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中学生編
受験生vs思い出
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こいつはヨダンってやつだ。よくわかんねーけど、オマケの話みたいなことを書く時につけるんだよな。でもさ、たまにテレビとかで見る裸で座りながら考えごとしてる人の像もヨダンって言うんじゃなかったか? なんであの像がオマケの話と繋がるんだ?
まあいいや。
ある日のこと。毎週恒例にされちまった勉強会とは無関係に大塚家へ遊びに来た。別にお菓子とジュース目当てじゃないぞ、読みかけのマンガがあったからだ。
で、あたしがマンガ読んでる間、歩美はずっとZINEで誰かとメッセージをやりとりしてた。時々くすくす笑ってる。気が散るなこんにゃろう。ずいぶん楽しそうなので、もしや彼氏かと思ってからかってみた。
「おい、さっきから誰と話してんだよ? ニヤニヤしやがって」
「うそ、そんな顔してた? ほら、あの人だよ。こないだ盆踊りの日に会った通さん」
「えっ!?」
予想外の名前にドーヨーするあたし。あ、あの人と連絡とり合ってんのかよこのヤロー。ごーてつおじさんが初恋の人なら通さんは今好きな人。こないだ会った時にかっこいいと思って、あたしもZINEで友だちになっておいたんだ。
ただ、いざ何かメッセージをと思っても何て書いたらいいのかわかんなくて、こちとらずっとやきもきしてるってのに。チクショー、また後輩に先を越された。
しかしあたしはクールな女。そう、こいつより一歳上なんだ。そう自分に言い聞かせて余裕たっぷりで会話を続ける。
「お、おお~、あのあんちゃんか~。で、なんだって? おめーら、いったいどんなこと話してんだよ?」
「どんなって、好きなマンガとか最近何したかとか、そのくらいかな。なんかこの人って、うちの父さんと趣味や言動が似てて他人って気がしないんだ」
「ふーん、そのくらいならまあ、別に大したこたねーな」
なんだ、もう付き合い始めたのかと思ってビビッちまって損したぜ。単なる世間話かよ。そのくれーならオメー、アタシだってちょっと勇気出せれば簡単にできるっての。多分。
「あ、でも今度一緒に遊びに行こうって誘われてて」
「デートじゃねえかちくしょう!」
あたしは今度こそぬげうさぎのごとく、その場から逃げ出した。
「小梅ちゃん!?」
何故かいきなり帰っちゃった。私、なんかまずいこと言ったかな? 確認したいこともあったのに。
うーん、とりあえず待たせてる通さんに返信してから追いかけよう。少なくとも、さおちゃんは来るだろうし。
「友達も連れて行っていいですか……と」
最近できたボルダリングで遊べる施設が今回の目的地。せっかくだから、さおちゃんや小梅ちゃんも誘うことにした。
「楽しみだなあ」
あ、もう返信がきた。OKだって。いい人だなやっぱり。
「でも、なんで最後に泣いてる絵文字?」
打ち間違いかな? たまにやるよね、スマイルとか貼ろうとして別のをタップしちゃうやつ。
「──友達もって……いや、まあ、これでいいんだ。まだあっちは中二だし……」
気のせいかな? どこからかため息が聞こえた気がした。
「チクショー、チクショー、歩美のやろー」
「お? おかえり」
プリプリしながら我が家へ戻ると、店の前で親父が掃き掃除してた。
「ただいま!」
「なんだ、ずいぶん機嫌が悪ぃな。歩美ちゃんと遊んで来たんじゃねえのか?」
「そうだよ!」
「ケンカでもしたのか、まったくしかたねーなー」
そう言うと、何故か親父は一旦店の中に入り、またすぐに出て来た。
「ほら、これでも舐めて機嫌直せ。な?」
飴玉って。
「バカにしてんの!?」
「とか言いつつ受け取ってんじゃねえか」
「糖分が欲しいの! この後、勉強するんだから!」
本当だよ。こんなイライラしてる時には逆にゲームとかしたくなくなるんだ。他にやることがないからしかたなく勉強に手をつける。見てろよこんにゃろう!
「そいや、最近歩美ちゃん達に教えてもらって頑張ってるらしいな。やりゃあできるじゃねえか」
「ふん! 当たり前でしょ、もう三年生なんだから!」
「おう、えらいえらい」
頭を撫でられる。
「だから子供扱い──」
やめろって、そう言いかけて、あたしは思い出した。あの時も、この場所に立っていたから。
『小梅! ただいまー! いい子にしてたかあ?』
『うむ、とても良い子だったぞ。溌剌としていて実に子供らしい』
『おう、そうかそうか。流石はオレの娘。えらいえらい』
『だっこ!』
『うんうん、おいでおいで』
『と~ちゃん、おひげ、おひげじょりじょり』
『よーし、ほらじょりじょり』
『ちくちくする!』
『ちくちくするのに嬉しそうだな』
『あの子、アタシよりアイツの方に懐いてるのよ。アタシだってめいっぱい可愛がってんのに。この間だってさ、絵本を読み聞かせてやってる時なんて言ったと思う? 王子様とお姫様の結婚式のシーンになったら、あたしも大きくなったらとーちゃんと──』
「!」
「おっ? どうした?」
頭を撫でながら首を傾げる親父。咄嗟に、その手を払いのけて玄関に向かって駆け出しながら叫ぶ。
「こ、子供の頃のことだし! あんなんノーカンだノーカン! いちじのきのまよいってやつなんだから!」
大昔 だから絶対 勘違い
「ア、アタシの初恋はごーてつおじさんだもん!」
「そうなの!?」
──ショックを受けたダメ親父は、その夜もまたごーてつおじさんを強引に連れ出して飲みに行って、夜遅く酔っ払って帰って来て、おかーさんに怒られてアタシに寝かしつけられた。
ううっ、こんな、こんなダメ親父が……絶対、絶対に記憶違いだ! そんなわけないんだあ!
