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第三部 守(まもる)と正(ただし)
第一章 二人のアイドル
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【守と正16歳】
【2016年 9月7日】
二日後。
高校の体育館で。
※※※※※※※※※※※※
【キャッー・・・】
黄色い歓声が沸き上がっている。
「高杉さぁん・・・」
「小宮くぅん・・・」
校内球技大会のバスケットボールの会場で、守と正がクラス代表として試合をしていた。
現役バスケット部の二人は一年生でレギュラーの実力だった。
だから校内の球技大会で二人が揃うこのクラスは断トツに強かった。
最後は優勝するのだが、女子生徒達は二人の運動能力以上にその容姿に熱狂していた。
ガードの小宮守。
背は高くは無いが幼さが残る少女のような可愛い表情は、女生徒達の胸をキュンとさせるには十分すぎるほどであった。
フォワードの高杉正。
身長も高くスリムなルックスは、クールな眼差しと合間って年上の二三年生の女子達に人気があった。
二人ともに中学生の頃からスキルは高くてドリブル、シュート等、他の選手たちを圧倒していた。
どちらかがボールを持つたびに黄色い声援が飛び交う。
あまりの人気ぶりにクラスメートの男子生徒達も面白くない気分だったが、二人は男達にも人気があった。
守はマザコン風な甘えん坊で。
正反対なクールな正をからかいながらエッチな話をサラッとギャグにするセンスに、思春期の少年達の共感を得ていたのだ。
そんな二人だったが彼女はいない。
ませた同級生は何組かカップルを作っていて学校の行帰りを恋人同士のように一緒にいるというのに、校内有数のアイドルである二人がフリーであることをクラスメイトの男子達は不思議に思っていた。
「おぉい・・小宮ぁ・・・」
守が正と連れ立って下校する帰り道でクラスメートの一人が声をかけて走り寄った。
「何だい、山田・・・?」
振り向いた表情に彼はハッとした。
男同士でも胸が熱くなってしまう。
何という、美少年ぶりだろうか。
「今日、お前のうちに行ってもいいか?」
喉を微かに上下させて答えた。
「いいけどぉ・・・」
守はいぶかし気に山田を見た。
夏休みが終わってから何度も家を訪れようとする男に少し戸惑っていたからだ。
守は教師からも時々、熱いまなざしを受けているのを感じていた。
女性だけでなく男性からも。
だから、まさか山田が自分によからぬ想いを寄せているのではないかと疑ってしまうのだ。
守の表情を読み取った彼は慌てて言葉を繋いだ。
「じ、実は・・・」
隣で聞いている正をチラリと見ている。
「お前の母ちゃんのファンなんだよ・・・」
顔を真っ赤にしている。
「ほら、夏休みの宿題をしに行った時・・・」
三人は歩きながら山田の話が続いていく。
「マジで綺麗でさぁ・・惚れちゃったんだ」
最後に本音を漏らすように言葉を結んだ。
少しの沈黙が続いた。
守と正は目を合わすと同時に噴出した。
【ぷっ・・・】
その似通った仕草が兄弟のようだと山田は思った。
「ま、まじぃ・・・?」
正が山田の肩を抱くようにして叫んだ。
山田はその強い力に変な気分になった。
いつもクールな高杉の大袈裟な素振りは、イケメンなだけに男でも興奮してしまいそうだった。
「えっー・・そんな下心があったんだぁ?」
守も愛する人が汚されるようで良い気持ちではない。
「い、いやぁ・・そ、そのぉ・・・」
山田は恥ずかしそうに俯いた。
自分の恋心を告白したことを後悔している。
二人と違って平凡すぎる容姿では、クラスの笑い種になるしかないではないか。
「まぁ・・いっかぁ・・・」
だけど守は嬉しそうに声をかけた。
「確かに僕のママは世界一、美人なんだから」
サラッと言いのけるドヤ顔に、正は驚きの表情で守を見た。
同じバスケット部で付き合いは長い方だったけど、自分の母親を世界一だなんて言う奴とは思っていなかったのだ。
クラスメート達からは幼い容姿からマザコンだと陰口をたたかれることはあったが、まさか本当に母親好きだとは意外であった。
何故なら、自分がそうだったから。
母の秋穂こそ世界で一番美しい女性だと、正も信じ込んでいるのだ。
急に親近感が沸いた正は守に向かって言った。
「僕も・・お邪魔していいかな・・・?」
「えっ・・・?」
意外な申し出に守は驚きの声を出した。
いつも家に誘っても断ってきたのに。
それには理由があったのだが。
正は秋穂との二人きりの同居が始まって以来、一刻も早く帰宅したかったからだ。
本当はクラブに入部しないで母との時間を少しでも長くしたかったのだけど。
だから友達の家に遊びに行くよりも帰宅を優先した。
何気ない会話だけでも秋穂との時間は安らかで楽しいものだったから。
「いいよ・・・」
守は口元を綻ばせて答えた。
嬉しい気持ちになるのが不思議だった。
ふと、自分と同じ匂いを嗅ぎ取ったのかもしれない。
携帯電話を取り出すと家に電話した。
「うん・・ママ・・・友達が二人・・・」
途切れ途切れの言葉の間に母親への愛情を感じた。
会話を交わす楽しさが伝わってくる。
正も秋穂に向かってメールを送信した。
友達の家に寄って遅くなると。
