彼のことを黒き戦士と呼びヒーローと呼んでいることは誰も知らない。シェルター内ではその映像を見て「この黒いやつも怪物の同類な奴だろ?」と悪者扱いする。
 この黒き戦士はよくニュースで話題となっているが誰も怪獣や怪物戦っている様子を見ただけで謎の存在として見られていた。異質な存在、もしくは敵。自衛隊や警察からも恐れられていることがあるからかもしれない
 私はこの黒き戦士をそうは思わない。ヒーローだ。誰もが否定しようと私にとってヒーローなのだ。なぜそんな風に思えるか。私は生でこの黒き戦士を見たことがあるから。
 私はこの地域ではないところに大学があり、そこで怪獣が襲ってきたことがあった。その時も今回のように最悪な状況に巻き込まれたのだ。しかし、彼は私たちを助けてくれた。そして怪獣を倒してくれた。だから私もあんな風にこの世界を現実ではありえないと思われる存在と戦える人間になりたい。
 私は彼に憧れ今を生きているのだ。だから私にとって彼はヒーローだ。

 そしてその考えは今も変わらない。私はあらゆる武術、戦術を身につけた。周りからは弱そうな女として見られることが多く、1度あったのが夜中にシェルターで寝ていたら、私を案の定襲ってきたガタイのいい大男がいた。
 いきなり私の身体を強引に触って、私が身につけている衣類を脱がそうとした。だが私は何も恐れることなくその大男を護身術で片付けた。その男はすぐさま自衛隊に確保され連れていかれたのだ。
 私は彼のようになりたいと願って学んだことが活用された。これも彼のおかげだった。
 今私は大学のボランティアで頻繁に現れる怪獣や怪物による被害に遭った被災地にいる。私は出来ることなど限れれているがそこで避難している住民の援護をしていた。
 すると私が食事の準備に取り組んでいる時に、後ろから声をかけられた。その声は一度聞いたことのある男性の声に似ている。私は後ろをゆっくり振り返る。

 「ローナちゃんだよね?俺のこと覚えてる?」

 その声の正体。それはあの避難シェルターで怪我人を運んでいた青年である。私はシラに再び出会ったのだ。

 「こんなところで出会うなんて。偶然だよな。また手伝いをしてるの?すげぇ。偉いよなぁ」

 私はニッコリと頬を上げて、シラの方を向いて首を横に軽く振る。

 「シラがいたから私もここで手伝えるようになったのかも」

 私はお互いに笑顔になっていることに気づき、シラが手伝ってくれるというで協力してもらった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「俺は、クリーチャー...。何言ってんだ。俺は人間だろ?」

 「クリーチャーではない。ネオ・クリーチャー。クリーチャーよりも性能が上がり、従来のクリーチャーとは違い自立して動くことが可能。パワーも上がった。人間よりも思考力が高い。正にこの自然界において我々ネオ・クリーチャーは、人間を超えた存在。お前もその仲間だ」

 人工樹皮がはがれた顔の形ではないコンピューターの骨組みが電子音を交えてハルマに告げる。

 「ハルマ。お前はネオ・クリーチャーの第1号。一番最初に誕生した。そして我々はお前のコピーだ。お前と我々は力の差も同じだ。だからクリーチャーを倒せた。クリーチャーは人間の力、人間が使用する兵器では倒せない。しかしお前は倒せる。その理由がわかるか?お前は人間でもなければ人間が使う兵器でもない。クリーチャーだから。そして、私の名もハルマ。お前のコピーであり、第2号」

 お前も俺と同じだと!?。
 そもそもハルマとは俺だけではなかったのか。ハルマという名前は、俺が記憶がない時によく頭の中で突然ノイズ音で聞こえる「ハルマ」という声によって覚えた。そこで俺の名は何かを考えた時そのハルマという言葉にヒントがあるかもしれないと思った。俺はあちこちとハルマに関する情報を集めた。だが、何もわからず。俺の名前がもしかしたら「ハルマ」という名前なのかもしれない。そう思い俺が名付けた。

 「ハルマはお前だけではない。まだ量産されたお前がいる。我々はお前を仲間にする。そのために探していた。人間を、この世界を滅ぼすため。お前の役割はこの世界をクリーチャーから守るためではない。人間を、この世界を滅ぼすこと。協力しろ」

