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シーズン1(中編)
第十一章 裏切り
「ゆ、裕君・・・・」
私の声はため息のように、か細く消えていった。
「ああっー・・・あっあっあっ・・・」
夫の変わり果てた姿に、理性が崩壊していた。
体中の力が奪われ、虚ろな視線を投げている。
「凄いっ・・あぁ・・す、凄いぃ・・・」
仰け反り悲鳴を上げる度に、女の髪を掻きむしっている。
「ンフフフ・・・」
時折、振り向く女の視線が絡みついてくる。
ズキンと心に突き刺さる。
(ひ、ひどい・・・)
嫉妬と憎しみが身体の奥底から沸き上がってくる。
(な、何なの・・この女・・・?)
私の感情を逆撫でするように挑発してくる。
耳元までカーッと熱くなる。
(ゆ、許せない・・・)
人の夫を奪い、その妻の前で平然といやらしい行為をするなんて。
悔しさに唇を噛んだ。
(えっ・・・?)
肩を抱く感触に顔を上げた。
男が、いた。
私の顔を見つめている。
「興奮するでしょう・・・?」
「な、何を言うの・・・?」
そのセリフにムッときた私は、男を睨みつけた。
「申し訳ない・・・」
男は一瞬、たじろいだ表情をしたが、直ぐに柔和な笑みを浮かべた。
「でも・・・」
言葉を繋いでいく。
「そう、これが・・・スワッピング。
夫婦交換・・なんです・・・」
低く優しい声。
(そう・・だ・・・)
あの女は、この人の妻。
余りのショックで肝心な事を忘れていた。
今、自分の肩を抱いているのは、あの憎むべき女の夫なんです。
(こ、この人達・・・)
一体、私達をどうするつもりなのかしら。
「今、あなたの旦那様と私のワイフが・・・」
諭すような口調で男は話していく。
「フェラチオ・・・
オーラルセックスをしている」
猥雑な単語が真剣な表情から漏れてくる。
当然というような落ち着いた態度。
私、視線を反らす事が出来なかった。
低い声が心に染み込んでくる。
まるで、催眠術のように。
(この人・・・)
ふと思った。
「当然、あなたにとって許されざる事です。
でも・・・」
(裸なのに・・・)
「嫉妬と共に妙に、
熱い気持ちが沸き上がってきませんか?」
不思議と、いやらしい感じがしない。
「私達夫婦は、これで倦怠期を切り抜けたのです」
(そう・・まるで・・・)
「極たまに、こうして刺激を求める私達は、
何時も新鮮な気持ちで
互いを愛し合っていけるのです」
大学の授業を聞いているみたい。
私を説得しているつもりなのかしら。
「勿論、奥様には強要しませんので御安心下さい」
(そ、そんな事・・・)
私は噴出しそうになった。
裸の男に言われても、信じられる筈はない。
(でも・・・)
「只、こうして側に
いさせて頂けませんでしょうか」
異常すぎるシチュエーションとバカ丁寧な口調に、頭が混乱していく。
何だか逆らえない気分になってしまう。
「とても図々しいお願いとは
思うのですが・・・」
(わ、わたし・・・)
どうしてしまったの?
自分の態度に戸惑ってしまう。
真剣ですまなそうな表情が、とても紳士的に思えて。
信じられない事に私、否定もしないで男の顔を見ていたんです。
「有り難う・・・」
男は嬉しそうに顔を綻ばせた。
身構えていた緊張感が完全にはぐらかされて、力が入らない。
肩を引き寄せられた。
「キャッ・・・」
小さく声を出したが、私は抵抗もせず身体を預けた。
「有り難う・・・」
男はもう一度呟くと、私を包むように更に深く抱き寄せる。
そのままジッと動こうとはしない。
「んふっ・・・あはぁ・・んん・・・」
女の荒い息遣いが聞こえる。
「ああっー・・・おぁっ・・い、いぃ・・・」
私の夫を犯している。
男の腕の中で残酷なショーを見ている。
(暖かい・・・)
ふと、そう思った。
愛する夫に裏切られ、悲しさと絶望が私の心を凍えさせていた。
男の優しさが癒してくれる。
そんな気がしたんです。
(わたし・・・)
無意識にパートナーを求めていたのでしょうか。
奪われた夫の変わりに。
それとも男の巧みな話し方に操られていたのかしら?