二人の表情が嬉しそうで。
山田は少し、妬ましく思えてしまうのだった。
【2016年 9月7日】
二日後。
高校の体育館で。
※※※※※※※※※※※※
【キャッー・・・】
黄色い歓声が沸き上がっている。
「高杉さぁん・・・」
「小宮くぅん・・・」
校内球技大会のバスケットボールの会場で、守と正がクラス代表として試合をしていた。
現役バスケット部の二人は一年生でレギュラーの実力だった。
だから校内の球技大会で二人が揃うこのクラスは断トツに強かった。
最後は優勝するのだが、女子生徒達は二人の運動能力以上にその容姿に熱狂していた。
ガードの小宮守。
背は高くは無いが幼さが残る少女のような可愛い表情は、女生徒達の胸をキュンとさせるには十分すぎるほどであった。
フォワードの高杉正。
身長も高くスリムなルックスは、クールな眼差しと合間って年上の二三年生の女子達に人気があった。
二人ともに中学生の頃からスキルは高くてドリブル、シュート等、他の選手たちを圧倒していた。
どちらかがボールを持つたびに黄色い声援が飛び交う。
あまりの人気ぶりにクラスメートの男子生徒達も面白くない気分だったが、二人は男達にも人気があった。
守はマザコン風な甘えん坊で。
正反対なクールな正をからかいながらエッチな話をサラッとギャグにするセンスに、思春期の少年達の共感を得ていたのだ。
そんな二人だったが彼女はいない。
ませた同級生は何組かカップルを作っていて学校の行帰りを恋人同士のように一緒にいるというのに、校内有数のアイドルである二人がフリーであることをクラスメイトの男子達は不思議に思っていた。
「おぉい・・小宮ぁ・・・」
守が正と連れ立って下校する帰り道でクラスメートの一人が声をかけて走り寄った。
「何だい、山田・・・?」
振り向いた表情に彼はハッとした。
男同士でも胸が熱くなってしまう。
何という、美少年ぶりだろうか。
「今日、お前のうちに行ってもいいか?」
喉を微かに上下させて答えた。
「いいけどぉ・・・」
守はいぶかし気に山田を見た。
夏休みが終わってから何度も家を訪れようとする男に少し戸惑っていたからだ。
守は教師からも時々、熱いまなざしを受けているのを感じていた。
女性だけでなく男性からも。
だから、まさか山田が自分によからぬ想いを寄せているのではないかと疑ってしまうのだ。
守の表情を読み取った彼は慌てて言葉を繋いだ。
「じ、実は・・・」
隣で聞いている正をチラリと見ている。
「お前の母ちゃんのファンなんだよ・・・」
顔を真っ赤にしている。
「ほら、夏休みの宿題をしに行った時・・・」
三人は歩きながら山田の話が続いていく。
「マジで綺麗でさぁ・・惚れちゃったんだ」
最後に本音を漏らすように言葉を結んだ。
少しの沈黙が続いた。
守と正は目を合わすと同時に噴出した。
【ぷっ・・・】
その似通った仕草が兄弟のようだと山田は思った。
「ま、まじぃ・・・?」
正が山田の肩を抱くようにして叫んだ。
山田はその強い力に変な気分になった。
いつもクールな高杉の大袈裟な素振りは、イケメンなだけに男でも興奮してしまいそうだった。
「えっー・・そんな下心があったんだぁ?」
守も愛する人が汚されるようで良い気持ちではない。
「い、いやぁ・・そ、そのぉ・・・」
山田は恥ずかしそうに俯いた。
自分の恋心を告白したことを後悔している。
二人と違って平凡すぎる容姿では、クラスの笑い種になるしかないではないか。
「まぁ・・いっかぁ・・・」
だけど守は嬉しそうに声をかけた。
「確かに僕のママは世界一、美人なんだから」
サラッと言いのけるドヤ顔に、正は驚きの表情で守を見た。
同じバスケット部で付き合いは長い方だったけど、自分の母親を世界一だなんて言う奴とは思っていなかったのだ。
クラスメート達からは幼い容姿からマザコンだと陰口をたたかれることはあったが、まさか本当に母親好きだとは意外であった。
何故なら、自分がそうだったから。
母の秋穂こそ世界で一番美しい女性だと、正も信じ込んでいるのだ。
急に親近感が沸いた正は守に向かって言った。
「僕も・・お邪魔していいかな・・・?」
「えっ・・・?」
意外な申し出に守は驚きの声を出した。
いつも家に誘っても断ってきたのに。
それには理由があったのだが。
正は秋穂との二人きりの同居が始まって以来、一刻も早く帰宅したかったからだ。
本当はクラブに入部しないで母との時間を少しでも長くしたかったのだけど。
だから友達の家に遊びに行くよりも帰宅を優先した。
何気ない会話だけでも秋穂との時間は安らかで楽しいものだったから。
「いいよ・・・」
守は口元を綻ばせて答えた。
嬉しい気持ちになるのが不思議だった。
ふと、自分と同じ匂いを嗅ぎ取ったのかもしれない。
携帯電話を取り出すと家に電話した。
「うん・・ママ・・・友達が二人・・・」
途切れ途切れの言葉の間に母親への愛情を感じた。
会話を交わす楽しさが伝わってくる。
正も秋穂に向かってメールを送信した。
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山田は少し、妬ましく思えてしまうのだった。
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