ユードゥグ・スルーク神話 原初の刻、廻る神々の譚

ンヴ

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時神ズヴォが時の門の番人となって幾星霜。世界は束の間の平穏を享受しているかに見えた。しかし、神々の、そして人々の心に燻る火種は、新たな争いの狼煙を上げようとしていた。

超人ギウスの子ギリアが子孫を残してから約六百年。その末裔であるグランドロアは三十歳、弟のゲルノースは二十歳になっていた。彼らの運命を大きく揺るがす事件は、遡ること約八十年前に端を発する。

ウルムの末裔にして、最悪級の悪の超越人と恐れられたアクラース。彼はアギロの末裔である心優しき超越人ライデルに近づき、「世界を平和にするためには更なる力が必要なのだ」と甘言を弄した。アクラースの持つ異様なカリスマ性に魅入られたライデルは、その言葉を信じ、自らの命と引き換えに、力のほぼ全てをアクラースに与えてしまう。ライデルは絶命したが、アクラースはその強大な力を悪用。かねてより脅威と感じていた人間、マンディールの末裔たちを狙い、大量虐殺を敢行した。マンディール誕生から約五百年、その末裔は約七十万人にまで増えていたが、アクラースの凶刃によってその多くが命を落とした。この惨劇こそ、アクラースが「最悪級の悪の超越人」と呼ばれる所以の一つである。

それから約二十年後。グランドロアとゲルノースの父であり、超人でありながら英雄と称えられたガリアが立ち上がった。彼は、プトー神から生まれた人類の味方をする神パンディアから力を授かり、超越人であるアクラースと互角かそれ以上の実力を得る。激闘の末、ガリアはアクラースを封印することに成功し、その名は世界に英雄として語り継がれた。

しかし、アクラースの脅威は消え去ったわけではなかった。アクラースにはラスアークとアキルウスという二人の子がいたが、その一人アキルウスが父の封印を解こうと画策していた。そこへ、神ハマヴァーンからわずか三十秒で生まれたという神マハヴァウが現れる。マハヴァウは人類に強い脅威を感じており、同じく人類を敵視するアクラースの復活を目論むアキルウスと利害が一致。マハヴァウはアキルウスに強大な力を与えた。
一方、マンディールの子であり人間であるムンドゥスもまた、神パンディアから力を授かっていた。さらに、パンディアが誕生してからわずか一日で創造した、他の神々と比べてやや白痴とされる「神の成れの果て」ラプティースも、人間であるムンドゥスに何故か強く惹かれ、自らの命を捧げて彼に力を与えた。
こうして、神々の力を得たアキルウスとムンドゥスは激突する。結果はムンドゥスの勝利。人間が、超人よりも格上の超越人を倒すという、この世界で初めての異例の事態であった。この勝利によりムンドゥスは神格化され、「人類最高神」とまで称されるようになる。
敗北したアキルウスは死滅する寸前、戦いの場がアクラースの封印地であったことを利用し、残った全ての力を振り絞ってアクラースの封印を解いてしまう。アキルウスは消滅したが、入れ替わるようにして最悪の超越人アクラースが復活。マハヴァウから更なる力を与えられたアクラースは、ムンドゥスと再び対峙するも、決着はつかず、世界は一時的な休戦状態に入った。

そんな中、英雄ガリアの次男であり二十歳になるゲルノースが、神パンディアから力を与えられ、その正義の心を人類最高神ムンドゥスに認められ、弟子入りを果たす。しかし、同じくパンディアから力を授かっていた兄のグランドロア(三十歳)は、ムンドゥスに認められなかった。弟が師を得たことへの嫉妬心は日増しに募り、兄弟げんかが絶えなかった。その心の隙を、アクラースは見逃さなかった。アクラースはグランドロアに接触し、「弟子にして右腕にしてやろう」と囁いた。アクラースの言葉に魅了されたグランドロアは、ついにその軍門に下り、アクラースを素晴らしい存在と思い込むようになってしまう。
こうして、世界を揺るがす兄弟喧嘩、グランドロアとゲルノースの戦いの火蓋が切って落とされた。