自分から、左手を男の腰に廻したんです。
直ぐに男の手が重なった。
ハッとしたけど私、握り返していた。
すると男も更に強い力で肩を抱いてくれる。
まるで、言葉の無い会話を二人で交わしているよう。
(ど、どうしよう・・・)
心臓がドキドキする。
自分の大胆な振る舞いに驚いている。
いつの間にか二人、ピッタリと寄り添う形になっていた。
そう、まるで恋人同士のように。
見上げると男の人の熱い視線が絡みついてきた。
熱い気持ちがこみ上げてくる。
(わ、わたし・・・何を・・・?)
どうしてしまったのかしら?
夫以外の男と抱き合っている。
会ったばかりの見知らぬ人なのに。
「あっあっ・・おお・・・・おあぁ・・・」
裕君の声が聞こえる。
「ああっ・・す、凄いぃ・・・」
夫の変わり果てた姿が、心を切なくする。
(でも・・・)
何か、違う。
さっきまでとは全く別な感情が湧き上がってくるのに気がついたの。
ギュッと、男の手を握り締めた。
直ぐに握り返してくる感触が、私の心を励ますように鼓舞してくれる。
「んふっ・・・んふっ・・んんっ・・・」
ケダモノのような痴態を繰り広げる女。
「ああっ・・ああっ・・あっあっあっ・・・」
官能に咽ぶ、夫の表情。
私、視線を反らす事なく見続けていたんです。
不思議な興奮を感じる。
私を抱く男の力が更に強くなる。
「す、すご・・い・・・」
顔を上げ私は呟いた。
「わ、私・・・
こんなの見るの・・初めて・・・」
男は顔をほころばせた。
そして優しい声で囁いた。
「興奮・・・する?」
「うん・・・」
男の問いに今度は素直に頷いた。
自分の気持ちの変化に戸惑ってはいたけど。
私、甘えるように身体を押し付けたんです・・・。
見知らぬ男に温もりを求めている。
でも、こうしないと気が狂っていたかもしれない。
目の前で繰り広げられる残酷で淫靡なショーが続く限り。
「ンフフフ・・・
もっと感じさせてあげる・・・」
挑発的な視線が飛んでくる。
「あっ・・・おおおっ・・ああぁ・・・」
官能に咽ぶ夫を完全に手玉に取っている。
悔しい。
強烈な嫉妬と共に怒りが膨らんでくる。
(だから・・・)
仕返し、したくなったんです。
視線を男の人の股間に向けた。
ヌラヌラと光っている。
カリ首に深い影を作り反り返っている。
裕君のものとは全然違う。
太くてそう、逞しく感じる。
ためらいながらも、ジッと見つめていたんです。
ゴクリと喉が鳴る。
おずおずと右手を伸ばした。
(あつ・・い・・・)
何という事かしら・・・。
私、ペニスを握っている。
(す、凄い・・・わた・・し・・・)
心臓が早鐘のように激しく鼓動を早めていく。
「おぉ・・・・」
耳元でうめく声が聞こえた。
「キャッ・・・」
反射的に放そうとした指を男の手が押える。
「そのまま・・・」
低い声が響く。
「どうか、そのまままで・・・」
私は顔も上げる事が出来なかった。
ジッとペニスを見つめていた。
(だ、だって・・・)
恥ずかしくってこの人の顔、見られなかったから。
「ありがとう・・・」
熱い息が囁く。
「嬉しい・・貴方は優しい人だ・・・」
短いフレーズを繋げていく。
「私の無理な願いを
聞いてくれたばかりではなく、
こんな・・・」
男は力を緩めると、私の指先をなぞるように優しく触る。
「素敵な愛撫をしてくれる・・・」
「あっ・・・」
私の指を誘導していく。
コックに巻きつくように。
(ああ・・すご・・い・・・)
浮き出た血管の感触が指先に伝わってくる。
「おおぉ・・・・」
声を絞り出している。
「ああ・・気持ちいい・・・」
(大げさな言い方・・・)
でも少しも変に感じない。
かえって私の恥ずかしい気持ちを、ぬぐい去ってくれるような気がする。
(だから・・・)
自分からも指を動かしてみたの。
いびつな感触が伝わってくる。
ビクンビクンと脈打っている。
私、ペニスを握っている。
会ったばかり人なのに。
裕君のでさえ、触った事が無かった。
(ううん・・・
こうしてジッと見るのだって初めて)
そう・・・
今日、私は初めてフェラチオをしたんです。
苦しかった。
