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第二部 企み
第十三章 密談
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「あの子はマゾやな・・・」
幸造の顔が不敵に歪む。
「ほぉ・・・?」
普段通りの冷静な表情で悟が聞いた。
スコッチの氷がカラリと溶けた。
広いリビングのホームバーでグラスを傾ける二人は、密談のような会話を楽しんでいる。
「先天性やな・・素質十分や・・・」
幸造は嬉しそうにバーボンを煽っていく。
底抜けに酒が強い。
首筋まで真赤にしながらも、ガウンを着込んだ老体はシャキッとしている。
とても六十を越えている風には見えない。
悟も酒に強く、グイグイと煽っている。
幸造は一人息子である悟と、こうして二人きりで飲むのが好きであった。
アメリカへ留学に出していた頃は寂しかったが、優秀な成績で帰国して会社の一員になるとメキメキと頭角を現した。
親の七光りという中傷など吹っ飛ぶ程に良く働き、斬新なアイディアも次々と出していくのだった。
秋元グループの成長は加速度を増し、業界で大きくのし上っていった。
悟も父が好きであった。
相変わらずの下品な関西弁に象徴される、アクの強い商法で業界の嫌われ者であったが、その戦略は的確に消費者のニーズに応えていたのだ。
中途半端な理論などクソ食らえだ。
幼い頃から父の苦労を見ながら育った悟は、決して自分の人生に腐る事なく前向きにぶつかっていく幸造を愛していた。
そして共に会社を大きくして復讐する事を誓うのだ。
世の中に、全ての女に。
しかし、そうは言っても女性に対して悟はフェミニストであった。
何時も敬愛の情の篭った態度で接し、評判も良かったのだが決して心までは許さなかった。
幼い頃に見た母の不倫が、鮮明に切なく脳裏に焼き付いているからだ。
だから今回の計画で思いついた残虐な罠を、幸造と楽しそうに練っていけるのだった。
それと春香の美しさには悟も衝撃を受けていた。
あのまま見合いをすれば、キッと好きになっていた事だろう。
そして多分・・・傷つくのだろう。
「遊んでる女なのかい・・・?」
悟が興味を示したのか瞳を光らせた。
「いやっ・・まだ処女やろ・・・」
新しい氷をグラスに入れ、酒を注ぎ足す。
琥珀色の液体が染み込んでいく。
「だったら、どうして・・・?」
悟が焦れったそうに声を出した。
そんな息子の表情が珍しいのか、幸造は嬉しそうに一口酒を飲むと勿体ぶって言った。
「いや・・な・・・。
仕草で分るねん。
何かの拍子に手ぇとか触れるとな、
ビクッと反応するんや。
しかも、そん時の表情が何とも言えん程、
色っぽうてなぁ・・・」
幸造の顔もトロケそうに崩れていく。
「そう言えば伊藤女史の話だけど・・・
とてつもないスケベな事を
アッケラカンとした顔をして。
聞いてくるって言ってたな・・・」
少し興奮してきたのか、悟のピッチが早くなっている。
「そうやろ・・・?
ああゆう女は一度あの味を覚えたら、
のめり込むでぇ・・・。
佐山の奴が厳しく躾たよって
何も知らんらしいけど、
素質十分や。
それに、あの大きい胸、見てみい。
もの凄うイヤらしい身体しとるでぇ・・・」
「確かに・・・」
父のスケベ面をまともに見せられて、苦笑しながらも悟は頷くのだった。
幾人もの女を漁ってきた幸造の眼力には素直に敬服していた。
風俗だろうが銀座の高級バーに勤めるホステスまでも、幸造が指摘した事は殆ど外れる事が無かった。
だからこれ程、女を取っ返え引っ返えしてもゴタゴタしないのだ。
いくら多額の手切れ金を払っていたとしても、嫌われたり性格の悪い女では揉める筈だ。
その辺は悟も見習っていた。
「じゃあ、自分の愛人にすれば・・・?」
悟がからかうように言った。
「勿論、そのつもりやで・・・。
そやけど、楽しむのはお前と一緒や。
それに、な・・・」
興奮で乾いた喉に強いバーボンを流し込む。
冷たい感触の後にカーッと焼けていく。
「究極の愛人は人の女房や思うんや。
逃げられる心配もないしな・・・」
自嘲気味の言葉に悟は真顔になった。
「冗談やない、ホンマの話や・・・。
カミさんや恋人は、
しょっちゅう気ぃ使わなアカンけどな。
人の女房やったら元々その男のもんやし、
かえって不条理な快感・・・ゆうんかな?
