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2話 弱者
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第1層。
鬱蒼と木々が生い茂り、温暖な気候。出てくるモンスターも初級レベル。
_______と、説明を聞いてそれを信じた私が馬鹿だった。
運動神経にそこそこの自信があり、さらにハッキリ言えば弱いモンスター相手なんだから当たるだろうと振り回した剣は先すらも当たらず、無様に空を切った。
「うわっ............う、うわあああ............!」
しかも外見がかなり気持ち悪い。
不規則に伸びてくるツタは驚くほど速く、何本もあるので本体なんて見る余裕がなかったが、視界の端に映るそれはどう見ても食虫植物________
「落ち着いて!ツタだけじゃなく本体も見ろ!」
やや遠くから、ピンと張った声が聞こえる。
パーティーを組んでくれた黒い人だ。
あちらは私を見ながらモンスターを倒している。随分余裕そうだ。
「む、無理です!た、たすっ......ひいぃ!」
視線をさっきの人に移したことで足元が疎かになり、何かにつまづいて転んでしまった。
やばい、これ以上近づかれたら攻撃されてしまう。
慌てて立ち上がろうとするが、足がガクガクと震えてうまく力が入らない。
なんとか這って大きめの木の下まで逃げてきたが、時間稼ぎにもならないだろう。
背を木の幹につけ、食虫植物と対峙すると、食虫植物が高い声で鳴いた。
ダメだ、死ぬ............!
ツタが伸び、体に大きな衝撃がくることを予感して目を強く瞑ったが、その衝撃はいくら待っても私には訪れなかった。
そっと目を開けると、目の前には黒い背中。
......のうしろに、絶命したモンスターが倒れていた。
何秒か固まった後、ようやく詰めていた息を吐き出した私に、少年が手を差し出してくれた。
「ダンジョン初めてだったんだな......ごめん、1人にして」
優しい声音にほっとしつつ手を取る。
耳元でなっていた心臓の音もだいぶ落ち着いてくると、今度は恥ずかしさが襲ってきた。
「ありがとうございます.........すみません」
いいよと言って私を立ち上がらせたその人は一旦辺りを見渡し、もうモンスターがいないのを確認してから私に目を向けた。
「今日はもう帰らない?疲れてるだろうし。あと、1人ではダンジョンに潜らないことをおすすめするよ。今日みたいに他の人に声かけて」
子供を諭すような口調でそう言われ、情けなくなる。
しかも、遠回りにお前とはもうパーティーは組まないと言われた気がする。
お礼を言い、第1層から帰還。
ホームでアイテム分けをしている途中、黒い人がポツリと言った。
「そういえば名前言ってなかったな。俺、フユキっていうんだ」
「フユキ......さん?私はハルです、今更になっちゃいましたけど」
そう言って笑うと、フユキさんはつられたように頬を緩ませた。
今だと思い、重ねて言う。
「あの、私に剣を教えていただけませんか......?」
意を決してそう伝えると、フユキさんは目を見開いた。う~んと唸ってから、申し訳なさそうな顔で首を少し傾ける。
「あ~ごめん、俺、教えるの下手くそで......か、代わりと言っちゃなんだけど、いい人を紹介するよ」
「いい人.........?」
「そう、セイっていう女の人。その人は見た目はマジで俺より無愛想で冷たい......じゃなくてクールなんだけど、面倒見いいし。何より強い」
その人のことを話すフユキさんの目はどこか楽しげで、まるで仲のいい親友を思い出しているかのような光が灯っていた。
大切な人なんだろうな、どんな人なんだろうと想像したが、全く想像がつかなかった。
「セイさん、ですか?その人ってどこにいるのかわかりますか?」
「う~ん、セイのことだしまだダンジョンだろうな。じゃあ平日の明明後日の2時にここで待ち合わせでもいい?俺は訳あって行けないんだけど、セイに伝えとくよ」
「わかりました、ありがとうございます!」
親切な黒い人、いや、フユキさんにお礼を言い、私はホームを出た。
***
......それにしてもびっくりした。
楽勝だと思っていた1層で木の根に躓き、土の上を這い、謎のツタに殺されかけた。しかもパーティーメンバーにも迷惑をかけてしまった。
それもこれも私が弱いせいだ。なんの努力もせずにダンジョンに潜ったから......。
はぁ~あとため息をつき、すっかり涼しくなった風で潤みかけた目を乾かす。
片手剣がダメなら、魔法でも練習してみようか。そうだ、セイさんに会う前に攻撃強化魔法を覚えていこう。