喉元に食い込んだ痛さは忘れられない。
「ああっ・・あああっ・・・
も、もう・・だめ・・・だめだぁ」
今も裕君、絞り出すような声を漏らしている。
「んふっんふっ・・・
んっんっ・・んっんっ・・・」
女の顔が激しく上下に動いていく。
(ひ、ひどい・・・)
怒りと共に何かが破裂しそうな程、心の中に広がっていく。
コックを握る指に力を入れた。
「お・・おぉ・・・」
微かなうめき声と共に、ギュッと肩を抱いてくれた。
私、ゆっくりと指を動かしていったんです。
何かしてあげたい気分だったの。
(そう、この人だって・・・)
目の前でする妻の痴態に嫉妬していた筈だわ。
なのに、我慢して私を優しく抱いていてくれていた。
「おお・・・あ・・あぁ・・・」
掠れた声が耳元に響く。
まるで私をいたわり、励ますように聞こえる。
(嬉しい・・・)
私の愛撫に感じてくれている。
むず痒い気持ちが込み上げてくる。
男に対して不思議な愛情が、芽生え始めていた。
「ああああっー・・・」
大きな声に顔を上げた。
「ああっ・・ああっ・・・もうっ・・・
ああっー・・もうっ・・・」
夫が叫んでいる。
「いいのよ・・・いって・・出して・・」
女が嬉しそうに励ましている。
何かを待っている。
激しく指を絡ませながら。
「飲んであげる・・・ああぁ・・・
嬉しいっ・・一杯出してぇ・・・」
「ああああぁ・・あああああっー・・・
ああああっー・・・」
涙ぐんだ切ない声。
私、一度も聞いた事の無い。
ショックだった。
切ない気持ちが再びこみ上げてくる。
でも次の瞬間、私が受けた衝撃は更に大きくなったんです。
「い、いやぁ・・・」
私、悲痛な声漏らしていた。
夫のペニスから白い液が溢れ出したんです。
「ああっ・・・あっ・・んっ・・んんんっ」
両足を突っ張りながら痙攣している。
「うわぁ・・・凄い・・・」
女は嬉しそうな声を出しながら、尚も絞り出そうとコックをしごいている。
「いっぱい・・・あぁ・・ンフフフ・・・」
指にまで流れ出た大量のザーメンを舌ですくっている。
「美味しい・・ウフフフフ・・・」
私に視線を投げてくる。
涙が、溢れてきた。
女がその憎らしい表情を歪ませていく。
「ああ・・んんん・・・んぐぅ・・んんん」
貪るような音が曇った吐息と混じり合いながら聞こえてくる。
「ゆ、裕君・・・」
私の理性はズタズタに引き裂かれ、頭の中が真っ白になっていく。
(ひどい・・・ひどい、裕君・・・)
生まれて初めて、夫を憎んだ。
喧嘩はしたけどこんな気持ちになった事は今まで無かった。
裏切り。
(そう、これは裏切りよ・・・)
妻である私の目の前で射精するなんて。
これ程の屈辱があるだろうか。
「ああっ・・あっあっ・・・ひぃぃ・・・」
女の頭を掻きむしりながら余韻に浸っている。
涙が頬を伝う。
二つ、三つ。
それは泉に投げた石のように深い悲しみを心に広げていく。
寂しさが襲う。
気が狂いそう。
(い、いやぁ・・・)
声にならないものを叫んでいた。
(誰か、助けて・・・)
「可哀相に・・・」
何かが頬に触れた。
ゴツゴツした肌触りが包むようにして撫でる。
「ごめん・・ごめんね・・・」
子供をあやすような言葉と共に柔らかな感触が涙を優しく拭う。
「あぁ・・・あ・・・」
霞む視界に男がいた。
「許して、下さい・・・」
熱い息がかかる。
唇が、触れた。
私は抵抗もせず頬を預けていた。
暖かい。
「う・・・ぅ・・・」
小さなキスを繰り返してくる。
何度も。
まるで、雨のよう。
(ああ・・・)
温もりが、私を包む。
空っぽだった心が満たされていく。
男が、いる。
男が、いてくれる。
「ああ・・・はぁ・・あ・・・」
吐息が漏れる。
私の右手はペニスを握ったまま。
脈打つ鼓動を実感していた。
「好きだ・・・奥さん・・・」
熱い囁きが頬をくすぐる。
「んっ・・・」
唇が奪われる。
「んっ・・・ふぅ・・んっ・・・」
ヌメリとした感触が入ってきた。
私の中で捜している。
絡み付いてくる。
獲物を見つける蛇のように。
「んんっ・・んふっ・・・んん・・あふぅ」
(わ、わた・・し・・・?)
