ユードゥグ・スルーク神話 原初の刻、廻る神々の譚

ンヴ

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猿へと退化した人類が、イゲムノシの密やかな導きにより再び知性を獲得し、新たな文明を築き上げてから、さらに数万年の歳月が流れた。かつて神々が闊歩し、超越人や超人が覇を競った惑星は、今や「地球」と呼ばれ、高度な科学技術が人々の生活を支える星となっていた。過去の壮絶な戦いや神々の存在は、風化した神話やおとぎ話として語られるのみ。人々は空を見上げても、そこに神の姿を求めることはなく、自らの知恵と力で未来を切り開けると信じていた。

しかし、忘れ去られた過去の残滓は、静かにその胎動を続けていた。

地球暦2XXX年。世界有数のエネルギー研究施設「オリジン・ラボ」で、人類の未来を左右するとされる新エネルギー実験が行われていた。だが、実験は未曾有の大爆発を引き起こし、施設は壊滅。衝撃波は世界中を駆け巡り、各地で原因不明の地殻変動や異常気象を誘発した。人々がこの大災害に恐怖し、混乱する中、誰にも知られることなく、二つの強大な魂が永い眠りから覚醒しようとしていた。

かつて、兄弟喧嘩の果てに自らを封印したグランドロアとゲルノース。彼らの封印地は、奇しくもオリジン・ラボの爆心地近くに存在していた。爆発によって生じた膨大なエネルギーは、数万年の時を経て脆弱になっていた封印を破壊し、二人の兄弟を現代へと解き放ったのだ。

「……ここは……どこだ……?」
最初に目覚めたのはグランドロアだった。周囲に広がるのは、見慣れぬ金属と硝子の建造物の残骸。空には奇妙な飛行物体が飛び交い、行き交う人々の服装も、言葉も、何もかもが異質だった。自らの肉体は封印前と変わらぬ力を宿しているが、世界はあまりにも変わり果てていた。そして、胸の奥底に燻っていた弟への憎しみと、自分をこのような目に遭わせた世界への怒りが、再び黒い炎となって燃え上がるのを感じた。マハヴァウが封印の際に僅かに残した邪悪な神気が、彼の負の感情を増幅させていた。

やや遅れて覚醒したゲルノースもまた、眼前の光景に言葉を失った。しかし、彼の心に宿る正義の灯は消えていなかった。この未知の世界で、自分は何をすべきなのか。兄グランドロアの気配を僅かに感じ取り、再び彼と対峙しなければならない運命を予感しながらも、ゲルノースは周囲の状況を冷静に観察し始めた。

一方、地球の片隅で、ひっそりと古代の盟約を守り続けてきた一族がいた。かつてゲルノースから封印解除の鍵を託されたドラグラン。その末裔である若者、名はカイ。彼の家系は代々「鍵守」として、その使命と鍵を伝承してきた。オリジン・ラボの爆発と同時刻、カイが肌身離さず持ち歩いていた古びた鍵が、淡い光を発し始めたのだ。
「まさか……ゲルノース様の封印が……!?」
カイは一族に伝わる古文書を頼りに、光の源へと向かう決意を固める。

グランドロアの復活は、水面下で蠢いていた者たちをも刺激した。かつてアクラースに与し、その野望を受け継ぐ者たちが、微かに残っていたアクラースの魔力の残滓を通じて、グランドロアの強大な力の復活を察知したのだ。彼らはグランドロアに接触し、この新たな世界で再び覇権を握るための協力を申し出る。現代兵器と科学技術をグランドロアの力と融合させれば、世界征服も夢ではないと囁いた。グランドロアは、彼らの申し出を不敵な笑みと共に受け入れた。

時を同じくして、ゲルノースの覚醒もまた、ある者たちに感知されていた。それは、かつて人類最高神ムンドゥスの意志を継ぎ、パンディア神への信仰を細々と守り続けてきた者たちや、イゲムノシの遺伝子操作によって稀に超常的な能力を持って生まれる「新人類(ネオ・ヒューマン)」と呼ばれる者たちの一部であった。彼らは、ゲルノースの純粋な正義の力を感じ取り、この混乱した世界に現れた希望の光と見なした。

カイは苦難の末、ゲルノースと接触することに成功し、ドラグランから託された鍵を差し出した。
「ゲルノース様、お待ちしておりました。これは貴方様の力の鍵。そして、我ら一族は、貴方様の正義のために戦うことを誓います」
ゲルノースはカイの言葉に感謝し、鍵を受け取った。そして、集い始めた仲間たちと共に、暴走を始めようとする兄グランドロアを止めるため、そしてこの変わり果てた世界の人々を守るために立ち上がることを決意する。

現代社会の支配層は、突如として現れたグランドロアとゲルノースという、理解不能な力を持つ存在を危険視し始めていた。彼らは最新兵器を投入し、両者の捕獲、あるいは排除を試みる。しかし、数万年前の戦士たちの力は、現代兵器のそれを遥かに凌駕していた。

グランドロアはアクラースの残党と共に、手始めにオリジン・ラボの跡地を占拠し、そこから世界に向けて自らの存在を宣言した。
「我こそはグランドロア! この堕落した世界に真の秩序をもたらす者なり! 我にひれ伏せ! さもなくば、我が力によって滅びるがいい!」
その宣言は、世界中に衝撃と恐怖をもたらした。

ゲルノースは、カイや新たに集った新人類の仲間たちと共に、グランドロアの暴挙を止めるべくオリジン・ラボへと向かう。
「兄さん! もうやめるんだ! こんなことをしても、誰も幸せにはなれない!」
「黙れ、ゲルノース! お前はいつだってそうだ! 私の邪魔ばかりする! だが、今度こそ、私の望む世界を創ってみせる!」
数万年の時を超え、兄弟の宿命の戦いが、再び始まろうとしていた。

その頃、超越人や超人が避難した惑星では、神々がこの地球の騒乱を静かに見守っていた。
イゲムノシは、自らが導いた人類が再び大きな争いを始めようとしていることに、複雑な表情を浮かべていた。ウルヴォス・ガルティトとアフィス・ディエネーは、イゲムノシの傍らで静かに佇んでいる。彼らが再び地球の歴史に介入する日は来るのだろうか。
そして、時の門の番人、時神ズヴォは、時の流れの歪みを敏感に感じ取っていた。この新たな戦いが、再び世界の理を揺るがす可能性を秘めていることを。

現代兵器と古代の超人的な力。科学と神秘。
グランドロアの野望と、ゲルノースの正義。
そして、数万年の時を超えて甦る過去の因縁。
地球の運命を賭けた、新たな戦いの幕が、今、静かに上がろうとしていた。
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