道のわきにあった小石をなんとなく蹴ると、その黒っぽい石は草むらに飛び込んで行った。
鬱蒼と木々が生い茂り、温暖な気候。出てくるモンスターも初級レベル。
_______と、説明を聞いてそれを信じた私が馬鹿だった。
運動神経にそこそこの自信があり、さらにハッキリ言えば弱いモンスター相手なんだから当たるだろうと振り回した剣は先すらも当たらず、無様に空を切った。
「うわっ............う、うわあああ............!」
しかも外見がかなり気持ち悪い。
不規則に伸びてくるツタは驚くほど速く、何本もあるので本体なんて見る余裕がなかったが、視界の端に映るそれはどう見ても食虫植物________
「落ち着いて!ツタだけじゃなく本体も見ろ!」
やや遠くから、ピンと張った声が聞こえる。
パーティーを組んでくれた黒い人だ。
あちらは私を見ながらモンスターを倒している。随分余裕そうだ。
「む、無理です!た、たすっ......ひいぃ!」
視線をさっきの人に移したことで足元が疎かになり、何かにつまづいて転んでしまった。
やばい、これ以上近づかれたら攻撃されてしまう。
慌てて立ち上がろうとするが、足がガクガクと震えてうまく力が入らない。
なんとか這って大きめの木の下まで逃げてきたが、時間稼ぎにもならないだろう。
背を木の幹につけ、食虫植物と対峙すると、食虫植物が高い声で鳴いた。
ダメだ、死ぬ............!
ツタが伸び、体に大きな衝撃がくることを予感して目を強く瞑ったが、その衝撃はいくら待っても私には訪れなかった。
そっと目を開けると、目の前には黒い背中。
......のうしろに、絶命したモンスターが倒れていた。
何秒か固まった後、ようやく詰めていた息を吐き出した私に、少年が手を差し出してくれた。
「ダンジョン初めてだったんだな......ごめん、1人にして」
優しい声音にほっとしつつ手を取る。
耳元でなっていた心臓の音もだいぶ落ち着いてくると、今度は恥ずかしさが襲ってきた。
「ありがとうございます.........すみません」
いいよと言って私を立ち上がらせたその人は一旦辺りを見渡し、もうモンスターがいないのを確認してから私に目を向けた。
「今日はもう帰らない?疲れてるだろうし。あと、1人ではダンジョンに潜らないことをおすすめするよ。今日みたいに他の人に声かけて」
子供を諭すような口調でそう言われ、情けなくなる。
しかも、遠回りにお前とはもうパーティーは組まないと言われた気がする。
お礼を言い、第1層から帰還。
ホームでアイテム分けをしている途中、黒い人がポツリと言った。
「そういえば名前言ってなかったな。俺、フユキっていうんだ」
「フユキ......さん?私はハルです、今更になっちゃいましたけど」
そう言って笑うと、フユキさんはつられたように頬を緩ませた。
今だと思い、重ねて言う。
「あの、私に剣を教えていただけませんか......?」
意を決してそう伝えると、フユキさんは目を見開いた。う~んと唸ってから、申し訳なさそうな顔で首を少し傾ける。
「あ~ごめん、俺、教えるの下手くそで......か、代わりと言っちゃなんだけど、いい人を紹介するよ」
「いい人.........?」
「そう、セイっていう女の人。その人は見た目はマジで俺より無愛想で冷たい......じゃなくてクールなんだけど、面倒見いいし。何より強い」
その人のことを話すフユキさんの目はどこか楽しげで、まるで仲のいい親友を思い出しているかのような光が灯っていた。
大切な人なんだろうな、どんな人なんだろうと想像したが、全く想像がつかなかった。
「セイさん、ですか?その人ってどこにいるのかわかりますか?」
「う~ん、セイのことだしまだダンジョンだろうな。じゃあ平日の明明後日の2時にここで待ち合わせでもいい?俺は訳あって行けないんだけど、セイに伝えとくよ」
「わかりました、ありがとうございます!」
親切な黒い人、いや、フユキさんにお礼を言い、私はホームを出た。
***
......それにしてもびっくりした。
楽勝だと思っていた1層で木の根に躓き、土の上を這い、謎のツタに殺されかけた。しかもパーティーメンバーにも迷惑をかけてしまった。
それもこれも私が弱いせいだ。なんの努力もせずにダンジョンに潜ったから......。
はぁ~あとため息をつき、すっかり涼しくなった風で潤みかけた目を乾かす。
片手剣がダメなら、魔法でも練習してみようか。そうだ、セイさんに会う前に攻撃強化魔法を覚えていこう。
道のわきにあった小石をなんとなく蹴ると、その黒っぽい石は草むらに飛び込んで行った。
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