キスしている。
夫以外の男と。
うっすら目を開けると見知らぬ顔がいた。
裕君ではない中年の男。
(ああ・・・そ、そんな・・・)
その事実が心に火を付ける。
「んんふっ・・・んぐぅ・・・」
私の舌はまるで当然の如く相手の口に飲み込まれていった。
ケダモノの味がする。
一瞬、裕君の顔が見えた。
愕然とした表情はショックの大きさを物語っていた。
(裕・・君・・・)
夫が見ている。
(なのに、私・・わた、し・・・)
キス、している。
(ああ・・いやらしい・・・)
頭の隅で何かが弾けた。
いたぶられ抑圧された続けた私の理性が、崩壊した瞬間だった。
(わたし・・・わた・・し・・・)
自分から求めていったんです。
閉じたまぶたに焼き付いた、夫の残像に見せつけるように。
(欲しいっ・・・ほし・・い・・・)
「あふぅ・・・んんふぅ・・んんんっ・・」
熱い息を吐きながら舌を絡ませていく。
「おぉ・・・おく・・・さ・・・」
目を大きく開いた男は、戸惑いながらも逞しい腕で更に強く抱き寄せてくれた。
(嬉しいっ・・・)
「あふっ・・んんっ・・あむぅ・・」
激しい息遣いで唇を重ねる二人。
「え・・・えみぃ・・・」
夫の声が聞こえる。
(いい気味・・・いい気味よ・・・)
私は心の中で繰り返しながら禁断の果実を貪っていた。
右手に握った熱いコックは決して放しはしない。
(放すものか・・・)
指の中でビクンビクンと痙攣している。
熱い感触が愛おしい。
そう、私は決めたの・・・。
この男を愛そう。
夫を奪った憎い女から奪い返してやる。
夫に、女に対する復讐が今、始まったんです。
「あはぁ・・す、凄い・・・
嬉しいよ・・・奥さん・・・」
男は唇を放すと満足そうに囁いてくれた。
私達はキスの余韻の中で、頬と頬を触れあいながら互いの息の熱さを感じていた。
「あふぅ・・んっ・・ふぅ・・・ん・・・」
求め合うまま小さなキスを返していく。
「好きだ・・・・奥さん・・・」
男の囁きが嬉しい。
「嬉しい・・・私もぉ・・・」
自分の口から信じられない言葉が漏れる。
(ああ・・こ、こんな・・・)
私は感動していた。
今まで生きてきた、「全ての自分」から解き放たれたような気がしたんです。
喜びが体中に広がっていく。
裕君の視線を感じる。
膨れ上がる感情が更に私をかきたてていく。
「ねぇ・・・」
おずおずと私は言った。
握り締めた指先に力を込めて。
「えっ・・・?」
意外そうな表情が嬉しかった。
笑みを浮かべた私は、弾んだ声でもう一度囁いた。
「してあげる・・・
ううん、したいたの・・・
フェラチオ・・・」
その瞬間、指の中でペニスが大きく反り返るのを感じた。
私の声はため息のように、か細く消えていった。
「ああっー・・・あっあっあっ・・・」
夫の変わり果てた姿に、理性が崩壊していた。
体中の力が奪われ、虚ろな視線を投げている。
「凄いっ・・あぁ・・す、凄いぃ・・・」
仰け反り悲鳴を上げる度に、女の髪を掻きむしっている。
「ンフフフ・・・」
時折、振り向く女の視線が絡みついてくる。
ズキンと心に突き刺さる。
(ひ、ひどい・・・)
嫉妬と憎しみが身体の奥底から沸き上がってくる。
(な、何なの・・この女・・・?)
