歩美ちゃんは勝ちたい

秋谷イル

文字の大きさ
72 / 106
高校生編

大塚家vs遊園地(1)

しおりを挟む
 ゴールデンウィーク! いつものように夏ノ日家や時雨さんと合流した私達は、遊園地までやって来た!
「すまんな木村くん。連休最終日だというのに」
 正道と柔を両手でだっこしつつ謝る父さん。そう、今日は木村も一緒。
「いえ! 一日多く歩美と一緒にいられると思えば、むしろ得してます!」
「ふっ、そうか。では改めて、今日はよろしく」
「はい!」
 私は友美と手を繋いで周囲を見回す。
「遊園地とか久しぶりだな~」
 よく考えたら、父さんとママが結婚してから初じゃない? あの時にはもう私も高学年だったからな。
「パンフレット貰ってきたわよ。でも、このままじゃ人数多くない?」
「たしかにな」
 美樹ねえの意見に同意する父さん。えーと、うちが五人に夏ノ日家が四人。そこに時雨さんと木村を加えて十一人か。実際かなりの大所帯だね。
「二組か三組に分けて、時間と場所を決めて合流しましょうか?」
「なら俺と麻由美が正道と柔の面倒を見よう」
「そうですね」
 あっさり一組目が決まった。
 ただ、残りのメンバーはそうもいかないかも。
「私と友くんで友美と友樹……と言いたいところだけど」
「友美はもう大きいからね。誰と一緒に行くかは自分で決めていいよ」
 美樹ねえと友にいに促され、友美はしばらくう~んと唸った後、手を繋いだままの私を見上げる。
「じゃあ、あゆ……歩美姉ちゃんと行く」
「私でいいの?」
「たまにしか会えないし」
 あはは、呼び方もそうだけど、変なところで気を遣うようになっちゃったなあ。寂しく思うと同時に成長を感じて嬉しくもある。もう十二歳だもん。大きくなったよ。
「歩美はそれでいいのかしら?」
 意味深な目線を私でなく木村に向ける美樹ねえ。苦笑しつつ答える。
「一昨日も昨日もデートしたから」
「あら、お熱いこと」
「たはは……」
 頭を掻いて照れ笑いを浮かべる木村。それからすぐに友樹の前にしゃがみ込む。
「友樹君、お姉ちゃんと一緒がいいだろ? オレも歩美と行きたいんだ。君達のグループに入ってもいいかな?」
「……いいよ」
 去年小学校に入り、今は二年生の友樹。でも、まだちょっと人見知りするらしく友美の後ろに隠れながら頷いた。
 この調子で一日中一緒に行動することになったら友樹も木村も可哀想だな。私は助け舟を出す。
「友樹、そのお兄ちゃんより豪鉄おじさんの方が怖いでしょ」
「……そうかも」
「おい」
「まあまあ」
 憤慨する父さんを宥めるママ。友樹はてくてく歩いて行って自分から木村と手を繋ぐ。
「お、おお……よろしくね」
「よろしく」
 あの二人は、これで良しと。
「じゃあ私は友くんと回るわ。時雨さんはどうする?」
「バランスを考えると美樹さん達の組でしょうが、ここは歩美達について行きます。流石に保護者が一人もいないというのは不安で」
 相変わらず心配性。
「じゃあ四:二:六で解散ね。たしかにバランス悪いけど、小さい子達もいるし妥当な線でしょ」
「午後からはまた別の組み分けにする手もある」
「それもそうね。中央の“アイムくん像”前で十二時集合。いい?」
「うむ」
「了解です!」