女もゴッツ燃えよるでぇー・・・。
まあ、これはお前のアイディアやけどな」
そこまで言って一気にグラスを空けた。
「俺もそう思うよ、オヤジ・・・」
息子の優しい口調に幸造の口も弾む。
「それに井上は使える男や。
将来、お前の右腕になって
秋元グループを支えられる男や。
井上ごと奴隷として調教しよったら、
ワシも安心して引退できるわ・・・」
「ふんっ、そんな気ねえくせに・・・」
「うはははは・・・」
悪企みは本当に楽しかった。
親子は心おきなく酒を煽っていく。
「春香はええで、今までで一番や。
正真証明のお嬢様やし、可愛いしな。
素直な性格やから洗脳しやすいで。
まあ、処女だけは井上にやるけどな・・・
その後はワシらの出番やで、悟・・・
よう気ぃつけとくんやでぇ・・・」
人を奴隷として調教していく。
会社の経営者としては、社員教育とはそんな物なのかもしれない。
悟はフト、そう思うのであった。
「根っからのエリートは好かんっ。
そやけど悟、お前は違うで・・・。
まだ店が小さかった頃から、
よう手伝ってくれたし、
メシの支度や洗濯も二人でようしたしな。
遊びたい盛りやったやろに・・・」
幸造が感慨深気に言う。
「いや、俺は好きでやってきたんだ。
商品が売れるのも気持ち良いしね・・・」
そう言いながらも悟の目は燃えていた。
春香や井上のようにヌクヌクと育ってきた奴らが、会社には沢山いるのだった。
幸造からも散々聞かされていた事だがそいつらを全部、自分の奴隷にする事は悪くないと思っている。
いや、むしろそうすべきなのだ。
この業界で更に君臨していくためには。
幸造達親子の野望は果てしなく続く。
酒の酔いも手伝って、二人の顔は醜く歪んでいくのであった。
幸造の顔が不敵に歪む。
「ほぉ・・・?」
普段通りの冷静な表情で悟が聞いた。
スコッチの氷がカラリと溶けた。
広いリビングのホームバーでグラスを傾ける二人は、密談のような会話を楽しんでいる。
「先天性やな・・素質十分や・・・」
幸造は嬉しそうにバーボンを煽っていく。
底抜けに酒が強い。
首筋まで真赤にしながらも、ガウンを着込んだ老体はシャキッとしている。
とても六十を越えている風には見えない。
悟も酒に強く、グイグイと煽っている。
幸造は一人息子である悟と、こうして二人きりで飲むのが好きであった。
アメリカへ留学に出していた頃は寂しかったが、優秀な成績で帰国して会社の一員になるとメキメキと頭角を現した。
親の七光りという中傷など吹っ飛ぶ程に良く働き、斬新なアイディアも次々と出していくのだった。
秋元グループの成長は加速度を増し、業界で大きくのし上っていった。
悟も父が好きであった。
相変わらずの下品な関西弁に象徴される、アクの強い商法で業界の嫌われ者であったが、その戦略は的確に消費者のニーズに応えていたのだ。
中途半端な理論などクソ食らえだ。
幼い頃から父の苦労を見ながら育った悟は、決して自分の人生に腐る事なく前向きにぶつかっていく幸造を愛していた。
そして共に会社を大きくして復讐する事を誓うのだ。
世の中に、全ての女に。
しかし、そうは言っても女性に対して悟はフェミニストであった。
何時も敬愛の情の篭った態度で接し、評判も良かったのだが決して心までは許さなかった。
幼い頃に見た母の不倫が、鮮明に切なく脳裏に焼き付いているからだ。
だから今回の計画で思いついた残虐な罠を、幸造と楽しそうに練っていけるのだった。
それと春香の美しさには悟も衝撃を受けていた。
あのまま見合いをすれば、キッと好きになっていた事だろう。
そして多分・・・傷つくのだろう。
「遊んでる女なのかい・・・?」
悟が興味を示したのか瞳を光らせた。
「いやっ・・まだ処女やろ・・・」
新しい氷をグラスに入れ、酒を注ぎ足す。
琥珀色の液体が染み込んでいく。
「だったら、どうして・・・?」
悟が焦れったそうに声を出した。
そんな息子の表情が珍しいのか、幸造は嬉しそうに一口酒を飲むと勿体ぶって言った。
「いや・・な・・・。
仕草で分るねん。
何かの拍子に手ぇとか触れるとな、
ビクッと反応するんや。
しかも、そん時の表情が何とも言えん程、
色っぽうてなぁ・・・」
幸造の顔もトロケそうに崩れていく。
「そう言えば伊藤女史の話だけど・・・
とてつもないスケベな事を
アッケラカンとした顔をして。
聞いてくるって言ってたな・・・」
少し興奮してきたのか、悟のピッチが早くなっている。
「そうやろ・・・?