私の感情を逆撫でするように挑発してくる。
耳元までカーッと熱くなる。
(ゆ、許せない・・・)
人の夫を奪い、その妻の前で平然といやらしい行為をするなんて。
悔しさに唇を噛んだ。
(えっ・・・?)
肩を抱く感触に顔を上げた。
男が、いた。
私の顔を見つめている。
「興奮するでしょう・・・?」
「な、何を言うの・・・?」
そのセリフにムッときた私は、男を睨みつけた。
「申し訳ない・・・」
男は一瞬、たじろいだ表情をしたが、直ぐに柔和な笑みを浮かべた。
「でも・・・」
言葉を繋いでいく。
「そう、これが・・・スワッピング。
夫婦交換・・なんです・・・」
低く優しい声。
(そう・・だ・・・)
あの女は、この人の妻。
余りのショックで肝心な事を忘れていた。
今、自分の肩を抱いているのは、あの憎むべき女の夫なんです。
(こ、この人達・・・)
一体、私達をどうするつもりなのかしら。
「今、あなたの旦那様と私のワイフが・・・」
諭すような口調で男は話していく。
「フェラチオ・・・
オーラルセックスをしている」
猥雑な単語が真剣な表情から漏れてくる。
当然というような落ち着いた態度。
私、視線を反らす事が出来なかった。
低い声が心に染み込んでくる。
まるで、催眠術のように。
(この人・・・)
ふと思った。
「当然、あなたにとって許されざる事です。
でも・・・」
(裸なのに・・・)
「嫉妬と共に妙に、
熱い気持ちが沸き上がってきませんか?」
不思議と、いやらしい感じがしない。
「私達夫婦は、これで倦怠期を切り抜けたのです」
(そう・・まるで・・・)
「極たまに、こうして刺激を求める私達は、
何時も新鮮な気持ちで
互いを愛し合っていけるのです」
大学の授業を聞いているみたい。
私を説得しているつもりなのかしら。
「勿論、奥様には強要しませんので御安心下さい」
(そ、そんな事・・・)
私は噴出しそうになった。
裸の男に言われても、信じられる筈はない。
(でも・・・)
「只、こうして側に
いさせて頂けませんでしょうか」
異常すぎるシチュエーションとバカ丁寧な口調に、頭が混乱していく。
何だか逆らえない気分になってしまう。
「とても図々しいお願いとは
思うのですが・・・」
(わ、わたし・・・)
どうしてしまったの?
自分の態度に戸惑ってしまう。
真剣ですまなそうな表情が、とても紳士的に思えて。
信じられない事に私、否定もしないで男の顔を見ていたんです。
「有り難う・・・」
男は嬉しそうに顔を綻ばせた。
身構えていた緊張感が完全にはぐらかされて、力が入らない。
肩を引き寄せられた。
「キャッ・・・」
小さく声を出したが、私は抵抗もせず身体を預けた。
「有り難う・・・」
男はもう一度呟くと、私を包むように更に深く抱き寄せる。
そのままジッと動こうとはしない。
「んふっ・・・あはぁ・・んん・・・」
女の荒い息遣いが聞こえる。
「ああっー・・・おぁっ・・い、いぃ・・・」
私の夫を犯している。
男の腕の中で残酷なショーを見ている。
(暖かい・・・)
ふと、そう思った。
愛する夫に裏切られ、悲しさと絶望が私の心を凍えさせていた。
男の優しさが癒してくれる。
そんな気がしたんです。
(わたし・・・)
無意識にパートナーを求めていたのでしょうか。
奪われた夫の変わりに。
それとも男の巧みな話し方に操られていたのかしら?