 私、大塚 麻由美は夫と子供達と一緒にベンチに座り、とりあえずはどこへ行こうかと話し合い始めました。
「小さい子がいると乗れるアトラクションは限られますね」
 美樹ちゃんが持ってきてくれたパンフレットで確認。身長制限のあるアトラクションにはマークがついていて便利。
 夫はやんちゃ坊主の長男・正道に下唇を引っ張られつつ立ち上がりました。
「このような場所だ、見て回るだけでも楽しめるだろう。せっかくだし歩いて探そうではないか」
 たしかに、ただ座っているより、そっちの方が良さそう。
「それじゃあ行ってみようか柔」
「うん」
「歩くぞ正道。手を離すなよ、迷子になってしまうからな」
「うん!」
 などと言いつつ早速走り出そうとする正道。けれど夫が引き留めます。
「やれやれ、ちゃんと人の話を聞かんか」
「正道はお願いしますね。私じゃとても止められませんし」
「任せよ」
 頼もしい。流石はセンパイッス。



「メリーゴーラウンドに鬼が乗ってるらしいぞ」
「えっ? オレは任侠映画の撮影をしてるって聞いた」
「子供を抱いたプロレスラーがいたらしい」
 なんて声があちこちから聞こえてきた。誰のことだかすぐわかる。
「はは、お義兄さんは相変わらず目立つね」
「あの図体と顔だから仕方ないわ」
「まあ、目立つと言えば美樹ちゃんもなんだけど」

「魔女だ……」
「ママー! まじょさんがいる!」
「あんなキャスト、スイープランドにいたっけ……?」

「失礼ねえ。私はただの考古学者だってのに」
「その服装でその職業を言い当てられる人がいたらびっくりだよ」
 なんて会話をしていたら子供達が集まってきた。純粋な目で見上げられるとちょっぴりくすぐったい。
「まじょさん、いっしょにしゃしんとっていいですか?」
「ぼくも!」
「すげえ美人。あの、僕たちもいいですか~?」
「いや、あの、彼女はキャストではなくて」
 あら、何してるの友くん? 無粋ね。
 私は髪をかきあげ、子供達に向かって指をくいっと動かす。
「来なさい。かわいい子達は大歓迎よ。もちろんご家族もね。ただしナンパ目的のボウヤ達は回れ右。私、こう見えて人妻なの」



「な、なんだあの人だかり」
「美人の魔女が撮影会を開いてるって」
「きっと新しいキャストよ」
 いや、違う。
「美樹ねえだ」
「ママだと思う」
「ママ」
 流石は夏ノ日キッズ。友美も友樹も私と同じ考えに到った。
「え? それって助けた方が良くないか?」
「必要ありません。あの二人ならゾンビに囲まれても生き残ります。それより、こちらは子供達とはぐれないよう気を付けましょう」
「う、うっす……」
 時雨さんに注意を促された木村は、手を繋いでいた友樹をひょいと持ち上げた。そしてそのまま肩車する。
「これならはぐれる心配無いな」
「たかーい」
 目を輝かせる友樹。この子、意外と高い場所とかは平気。
 その友樹のパーカーの中から、もぞもぞ動いてもう一つ頭が出てきた。
「にゃーん」
 あはは、肩車された友樹の肩に、さらにこしあんが乗ってる。
「友美もやる?」
 私だって、ちょっと頑張ればできなくはないよ?
 でも友美は頭を振った。
「いい。もう、そんな歳じゃない」
「そ、そっか……」
 うう、急成長。でも、まだ手は繋いでくれるんだよね。
「さて、トイレも済ませたし、最初はどこに行く」
「う~ん、身長制限のある乗り物は友樹が引っかかりそうなの多いな」
「その場合は私が友樹くんを見ているから、三人で乗るといいよ」
 そか、そういう手もあるね。とはいえ二人が仲間外れになってばかりもなんだな。
「なら、とりあえずジェットコースターに乗って、それから近くにあるニャーンの翼ってのに移動しよう。こっちは身長制限無いみたい」
「よし、とりあえずそれで。でも途中で興味の湧くアトラクションがあったら友美ちゃんも友樹君も言ってくれよ。そっちを優先するから」
「わかった」
 というわけで移動を再開する私達。
 ちなみに例の人だかりはさらに大きくなっている。帰る頃にはここは美樹ねえランドになっていそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...