エリート妻色情飼育―性奴隷は人妻にかぎる―

山田さとし

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第二部 企み

第十四章 恋

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雑踏の流れが一斉に交差点を飛出していく。
色とりどりの服を着た人々が見える。

それらを眺めるのが何故か新鮮に思えて、春香は嬉しそうにため息をついた。

春香は幸せであった。
井上との恋も順調に育っている。

「待ったかい・・・?」
「ううん・・・」

息を切らせて走り寄る甘いマスクの男に、はにかむようにして答える女を道ゆく人が振りかえっていく。
ドラマに出てくるような美男美女であった。

とりわけ春香の美貌は街の雑踏の中でも際立っていたので、井上はこうして肩を並べて歩くだけでも幸せであった。
井上は理系出身という事もあり、女性とは余り縁がなかった。

殆ど経験も無く、尊敬する悟にタマに連れられる風俗の店ぐらいしか知らなかった。
それも春香と出会ってからは一度も行っていない。
付き合いの悪い奴と専務にからかわれようと、春香に対する強い想いがあったのだ。

春香も幸造が予想した通り、恋愛経験が殆ど無かった。
元々内気な性格は母親譲りで、厳しく躾られたせいもあるが無理にする恋愛よりは勉強や稽古の方が性に合っていた。

しかし初めて会った時から、井上の朴訥で優しい人柄に惹かれていた春香は週末に重ねるデートを心から楽しんでいた。
映画を観て食事をするという今時の若者にしては固過ぎる位であったが、かえって二人にとっては新鮮に感じて嬉しかった。

それに二人を紹介した手前、気を使う社長や専務が何かと便宜を図ってくれる。

「いいよ・・行ってこいよ、井上・・・」
新しいプロジェクトで忙しい時期にも、悟はデートの日は残業もさせずに早く退社させてくれた。

しかも悟達が接待で使う高級料亭やレストランを予約してもくれるのだ。
支払いをする時も、既に社長の幸造から連絡が入っていて済ませてあるという。

「ええんや、
あの子は大事な取引先の娘やさかいな」

恐縮して礼を言う井上に気さくな笑顔を零す社長に、井上は胸をジンとさせるのであった。

そんな二人であるから、互いに相手を労わり大切に恋を育んでいった。
楽しい時間はアッという間に過ぎ去り、三ヶ月を数える頃には街中を腕組みながら寄り添うまでなっていた。

見つめ合う瞳は言葉が無くても互いの想いを伝えていた。
コクンと頷く春香の艶やかな黒髪の香りを、愛おしそうに抱き寄せる井上であった。

※※※※※※※※※※※※※※※

眉を潜め苦しそうな春香の表情も、男にとっては嬉しい証であった。

帰り際に恥かしそうにシーツを気にする恋人を、井上は強く抱きしめて永遠の愛を誓うのであった。

そして愛する男からのプロポーズの言葉を、幸せそうに噛締める天使がいた。

※※※※※※※※※※※※※※※

「僕達、結婚します・・・」

晴れ晴れしく言う井上の隣で、頬を染めている春香が立っていた。

「ほうか・・良かったのぉー・・・」

幸造が嬉しそうに顔をクシャクシャにしている。
悟も普段する冷たい表情を崩して聞いていた。

「おめでとう、佐山さん・・・」
裕子の祝福の言葉に春香は目を潤ませた。

幸造と悟の計画は慎重に、そして着々と罠を広げていくのであった。


第二部 企み (完)
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