自分から、左手を男の腰に廻したんです。
直ぐに男の手が重なった。
ハッとしたけど私、握り返していた。
すると男も更に強い力で肩を抱いてくれる。
まるで、言葉の無い会話を二人で交わしているよう。
(ど、どうしよう・・・)
心臓がドキドキする。
自分の大胆な振る舞いに驚いている。
いつの間にか二人、ピッタリと寄り添う形になっていた。
そう、まるで恋人同士のように。
見上げると男の人の熱い視線が絡みついてきた。
熱い気持ちがこみ上げてくる。
(わ、わたし・・・何を・・・?)
どうしてしまったのかしら?
夫以外の男と抱き合っている。
会ったばかりの見知らぬ人なのに。
「あっあっ・・おお・・・・おあぁ・・・」
裕君の声が聞こえる。
「ああっ・・す、凄いぃ・・・」
夫の変わり果てた姿が、心を切なくする。
(でも・・・)
何か、違う。
さっきまでとは全く別な感情が湧き上がってくるのに気がついたの。
ギュッと、男の手を握り締めた。
直ぐに握り返してくる感触が、私の心を励ますように鼓舞してくれる。
「んふっ・・・んふっ・・んんっ・・・」
ケダモノのような痴態を繰り広げる女。
「ああっ・・ああっ・・あっあっあっ・・・」
官能に咽ぶ、夫の表情。
私、視線を反らす事なく見続けていたんです。
不思議な興奮を感じる。
私を抱く男の力が更に強くなる。
「す、すご・・い・・・」
顔を上げ私は呟いた。
「わ、私・・・
こんなの見るの・・初めて・・・」
男は顔をほころばせた。
そして優しい声で囁いた。
「興奮・・・する?」
「うん・・・」
男の問いに今度は素直に頷いた。
自分の気持ちの変化に戸惑ってはいたけど。
私、甘えるように身体を押し付けたんです・・・。
見知らぬ男に温もりを求めている。
でも、こうしないと気が狂っていたかもしれない。
目の前で繰り広げられる残酷で淫靡なショーが続く限り。
「ンフフフ・・・
もっと感じさせてあげる・・・」
挑発的な視線が飛んでくる。
「あっ・・・おおおっ・・ああぁ・・・」
官能に咽ぶ夫を完全に手玉に取っている。
悔しい。
強烈な嫉妬と共に怒りが膨らんでくる。
(だから・・・)
仕返し、したくなったんです。
視線を男の人の股間に向けた。
ヌラヌラと光っている。
カリ首に深い影を作り反り返っている。
裕君のものとは全然違う。
太くてそう、逞しく感じる。
ためらいながらも、ジッと見つめていたんです。
ゴクリと喉が鳴る。
おずおずと右手を伸ばした。
(あつ・・い・・・)
何という事かしら・・・。
私、ペニスを握っている。
(す、凄い・・・わた・・し・・・)
心臓が早鐘のように激しく鼓動を早めていく。
「おぉ・・・・」
耳元でうめく声が聞こえた。
「キャッ・・・」
反射的に放そうとした指を男の手が押える。
「そのまま・・・」
低い声が響く。
「どうか、そのまままで・・・」
私は顔も上げる事が出来なかった。
ジッとペニスを見つめていた。
(だ、だって・・・)
恥ずかしくってこの人の顔、見られなかったから。
「ありがとう・・・」
熱い息が囁く。
「嬉しい・・貴方は優しい人だ・・・」
短いフレーズを繋げていく。
「私の無理な願いを
聞いてくれたばかりではなく、
こんな・・・」
男は力を緩めると、私の指先をなぞるように優しく触る。
「素敵な愛撫をしてくれる・・・」
「あっ・・・」
私の指を誘導していく。
コックに巻きつくように。
(ああ・・すご・・い・・・)
浮き出た血管の感触が指先に伝わってくる。
「おおぉ・・・・」
声を絞り出している。
「ああ・・気持ちいい・・・」
(大げさな言い方・・・)
でも少しも変に感じない。
かえって私の恥ずかしい気持ちを、ぬぐい去ってくれるような気がする。
(だから・・・)
自分からも指を動かしてみたの。
いびつな感触が伝わってくる。
ビクンビクンと脈打っている。
私、ペニスを握っている。
会ったばかり人なのに。
裕君のでさえ、触った事が無かった。
(ううん・・・
こうしてジッと見るのだって初めて)
そう・・・
今日、私は初めてフェラチオをしたんです。
苦しかった。