ああゆう女は一度あの味を覚えたら、
のめり込むでぇ・・・。
佐山の奴が厳しく躾たよって
何も知らんらしいけど、
素質十分や。
それに、あの大きい胸、見てみい。
もの凄うイヤらしい身体しとるでぇ・・・」
「確かに・・・」
父のスケベ面をまともに見せられて、苦笑しながらも悟は頷くのだった。
幾人もの女を漁ってきた幸造の眼力には素直に敬服していた。
風俗だろうが銀座の高級バーに勤めるホステスまでも、幸造が指摘した事は殆ど外れる事が無かった。
だからこれ程、女を取っ返え引っ返えしてもゴタゴタしないのだ。
いくら多額の手切れ金を払っていたとしても、嫌われたり性格の悪い女では揉める筈だ。
その辺は悟も見習っていた。
「じゃあ、自分の愛人にすれば・・・?」
悟がからかうように言った。
「勿論、そのつもりやで・・・。
そやけど、楽しむのはお前と一緒や。
それに、な・・・」
興奮で乾いた喉に強いバーボンを流し込む。
冷たい感触の後にカーッと焼けていく。
「究極の愛人は人の女房や思うんや。
逃げられる心配もないしな・・・」
自嘲気味の言葉に悟は真顔になった。
「冗談やない、ホンマの話や・・・。
カミさんや恋人は、
しょっちゅう気ぃ使わなアカンけどな。
人の女房やったら元々その男のもんやし、
かえって不条理な快感・・・ゆうんかな?
女もゴッツ燃えよるでぇー・・・。
まあ、これはお前のアイディアやけどな」
そこまで言って一気にグラスを空けた。
「俺もそう思うよ、オヤジ・・・」
息子の優しい口調に幸造の口も弾む。
「それに井上は使える男や。
将来、お前の右腕になって
秋元グループを支えられる男や。
井上ごと奴隷として調教しよったら、
ワシも安心して引退できるわ・・・」
「ふんっ、そんな気ねえくせに・・・」
「うはははは・・・」
悪企みは本当に楽しかった。
親子は心おきなく酒を煽っていく。
「春香はええで、今までで一番や。
正真証明のお嬢様やし、可愛いしな。
素直な性格やから洗脳しやすいで。
まあ、処女だけは井上にやるけどな・・・
その後はワシらの出番やで、悟・・・
よう気ぃつけとくんやでぇ・・・」
人を奴隷として調教していく。
会社の経営者としては、社員教育とはそんな物なのかもしれない。
悟はフト、そう思うのであった。
「根っからのエリートは好かんっ。
そやけど悟、お前は違うで・・・。
まだ店が小さかった頃から、
よう手伝ってくれたし、
メシの支度や洗濯も二人でようしたしな。
遊びたい盛りやったやろに・・・」
幸造が感慨深気に言う。
「いや、俺は好きでやってきたんだ。
商品が売れるのも気持ち良いしね・・・」
そう言いながらも悟の目は燃えていた。
春香や井上のようにヌクヌクと育ってきた奴らが、会社には沢山いるのだった。
幸造からも散々聞かされていた事だがそいつらを全部、自分の奴隷にする事は悪くないと思っている。
いや、むしろそうすべきなのだ。
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