 「ちょっと待て。お前も俺のコピーなんだよな?」

 相手がこくりと頷き、「そうだと言っただろ」と俺を睨みながら返事をした。

 「だったら俺がお前らになるんじゃなく...」

 俺も、いきなりコピーだの言いだす相手に向かって、今から獲物を仕留めるかのようにバイザーの奥で睨んだ。

 「お前らが俺になれ!」

 獣の姿の装甲を身に纏う俺が、俺のコピーであるもう一人の俺に向かって高速で体当たりを食らわせようとした。しかし、相手には俺の攻撃が読めたらしく、華麗に避けたあと、瞬時の動きで空中で身体を反らし、俺の両足を捉えた。 俺が足の違和感に気づき振り払おうとすると、俺は前が見えてなかったため目の前の電柱に頭から衝突し落下した。
 お互い地面に倒れこみすぐさま起き上がった後、お互いの戦術により腕、拳、蹴り技が交じり合う。やはり自分と同じであるためなかなか倒せない。やるな俺。
 そもそも相手は、人工樹皮で覆っていた下の顔には骨格らしきものがなく顔パーツもない。どこが目でどこが口なんだこいつ。っていうかこいつって俺のコピーだから俺も同じか。じゃあ、俺もどこが口でどこが目なんだよ。いらんことを考えていたら、思い切り喉元を一発蹴りを入れられて後方へ倒される。
 なぜか自分と戦っているとなるとなかなか倒せない。思考を変えればいいのか?とりあえず相手は俺と同じ存在であるためどう攻撃しようが、どう防御しようが隙が見つからない。やはり手強い。
 何度も倒されては立ち上がり、何度も考えては見抜かれ倒せない。一体どうすればいいかわからない。

 「なぁ、俺のコピーってあとどれくらいいんの?」

 「協力すればわかる。だから協力しろ。お前は我々とともに在るべき」

 すると俺の背後からエルガが口を挟んできた。にやけた顔で俺に言う。

 「ハルマ。あっ、装甲を付けた方のな。お前に人間達を、この世界の平和など守る資格はないですよ。その理由はご存じで?」

 「なんだと?」

 俺のコピーは動きを止めて話を聞くように俺に指示した。

 「どうやらその記憶も無くしているようですね。じゃあお教えいたしましょう。4年前になるのかな?その辺は詳しく覚えてはないが、あなたはネオ・クリーチャー第1号としてこの世に誕生し、1度この国で単独テロを行っていた。その時の被害は約1千万人程。たった一人でですよ?そのせいであなたは警察独断で指名手配されていたんですよ」

 次の瞬間だった。俺はエルガのその言葉に、身体中の力が一気に抜けていく。

 「.......お、俺が...人々を...。待てよ。そんなの記憶にないぞ!デタラメを言うんじゃねぇ」

 「残念ながら記憶にないからわからないでしょうがが、事実です。あなたは指名手配されていてその顔が広まりそうになった。しかし警察は公表しなかった。その理由はこの国の警察もクリーチャーの存在に気づいていたんだ。お前がネオ・クリーチャーであることを知っていた。だがその存在を公表すれば増々クリーチャーに手を染める人が増えるかもしれない。それを恐れた。クリーチャーは警察の力ではどうにもならないからね。面倒なことになるかもしれないと確信したから公表しなかったんだ」

 エルガの言葉を聞いた俺は、頭の中が突然何も考えられくなった。そして、身体中の力が抜ける。知らないうちに地面に膝を付いていた。
 ゆっくりとこちらに近づきながらエルガは話を続ける。

 「クリーチャーを作ったのは我々だ。そしてそれを使用するのは誰か。この世界に生きる人間達だ。人間達が好きなように自分の手を汚さないやり方でこの世界に被害をもたらした。人間の意志でクリーチャーを操り、自分の欲望、野望、復讐心など様々な理由で使用する。クリーチャーは人間とともにあり、人間を支える存在である。しかしそれと同時に人間の悪い思考に使われる危険なモノでもある。それでも人間が必要としているのがクリーチャーだよ。つまりクリーチャーを作ったのはこの世界の人間達でもあるんだよ」

 「じゃあ、俺が今までやってきたことって...」

 「意味のないことだね。人間の数だけクリーチャーは存在し続ける。人間はクリーチャーを求めているんだからね。ましてやお前もかつては、この世界をクリーチャーと同様に被害をもたらし人々を殺した。お前も知らないうちに罪を背負っているんだよ」

 俺は地面に跪き、肩の力が抜けていく。そして地面に両手をついた。
 俺にも罪がある。じゃあ、俺はなんのために生きているんだ。何のための戦いだったんだ。
 俺は自分のことを「ヒーロー」とといきがって言って自分の存在を受け入れていた。だが自分はそんな奴じゃない。ヒーローなんて語る資格はない。例え世界の平和のために戦ってきたとしてもそれを壊すのが人間であり、それでも諦めずクリーチャーを撲滅させるためにたった一人で戦ってきた。人間達からも敵視されながらも役目を果たそうとした。
 だが俺は人間よりも悪であり、知らないうちにこの世界を破壊していた。
 俺は絶望の連鎖に抜け出せず、地面に倒れたままだった。

 「終わりだ。何もかも。だから協力しろ。お前にはヒーローなどという器ではない!」

 コピーの俺が、自分に襲い掛かろうとこちらに向かってくる。だが俺はスモークが出せるガジェットを取り出し、敵の方へ放り投げた。
  そして俺はその場を逃げていく。

 「あらら。現実逃避したくなったのかな?クリーチャーも意思を持てば人間と変わらないようだ」

 俺のボイスレコーダーからその声を捉えたのを最後に、上空に羽を広げ俺は飛んだ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...