喉元に食い込んだ痛さは忘れられない。
「ああっ・・あああっ・・・
も、もう・・だめ・・・だめだぁ」
今も裕君、絞り出すような声を漏らしている。
「んふっんふっ・・・
んっんっ・・んっんっ・・・」
女の顔が激しく上下に動いていく。
(ひ、ひどい・・・)
怒りと共に何かが破裂しそうな程、心の中に広がっていく。
コックを握る指に力を入れた。
「お・・おぉ・・・」
微かなうめき声と共に、ギュッと肩を抱いてくれた。
私、ゆっくりと指を動かしていったんです。
何かしてあげたい気分だったの。
(そう、この人だって・・・)
目の前でする妻の痴態に嫉妬していた筈だわ。
なのに、我慢して私を優しく抱いていてくれていた。
「おお・・・あ・・あぁ・・・」
掠れた声が耳元に響く。
まるで私をいたわり、励ますように聞こえる。
(嬉しい・・・)
私の愛撫に感じてくれている。
むず痒い気持ちが込み上げてくる。
男に対して不思議な愛情が、芽生え始めていた。
「ああああっー・・・」
大きな声に顔を上げた。
「ああっ・・ああっ・・・もうっ・・・
ああっー・・もうっ・・・」
夫が叫んでいる。
「いいのよ・・・いって・・出して・・」
女が嬉しそうに励ましている。
何かを待っている。
激しく指を絡ませながら。
「飲んであげる・・・ああぁ・・・
嬉しいっ・・一杯出してぇ・・・」
「ああああぁ・・あああああっー・・・
ああああっー・・・」
涙ぐんだ切ない声。
私、一度も聞いた事の無い。
ショックだった。
切ない気持ちが再びこみ上げてくる。
でも次の瞬間、私が受けた衝撃は更に大きくなったんです。
「い、いやぁ・・・」
私、悲痛な声漏らしていた。
夫のペニスから白い液が溢れ出したんです。
「ああっ・・・あっ・・んっ・・んんんっ」
両足を突っ張りながら痙攣している。
「うわぁ・・・凄い・・・」
女は嬉しそうな声を出しながら、尚も絞り出そうとコックをしごいている。
「いっぱい・・・あぁ・・ンフフフ・・・」
指にまで流れ出た大量のザーメンを舌ですくっている。
「美味しい・・ウフフフフ・・・」
私に視線を投げてくる。
涙が、溢れてきた。
女がその憎らしい表情を歪ませていく。
「ああ・・んんん・・・んぐぅ・・んんん」
貪るような音が曇った吐息と混じり合いながら聞こえてくる。
「ゆ、裕君・・・」
私の理性はズタズタに引き裂かれ、頭の中が真っ白になっていく。
(ひどい・・・ひどい、裕君・・・)
生まれて初めて、夫を憎んだ。
喧嘩はしたけどこんな気持ちになった事は今まで無かった。
裏切り。
(そう、これは裏切りよ・・・)
妻である私の目の前で射精するなんて。
これ程の屈辱があるだろうか。
「ああっ・・あっあっ・・・ひぃぃ・・・」
女の頭を掻きむしりながら余韻に浸っている。
涙が頬を伝う。
二つ、三つ。
それは泉に投げた石のように深い悲しみを心に広げていく。
寂しさが襲う。
気が狂いそう。
(い、いやぁ・・・)
声にならないものを叫んでいた。
(誰か、助けて・・・)
「可哀相に・・・」
何かが頬に触れた。
ゴツゴツした肌触りが包むようにして撫でる。
「ごめん・・ごめんね・・・」
子供をあやすような言葉と共に柔らかな感触が涙を優しく拭う。
「あぁ・・・あ・・・」
霞む視界に男がいた。
「許して、下さい・・・」
熱い息がかかる。
唇が、触れた。
私は抵抗もせず頬を預けていた。
暖かい。
「う・・・ぅ・・・」
小さなキスを繰り返してくる。
何度も。
まるで、雨のよう。
(ああ・・・)
温もりが、私を包む。
空っぽだった心が満たされていく。
男が、いる。
男が、いてくれる。
「ああ・・・はぁ・・あ・・・」
吐息が漏れる。
私の右手はペニスを握ったまま。
脈打つ鼓動を実感していた。
「好きだ・・・奥さん・・・」
熱い囁きが頬をくすぐる。
「んっ・・・」
唇が奪われる。
「んっ・・・ふぅ・・んっ・・・」
ヌメリとした感触が入ってきた。
私の中で捜している。
絡み付いてくる。
獲物を見つける蛇のように。
「んんっ・・んふっ・・・んん・・あふぅ」
(わ、わた・・し・・・?)