ムンドゥス陣営には、アキルウスの子アドロンの息子アゴス(四十歳)、その息子である長男ルドーマイラ(二十歳)と次男アガー(十歳)。そして、アクラースのもう一人の子ラスアーク(八十三歳)、その子レンザルク(五十八歳)とルシアーガ(五十三歳)、さらにルシアーガの子ルシラーガ(二十三歳)が協力。また、ヒュマスの子マンディールの弟アスナの子孫、約五百年後の末裔イシュトー(八十歳)、その子でありパンディアを最高神とする宗教「パンディア教」の教祖イシュラル(六十歳)。そして、パンディア教の信者でありマンディールの末裔、英雄ガリアの弟子ドラグラン(六十歳)とその子ドグラス(四十歳)、マラグ(三十八歳)、カラドリア(三十五歳)、ラグリアン(三十歳)。そして英雄ガリアの子、ゲルノース(二十歳)自身である。ドグラス、マラグ、カラドリア、ラグリアンはゲルノースに協力的であった。

一方、アクラース陣営には、アキルウスの子アドロン(六十歳)と、英雄ガリアの長男グランドロア(三十歳)が与した。アドロンとグランドロアは、神マハヴァウから力を与えられた。
この時点で、グランドロアはパンディアとマハヴァウの双方から力を得ており、パンディアからしか力を得ていないゲルノースに対して圧倒的に有利な状況にあった。ムンドゥスやアクラースが直接弟子に力を与えれば戦況は変わる可能性もあったが、力を与えた側は一時的に弱体化するため、その隙を突かれる危険性から、彼らは直接的な力の譲渡を躊躇していた。
しかし、この膠着状態を破ったのは父ガリアであった。英雄ガリアが息子ゲルノースに力を与えたことで、兄弟の力はほぼ互角となる。これを知ったマハヴァウはアドロンにも更なる力を与えたが、パンディアも黙ってはおらず、ドグラス、マラグ、カラドリア、ラグリアン、そしてドラグランにも力を与えた。これにより、戦局は一変し、ムンドゥス側、すなわちゲルノース側が有利な状況となった。

戦いが始まると、グランドロア側のアドロンはゲルノースと共に戦おうとしたが、彼を探していたドグラス、マラグ、カラドリア、ラグリアンに遭遇し、囲まれてしまう。多勢に無勢、圧倒的に不利な状況で戦うことを余儀なくされたアドロンは、奮戦虚しく敗北し、死滅した。
一方、グランドロアとゲルノースは互角の死闘を繰り広げていた。そこへドラグランがゲルノースに加勢。圧倒的に不利な状況に追い込まれたグランドロアは、これ以上の戦いは死を意味すると悟ったのだろう。天を仰いだ後、自らを封印した。
封印された者は、解かれない限りほぼ不滅の状態となる。しかし、封印を解く側は一時的に力を消耗するため、解かれた直後のグランドロアに攻撃されれば死滅する可能性があった。ゲルノースは、グランドロアの封印が解かれた時のために、自らの力で作った封印解除の鍵をドラグランに託し、自らも封印状態に入った。
実は、グランドロアの封印にはマハヴァウも関与しており、マハヴァウが封印に必要な力の大部分を負担したため、グランドロアは封印が解かれてもほとんどの力を保ったまま封印されることができた。年月が経てば封印状態でも力は回復するが、グランドロアは早期に封印が解かれる可能性を考慮し、戦う前にマハヴァウに相談していたのだ。ゲルノースもこれに薄々気づいていた。
こうして、世界を揺るがした兄弟の戦いは、両者の封印という形で一旦の幕を閉じた。

人類の祖にして初代帝王ガウィが誕生してから約百万年後。超人は約一億人、超越人は約三百万人、人間は約八十億人にまで増殖していた。
神イゲムノシは、この世界のありように深い絶望を感じていた。多くの超越人や超人が、人間を差別し、奴隷や道具のように扱っている様を目の当たりにしたからである。怒りに燃えたイゲムノシは、超越人と超人を絶滅させることを決意する。しかし、イゲムノシ自身の力だけではそれは不可能であった。
そこでイゲムノシは、原初の神ユードゥグ・スルークから、超越人や超人を絶滅させうる強力な神を誕生させることを考案。ユードゥグ・スルークに強大なエネルギーを与え、空間に衝突させるという荒業を試みた。これによりユードゥグ・スルークは消滅し、その結果として二対の神が誕生した。神や人間、物理法則に対して無敵であり、それらを一瞬で消滅させうる不滅の神ウルヴォス・ガルティト。そして、神や人間、物理法則、さらにはそれ以外のものに対してもほぼ無敵である神アフィス・ディエネーである。二柱の神は人間に似た姿をしていた。