まあいいや。
ある日のこと。毎週恒例にされちまった勉強会とは無関係に大塚家へ遊びに来た。別にお菓子とジュース目当てじゃないぞ、読みかけのマンガがあったからだ。
で、あたしがマンガ読んでる間、歩美はずっとZINEで誰かとメッセージをやりとりしてた。時々くすくす笑ってる。気が散るなこんにゃろう。ずいぶん楽しそうなので、もしや彼氏かと思ってからかってみた。
「おい、さっきから誰と話してんだよ? ニヤニヤしやがって」
「うそ、そんな顔してた? ほら、あの人だよ。こないだ盆踊りの日に会った通さん」
「えっ!?」
予想外の名前にドーヨーするあたし。あ、あの人と連絡とり合ってんのかよこのヤロー。ごーてつおじさんが初恋の人なら通さんは今好きな人。こないだ会った時にかっこいいと思って、あたしもZINEで友だちになっておいたんだ。
ただ、いざ何かメッセージをと思っても何て書いたらいいのかわかんなくて、こちとらずっとやきもきしてるってのに。チクショー、また後輩に先を越された。
しかしあたしはクールな女。そう、こいつより一歳上なんだ。そう自分に言い聞かせて余裕たっぷりで会話を続ける。
「お、おお~、あのあんちゃんか~。で、なんだって? おめーら、いったいどんなこと話してんだよ?」
「どんなって、好きなマンガとか最近何したかとか、そのくらいかな。なんかこの人って、うちの父さんと趣味や言動が似てて他人って気がしないんだ」
「ふーん、そのくらいならまあ、別に大したこたねーな」
なんだ、もう付き合い始めたのかと思ってビビッちまって損したぜ。単なる世間話かよ。そのくれーならオメー、アタシだってちょっと勇気出せれば簡単にできるっての。多分。
「あ、でも今度一緒に遊びに行こうって誘われてて」
「デートじゃねえかちくしょう!」
あたしは今度こそぬげうさぎのごとく、その場から逃げ出した。
「小梅ちゃん!?」
何故かいきなり帰っちゃった。私、なんかまずいこと言ったかな? 確認したいこともあったのに。
うーん、とりあえず待たせてる通さんに返信してから追いかけよう。少なくとも、さおちゃんは来るだろうし。
「友達も連れて行っていいですか……と」
最近できたボルダリングで遊べる施設が今回の目的地。せっかくだから、さおちゃんや小梅ちゃんも誘うことにした。
「楽しみだなあ」
あ、もう返信がきた。OKだって。いい人だなやっぱり。
「でも、なんで最後に泣いてる絵文字?」
打ち間違いかな? たまにやるよね、スマイルとか貼ろうとして別のをタップしちゃうやつ。
「──友達もって……いや、まあ、これでいいんだ。まだあっちは中二だし……」
気のせいかな? どこからかため息が聞こえた気がした。
「チクショー、チクショー、歩美のやろー」
「お? おかえり」
プリプリしながら我が家へ戻ると、店の前で親父が掃き掃除してた。
「ただいま!」
「なんだ、ずいぶん機嫌が悪ぃな。歩美ちゃんと遊んで来たんじゃねえのか?」
「そうだよ!」
「ケンカでもしたのか、まったくしかたねーなー」
そう言うと、何故か親父は一旦店の中に入り、またすぐに出て来た。
「ほら、これでも舐めて機嫌直せ。な?」
飴玉って。
「バカにしてんの!?」
「とか言いつつ受け取ってんじゃねえか」
「糖分が欲しいの! この後、勉強するんだから!」
本当だよ。こんなイライラしてる時には逆にゲームとかしたくなくなるんだ。他にやることがないからしかたなく勉強に手をつける。見てろよこんにゃろう!
「そいや、最近歩美ちゃん達に教えてもらって頑張ってるらしいな。やりゃあできるじゃねえか」
「ふん! 当たり前でしょ、もう三年生なんだから!」
「おう、えらいえらい」
頭を撫でられる。
「だから子供扱い──」
やめろって、そう言いかけて、あたしは思い出した。あの時も、この場所に立っていたから。
『小梅! ただいまー! いい子にしてたかあ?』
『うむ、とても良い子だったぞ。溌剌としていて実に子供らしい』
『おう、そうかそうか。流石はオレの娘。えらいえらい』
『だっこ!』
『うんうん、おいでおいで』
『と~ちゃん、おひげ、おひげじょりじょり』
『よーし、ほらじょりじょり』
『ちくちくする!』
『ちくちくするのに嬉しそうだな』
『あの子、アタシよりアイツの方に懐いてるのよ。アタシだってめいっぱい可愛がってんのに。この間だってさ、絵本を読み聞かせてやってる時なんて言ったと思う? 王子様とお姫様の結婚式のシーンになったら、あたしも大きくなったらとーちゃんと──』
「!」
「おっ? どうした?」
頭を撫でながら首を傾げる親父。咄嗟に、その手を払いのけて玄関に向かって駆け出しながら叫ぶ。
「こ、子供の頃のことだし! あんなんノーカンだノーカン! いちじのきのまよいってやつなんだから!」
大昔 だから絶対 勘違い
「ア、アタシの初恋はごーてつおじさんだもん!」
「そうなの!?」
──ショックを受けたダメ親父は、その夜もまたごーてつおじさんを強引に連れ出して飲みに行って、夜遅く酔っ払って帰って来て、おかーさんに怒られてアタシに寝かしつけられた。
ううっ、こんな、こんなダメ親父が……絶対、絶対に記憶違いだ! そんなわけないんだあ!
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