ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

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11:恐ろしすぎる、あれやこれ

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 部屋までブレイン殿下に送ってほしいと、パレルモ様はナチュラルにおねだりする。
 おいおい、なんてことを言うんだよ!?
 玉の輿をねらって、ブレイン殿下との縁をつなぎたい貴族令嬢の必死のお願いならばともかく、王子をつかまえて『お兄ちゃん』あつかいとか、不敬の極みだろ!

 なんて恐ろしいことをしてくれてんだよ、もう!!
 ブレイン殿下といったら、原作ゲームのなかでは原作パレルモとならぶ腹黒キャラで有名なんですよ?!
 しかも、悪辣ではあるけれど底の浅めな原作パレルモとはちがって、かなりアコギというか、笑顔の裏でなにをかんがえてるかわからないブレイン殿下は、厄介この上ない存在なのに!

 万が一その機嫌をそこねてみろ、相手は王族だけに、どんな仕返しが待っているか知れたもんじゃないんだからな?!
 そんな恐怖にふるえる俺の目の前で、パレルモ様はきゅるんとした無垢そのものな顔で相手を見上げたままでいる。

 ───まるでそうしていれば、相手が折れてくれるのを知っているみたいに。
 それを受け、にっこりと笑みを深くしたブレイン殿下が口を開いた。

「そうですか、かわいい子から言われる『お兄ちゃん』という響きは、なかなかグッとクるものがありますね。それにカッコいいと言われるのも、なかなかどうして気持ちのいいものです……キミはなんてすなおなイイコなんでしょう!私は好きですよ、そういうすなおな子も」
 聞くかぎりでは、ブレイン殿下の声色は喜色に富んでいた。

 パレルモ様の不敬は、ゆるされたのか……?
 そういえばあのゲーム本編でも、主人公のヒロインは彼が何者かわかってなくて、天真爛漫すぎる態度をとって周囲をハラハラさせつつも、いわゆる『おもしれーヤツ』認定されて気に入られてたっけ。

 そう思うと、これ、まちがいなくブレイン殿下の好感度上げにきてるようにも思えてくるな。
 なにしろこの世界を侵食した改変者は、原作ゲーム『星華せいかとき』の二次創作者だ。

 本来ならありえないはずの、世界の侵食をゆるしてしまったほどの熱意を持つという相手なら、当然のようにゲーム本編だってやり込んでいることだろう。
 それなら、各キャラの攻略法くらい完ぺきにおぼえているんだろうなぁ……。

 あきらかなキャラ改変も、今のところパレルモ様の近辺でしか確認できてないことをかんがみるに、改変者は原作パレルモが大好きな腐女子だったってことなんだろうか?
 そんなことをかんがえていたせいで、俺はとっさに反応できなかった。

「フフ、私もかわいいかわいい天使ちゃんをお部屋のベッドまで送っていってさしあげたいところですが、少々責任を取らねばならない案件がありましてね」
 と、そこでいったんセリフを切ったブレイン殿下は、じっと俺のことを見る。

 気のせいだろうか、その薔薇色の瞳が、不穏なかがやきを持ったように見える。
 本能的な恐怖に襲われ、ブルリとからだがふるえた。
 たとえるならば、まるで獲物として猛禽類に見定められた小動物くらいのそれが身内からせりあがってくる。

「え……?いや、あの、こちらのことならおかまいなく!わざわざ殿下の手をわずらわせるまでもございませんので!」
 あわてて辞退を申し出た。
 ていうか、俺を理由に断ろうとしないでほしい。

 パレルモ様に嫌われるのもよろしくないし、変にほかの攻略キャラと絡むことで、目立って侵食者に目をつけられるきっかけも作りたくない。
 なにより口調ひとつとっても、相手に気をつかえないくらいに最悪な体調のときに、これ以上ロイヤルな方からかまわれたくなかった。

「いまだに服も着られずに立ちあがれもしない子が、なに言ってるんですか?」
「お見苦しい姿をさらしてしまって申し訳ないですが……しばらく休めば大丈夫だと思います」
 そりゃ、ひょっとしたら消灯時間はすぎちゃうかもしれないけど。
 最悪、消灯後に這ってでも部屋にもどればいい。

「ふぅん?ねぇちょっとそこのキミ、この子をこのままの姿で放置しておいたら、無事でいられると思う?」
 おい、なんかまわりを巻き込みはじめたぞ?!
 そばにいたほかの風紀委員の生徒をつかまえてたずねるブレイン殿下に、嫌な予感がつのっていく。

「……恐れながら申し上げます。まずは服を着せることが先決ですが……そうしたところで、この部屋の別名を思うに、どうかんがえても危険かと」
「やっぱりそう思う?」
「えぇ、ゴブリンの巣の前に若い女性を置き去りにするようなものです。ましてその、そちらの少年には『魅了香チャーム・パフューム』がかなり効いているようですし……」

 なにそれ、たとえが怖いよ!!
 つーか、この部屋の別名とか、なんだよそれも気になるだろ!
 よくわかんないけど、とりあえず泣きそうだ。

「キミねぇ……この部屋が通称『ヤリ部屋』って裏で呼ばれてるのは知ってるかい?」
「なにそれ、知らな……っ」
 なんだよ、そのあからさまにヤバそうな名前は?!

「まぁ、そんなところにだよ?媚薬盛られた子が、裸で据え膳よろしく転がってたらどうなるか、わからないわけじゃないでしょ?」
 ブレイン殿下は、あきれたように言う。

「……………………」
 うん、理解した。
 とにかくそいつは、やべぇことにしかならないだろうってことは。
 急に黙り込んだ俺に、ふっと息を吐く。

「とりあえずキミを囮にしたのは私の責任でもあるからね。最後まで責任は持とう」
 言葉だけなら、なんて頼もしいセリフだろうか。
 でもなんでだろうな、いい笑顔で言われても、どことなく背すじが冷える気がするのは。

「解毒剤などをもらえたりは……?」
 もしくは、その状態異常無効の効果が付与されているという制服を貸してくれたりはしないだろうか、なんて願う。

「そんなもの、あるわけないだろ?うちの学校では、薬品類はすべて保健室あずかりだけど、この時間に『』に会いに行く勇気はあるかい?」
 そう言われて、とっさに脳裏に浮かぶキャラクターの姿に鳥肌が立つ。

「………えぇと、ワガママを言ってしまい、大変申し訳ありませんでした……」
 そうあやまるしか、今の俺に残された道はなかった。
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