1発の弾丸

プロローグ

2＊＊＊年。
日本は、世界的経済危機により、完全失業率は過去最高を記録し、失業者が街に溢れた。

貧困は、治安を脅かす。

手っ取り早く金が欲しいと、窃盗や強盗が頻繁に起こり、未来に希望を見出せない者による犯罪は、都市部から徐々に増加の一途を辿った。

体力で勝る者が、体力で劣る者を暴力で支配する。

そんな事が、ごく日常的に当たり前のように、起きる様になったのだ。

警察組織法が改正され、一般市民で構成された警察団が発足。

治安維持の警察の到着が遅れるのだ。
警察に通報しても、到着に相当な時間を要する程に、そこらで事件が起きているのだ。

体力で劣る者が、体力に勝る者に対抗する事が可能のは何か？

武器である。

銃刀法の規制緩和、武装権が国会の議題に上がる様になったのは早い段階だった。

日本の自警、治安維持の背中を押したのは、ある団体であった。

1871年、アメリカの南北戦争の北軍の帰還兵らによって組織された全米ライフル協会（NRA）。

NRAのスローガンは「人を殺すのは、人であって銃ではない」。

個人の銃所有の権利を擁護する団体で、アメリカに大きな影響力を持つ。

毎回、大統領選の予備選挙候補者は、NRAと密接な関係を築くことを繰り返し強調し、見事に合衆国大統領に当選するのだ。

世界の武器輸出額、1位のアメリカ。
ビジネスチャンスを捨てる程、甘くない。

そしてアメリカの言いなりである日本は、ある法案を可決し施行する。

反対派の違憲の糾弾を避ける為、限定的であるが革新的な法案。
世論も後押ししたのは「1発の弾丸」。

選挙権の取得と共に、犯罪抑止と自警の為、種類は限定されるが「銃」と「1発の弾丸」の「所持と使用」を認められたのだ。

それから、数年の月日が流れた…。