キスしている。
夫以外の男と。
うっすら目を開けると見知らぬ顔がいた。
裕君ではない中年の男。
(ああ・・・そ、そんな・・・)
その事実が心に火を付ける。
「んんふっ・・・んぐぅ・・・」
私の舌はまるで当然の如く相手の口に飲み込まれていった。
ケダモノの味がする。
一瞬、裕君の顔が見えた。
愕然とした表情はショックの大きさを物語っていた。
(裕・・君・・・)
夫が見ている。
(なのに、私・・わた、し・・・)
キス、している。
(ああ・・いやらしい・・・)
頭の隅で何かが弾けた。
いたぶられ抑圧された続けた私の理性が、崩壊した瞬間だった。
(わたし・・・わた・・し・・・)
自分から求めていったんです。
閉じたまぶたに焼き付いた、夫の残像に見せつけるように。
(欲しいっ・・・ほし・・い・・・)
「あふぅ・・・んんふぅ・・んんんっ・・」
熱い息を吐きながら舌を絡ませていく。
「おぉ・・・おく・・・さ・・・」
目を大きく開いた男は、戸惑いながらも逞しい腕で更に強く抱き寄せてくれた。
(嬉しいっ・・・)
「あふっ・・んんっ・・あむぅ・・」
激しい息遣いで唇を重ねる二人。
「え・・・えみぃ・・・」
夫の声が聞こえる。
(いい気味・・・いい気味よ・・・)
私は心の中で繰り返しながら禁断の果実を貪っていた。
右手に握った熱いコックは決して放しはしない。
(放すものか・・・)
指の中でビクンビクンと痙攣している。
熱い感触が愛おしい。
そう、私は決めたの・・・。
この男を愛そう。
夫を奪った憎い女から奪い返してやる。
夫に、女に対する復讐が今、始まったんです。
「あはぁ・・す、凄い・・・
嬉しいよ・・・奥さん・・・」
男は唇を放すと満足そうに囁いてくれた。
私達はキスの余韻の中で、頬と頬を触れあいながら互いの息の熱さを感じていた。
「あふぅ・・んっ・・ふぅ・・・ん・・・」
求め合うまま小さなキスを返していく。
「好きだ・・・・奥さん・・・」
男の囁きが嬉しい。
「嬉しい・・・私もぉ・・・」
自分の口から信じられない言葉が漏れる。
(ああ・・こ、こんな・・・)
私は感動していた。
今まで生きてきた、「全ての自分」から解き放たれたような気がしたんです。
喜びが体中に広がっていく。
裕君の視線を感じる。
膨れ上がる感情が更に私をかきたてていく。
「ねぇ・・・」
おずおずと私は言った。
握り締めた指先に力を込めて。
「えっ・・・?」
意外そうな表情が嬉しかった。
笑みを浮かべた私は、弾んだ声でもう一度囁いた。
「してあげる・・・
ううん、したいたの・・・
フェラチオ・・・」
その瞬間、指の中でペニスが大きく反り返るのを感じた。
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