黒曜の誓い、竜を狩る者たち

ンヴ

文字の大きさ
53 / 100

53

しおりを挟む
虚無の混沌神と名乗る存在――かつてのノクスが放つ絶望的なまでのオーラは、星の民の遺跡全体を揺るがし、俺たちの魂を直接圧迫してくる。その力は、原初の虚無をも遥かに凌駕しており、もはや次元の異なる脅威だった。

「フフフ……サラシエルとかいう哀れな男も、結局は我が計画の歯車の一つに過ぎなかったということだ。彼が世界にかき乱した混沌の種が、結果として私を目覚めさせる土壌となったのだからな。そして、お前たちもまた、そのための道化を演じてくれたというわけだ」
虚無の混沌神は、全てを見透かしたような、そして全てを嘲笑うかのような声で言った。その言葉は、俺たちのこれまでの戦いの意味すらも否定するかのような、残酷な響きを持っていた。

「ふざけるな……! 俺たちの戦いは、決して無駄なんかじゃない!」
俺は、怒りに震えながら叫んだ。虹色に輝く新たな剣を握る手に、さらに力がこもる。

「そうだ! 私たちは、平和を願う多くの人々の想いを背負って、ここまで来たんだ! あなたのような存在に、この世界を好き勝手させるわけにはいかない!」
ルナもまた、聖なる光を最大限に高め、虚無の混沌神を睨みつけた。その小さな体からは、世界を守るという強い意志が溢れ出ている。

「面白い。ならば、見せてみよ。その矮小なる『想い』とやらが、この絶対的な『無』と『混沌』の前で、どこまで通用するのかをな!」
虚無の混沌神は、そう言うと、その両手から、宇宙そのものを破壊しかねないほどの、強大なエネルギー弾を放ってきた。それは、もはや闇とか光とかいう次元ではなく、全ての存在を根源から消滅させるかのような、純粋な破壊エネルギーだった。

「みんな、構えろ!」
俺は叫び、虹色の剣でエネルギー弾を受け止めようとする。しかし、その威力は凄まじく、剣を持つ手が痺れ、体全体が吹き飛ばされそうになる。

「ウルフルム!」
ルナが、聖なる光のバリアを展開し、俺を援護する。
ザナックとアルドリスも、それぞれの力を解放し、エネルギー弾の威力を少しでも削ごうと奮闘する。
リオとセナもまた、遠くからではあるが、自分たちにできる限りの支援を送ってくれていた。

「無駄だ、無駄だ、無駄だ! お前たちの力など、この私にとっては、取るに足らぬ塵芥に過ぎん!」
虚無の混沌神は、さらに強力なエネルギーを放ち続け、俺たちを徐々に追い詰めていく。

(くそっ……! これほどの力とは……! まるで、歯が立たない……!)

俺たちの体は傷つき、力も尽きかけていた。仲間たちの顔にも、絶望の色が浮かび始めている。
これが……本当に、最後の戦いなのか……?
俺たちは、ここで……終わってしまうのか……?

諦めの念が、再び俺の心を覆い尽くそうとした、その時。
俺の脳裏に、これまでに俺たちが出会ってきた、多くの人々の顔が浮かんでは消えていった。
ガラン隊長、エルネスト魔術師団長、森の賢者、そして、異世界で出会った緑鱗族のガルド……。
彼らが託してくれた想い、そして平和への願い。

(そうだ……俺たちは、一人じゃない……! 俺たちの背後には、数えきれないほどの想いが、希望があるんだ!)

そして、俺の胸元で、森の賢者から授かった「精霊の護符」が、再び温かい光を放ち始めた。それは、まるで世界中の生命の輝きを集めたかのような、力強く、そして優しい光だった。

その光は、俺の虹色の剣へと流れ込み、そして、仲間たちの心にも共鳴していく。
ルナの聖なる光は、さらに輝きを増し、
ザナックの折れない闘志は、再び燃え上がり、
アルドリスの闇と光の調和した力は、新たな可能性を示し始めた。

「みんな……! もう一度だけ……最後の力を……!」
俺は、叫んだ。

「「「応!!」」」
仲間たちの魂の叫びが、一つになった。

俺たちは、それぞれの持つ全ての力を、そして世界中の人々からの希望の想いを、一つに束ねた。それは、もはや個々の力ではなく、世界そのものが生み出した、奇跡の力だった。

「これが……俺たちの……世界の……答えだあああああっ!」

俺の虹色の剣から放たれた、希望の光の奔流は、虚無の混沌神が放つ絶対的な「無」のエネルギーと激しく衝突した。
世界が揺れ動き、空間が歪み、そして、全てが真っ白な光に包まれた。

どれほどの時間が経ったのか、分からなかった。
やがて、光が収まった時、そこには……。

静寂だけが残されていた。
虚無の混沌神の姿は、どこにもなかった。
彼が放っていた絶望的なオーラも、完全に消え失せていた。

後に残されたのは、傷つき、疲弊しきってはいたが、それでも確かに立っている、俺たち仲間たちの姿だけだった。

「……勝った……のか……?」
俺は、信じられないといった表情で、自分の手を見つめた。

「ええ……。ウルフルム殿……あなた方が……世界を……救ったのです……」
アルドリスが、涙を浮かべながら、か細い声で言った。

「やった……! やったぞおおおおっ!」
ザナックが、天に向かって雄叫びを上げた。

ルナは、ただ静かに、俺の胸に顔をうずめて泣いていた。その涙は、悲しみではなく、安堵と、そして喜びの涙だった。

俺たちは、ついに、全ての戦いを終えたのだ。
サラシエルの野望、ノクスの狂気、そして虚無の混沌神という、絶対的な絶望。
その全てを、仲間たちとの絆の力で、打ち破ったのだ。

星の民の遺跡は、その役目を終えたかのように、静かに輝きを取り戻し始めていた。
そして、俺たちの心の中には、かつてないほどの達成感と、そして未来への確かな希望が満ち溢れていた。

俺たちの物語は、ここで本当に、本当に終わりを迎える。
それは、多くの犠牲と、多くの涙の上に築かれた、かけがえのない平和。
この平和を、俺たちは、未来永劫守り続けていく。

そして、いつか、この物語が、遠い未来の誰かの心に届き、ほんの少しでも勇気や希望を与えることができたなら……。
それこそが、俺たちの戦いが残した、最高の証となるだろう。

ウルフルム、ルナ、ザナック、アルドリス、ガラン、アウストラ、リオ、セナ……。
そして、名もなき多くの人々の想い。
その全てが織り成す、壮大なる希望の叙事詩。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...