しかし、イゲムノシはユードゥグ・スルークの消滅を望んではいなかった。彼はウルヴォス・ガルティトとアフィス・ディエネーを世界の理に組み込み、世界の年月の経過によって自然発生するように改変。そして、ウルヴォス・ガルティトの力で時神ズヴォを脅し、時の門を通過。ウルヴォス・ガルティトとアフィス・ディエネーを誕生させる前の時間軸にいる過去の自分に接触し、この計画を説明した。これにより、ユードゥグ・スルークが消滅する時間軸は回避され、原初神を失うことなく二柱の強力な神を誕生させることに成功した。ウルヴォス・ガルティトとアフィス・ディエネーは、創造主であるイゲムノシの命令に忠実に従った。ただし、この二柱が互いに衝突すると両者は消滅し、ユードゥグ・スルークが再誕してしまうという危険性があったが、ウルヴォス・ガルティトは物理的な干渉をほぼ受け付けないため、誰かが意図的に衝突させることは極めて困難であった。

こうして、ウルヴォス・ガルティトは、超越人と超人を無差別に殺戮するだけの神となった。彼の前では、超越人や超人が何人束になってかかろうとも無力であり、無傷で虐殺されていった。この圧倒的な力の前に、超越人アクラースも、超人であり英雄のガリアも、この惑星から超越人と超人を避難させるしかないと判断した。
アクラースは神マハヴァウに、ガリアは神パンディアに、それぞれの種族を安全な惑星へ避難させてほしいと懇願した。しかし、神の力をもってしても、一日に避難させられるのは約千人が限界であった。超越人全員の避難には約八年、超人には約二百七十三年かかる計算となり、あまりに絶望的な状況だった。
そこへ救いの手を差し伸べたのが、人類最高神ムンドゥスであった。元人間でありながらマハヴァウやパンディアを遥かに凌駕する力を持つムンドゥスは、一日に約一万人を避難させることができた。同様に、元超越人でありながら強大な力を持つアクラースも、一日に約一万人を避難させることが可能であった。これにより、超越人の避難は約百三十六日、超人の避難は約十二年に短縮された。
しかし、その間にも超越人と超人は毎日千人以上がウルヴォス・ガルティトによって虐殺され続けていた。この危機的状況に、時の門の門番である時神ズヴォが協力。ムンドゥスやアクラースをも上回る力を持つズヴォは、一日に約百万人を避難させることができた。超越人の避難は約三日、超人の避難は約四十九日へと大幅に短縮された。
そして、この緊急事態を憂慮した原初に近い神アズラースも介入。ズヴォやムンドゥス、アクラースを遥かに超える圧倒的な力で、一日に約一億人を避難させることができた。これにより、超越人も超人も、わずか一日もかからずに別の惑星へと避難することができたのだった。

人間は、かつて超越人や超人と共に暮らしていた惑星を支配するかのようになった。役目を終えたウルヴォス・ガルティトとアフィス・ディエネー、そして多くの神々は、危うく絶滅しかけた超越人や超人の未来を案じ、彼らが避難した惑星へと向かった。また、人間たちが超越人や超人の苦難を喜び、助けようとしなかったことへの失望や、神の加護が失われた惑星での災害や戦争で少数の残った神々が危険に晒される可能性など、様々な理由が神々の離反を後押ししたと言われている。ウルヴォス・ガルティトは、新たな惑星で殺戮を行うことはなかった。

それから約百万年の歳月が流れた。
神に見放され、神を倒せる者がいなくなった人間の惑星は、新たな脅威に晒される。惑星モンから宇宙に進出した永久増殖主によって創られた怪神たちが侵略を開始し、人間の文明は跡形もなく消滅。ほとんど全ての人類は死に絶え、生き残った者たちも、破壊された環境に適応するために、徐々に猿へと退化していった。
それからさらに数十万年。イゲムノシの密かな手助けもあり、退化した人類は再び人間へと進化を遂げ、新たな文明を築き上げた。

それこそが、我々の知る「現代」なのであった。
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