1発の弾丸

Case・1 タケダ・コータ

もう何年、引きこもっているだろうか。
中1からだから、6年間だ。

オンラインゲームをプレイして、寝て、
母さんが用意した飯食って、寝て、
電子掲示板に書き込みして、寝て、
母さんが用意した飯食って、寝て、
2階の窓からションベンして、寝て、
家族が寝静まったらクソして、寝て、
母さんが用意した飯食って、寝て。

大体のローテションを繰り返せば、1日が過ぎていた。

充実していたが飽きて、惰性で生き続けていた。

ある日、オンラインゲームのチャットに、気になる話題が上がっていた。

＞武装権で拳銃GET！オマエらGETした？

聞きなれないワードに興味を持ち、ネットで検索すると銃が持てるらしい。

住民票と身分証を持って、役所で申請。
これで、許可証を発行される。

銃砲店で身分証と許可証を見せれば2万～6万で、好きな拳銃が買えるそうだ。

弾は1発オマケで、ついてくる。

身を守る権利の1発。

正当防衛の証明が出来たら再度、1発の弾丸の購入が可能。

いつの間にか、食い入る様にモニターの情報を、コータは見ていた。

欲しい...。

これで引きこもりになった原因、キタムラ・ハルキに復讐が出来る...。

執拗に呼び出され、殴る蹴るの暴行。
親の金を、盗んでまで支払された上納金。
スマホで屈辱的な撮影もされた。

思い出すだけで、ハラワタが煮えくりかる。

かりん糖を食べろと、犬のクソを食べさせられた。

フランス料理を御馳走してやると、カタツムリを生きたまま口に入れられた。

ハルキの暇潰しのオモチャだった。
抵抗すれば吐くまで、腹を殴られた。

怖くてコータは、何も出来なかった。

それから6年間、ずっと引きこもりだった。

イジメの経験をフラッシュバックさせたら、突然の吐き気にゴミ箱に顔を突っ込んだ。

ゲェゲェと、胃の中の物を吐き出す。
ゴミ箱を抱えながら、笑えてきた。

あぁ！こんな楽しい事が、起こるなんて！
生きてて良かった！

何年も話をしてないコータのかすれた笑い声が、部屋に響いた。