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36:かけちがいになる思いの衝突
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おかしいだろ、セラーノが浮気をしたと疑うなら、なんでそれを俺のからだに聞くとかいうトンデモ展開になるんだよ?!
つーか、ここは校舎のなかなんだぞ!
だれかがとおりかかる可能性だってあるのに、なんでそんなところで俺が脱がされなきゃなんないんだよ!?
そう思うのに、瞬く間にいくつものボタンをはずされたシャツの襟もとに手をかけられ、大きくはだけさせられる。
あいかわらずの早業すぎて、止めるヒマもなかった。
そうすれば必然的に、昨晩目の前のブレイン殿下につけられたばかりの、あざやかな紅いキスマークがいくつも目に飛び込んでくる。
───あぁ、クソ、居たたまれない!
こんな痕、毎回目にしてたら、そのたびに昨夜のことを思い出しちゃうだろ?!
「ンッ!やめ……っ!」
しかもたった一晩で、その指がいかにイジワルに動くのかをおぼえさせられてしまったからだは、ほんのひとなでされるだけで、勝手にビクついてしまう。
ベストは着たままだから限度はあるにせよ、それにしたってそこから手を差し込まれてまさぐられるとか、マジで勘弁してほしい。
こんなとこ、だれかに見られたら、本当にどうするつもりなんだってば!?
「見える範囲では、新たなキスマークはつけられてはないみたいですね……でも背中のほうはどうか、まだわからないですし……」
ブツブツとつぶやきながらこちらを見下ろしてくるブレイン殿下の目は据わっていて、少し怖かった。
「だから、どうしてそうなるんですか!いくら脱がせたところで、俺にはあんたがつけた痕しかねーし!」
状況的にはかなりよろしくない展開に、つい口調も荒くなる。
そのいきおいのままに、相手の腕をつかんで抵抗しようとした。
本当に、制服だって救護のために必要だからゆるめただけで。
そりゃセラーノルートで見られるスチルみたいな姿はいくつも目にしたけれど、肝心なことはなにひとつ聞いてないし、一般的に浮気と言われるような行為だって相手にしたつもりはない。
「わかりませんよ、浮気をバレにくくするために痕はつけなかっただけかもしれないですし?」
「浮気もなにも、セラーノ先生には本当になにもしてないんだってば!!」
おたがいに、腕をつかんでの言い合いになる。
「そう……『セラーノ』先生ね……いつの間にファーストネームで呼ぶようになったんです?」
さらにブレイン殿下の声色がワントーン下がり、機嫌をそこねていることが伝わってくる。
なんだよ、それ!
俺がセラーノの名前を呼ぶのが、そんなに気にくわないってのかよ!
なんなんだよ、その嫉妬深さは!?
「っ、申し訳ございませんでした。俺ごときがお名前を呼ぶなんて、なれなれしかったですよね!」
ついキャラクターとしての呼び名になれていたけれど、よくかんがえたら本来の身分は隣国の王子、たしかに俺のようなモブが気軽に名前で呼んでいい相手じゃなかった。
そもそもがブレイン殿下とセラーノ王子は幼なじみで、比較的年も近いからって元の身分を捨てて医者になったとき、そのツテでこの学校の校医になったくらいだもんな。
ブレイン殿下にとっての特別な存在であっても、けっしておかしくないわけだ。
「───でも長い付き合いなら、相手のことくらい信じてやれよ!」
「キミとはまだ、短い付き合いでしょう?」
ヤケを起こして言えば、即座に言いかえされる。
そのひとことが鋭角に心に突き刺さり、やわらかな部分をえぐってくる。
まだ俺のことなんて知らないから、なにを言ったところで信用すらできないってことかよ?!
「たしかに……まだあなたとは知り合って、ほんの1日かそこらですもんね。俺なんて信用できるわけがないですか?まして、あの悪名高きダグラス家の息子なら、相手がだれだろうと手を出すような節操なしだって言いたいんでしょう?」
そう言いながらも、あたまに血がのぼっていたはずなのに、急激に心は冷えていく。
正直、胸が痛くて泣きそうだった。
やっぱりこの人にとっての俺は、みじんも信用ならない存在でしかないんだって。
そしてそれを自分で言って、その言葉に傷ついてるなら、まったくもって世話ないよ。
でもこの世界の身分差は厳然たるもので、家格が下がるごとに品性も下がるとさえ思われているフシがある。
それならば、王族から見てたかが伯爵家の息子なら、軽んじられてもおかしくはない。
だって、最初もそうだっただろ?
ズキン……ッ!
そう思った瞬間、これまで以上に心臓がぎゅっとにぎりつぶされたみたいな痛みを訴えてきた。
ヒュッと音を立てて息がつまり、手足がやたらと重たく感じられる。
あぁ、クソ、鼻の奥がツンとしてきた。
こんなことくらいで、泣きたくなんてないのに……。
抵抗する気も消え失せて、相手の腕をつかむ手から力が抜けていく。
「そんなに心配なら、今すぐ本人にたしかめに行けばいいじゃないですか……」
「えぇ、だから今、こうしてたしかめようとしてるんでしょう?!」
俺なんかにかまうより、とっとと保健室まで駆けつければいいだろ!?
そう思ってのセリフに、しかし、かえされたのは不可解なセリフで。
───ん?
ちょっと待て、なんかおかしい。
気のせいだろうか、おたがいにすれちがっている気がする。
「だから!キミがなにもされてないか、確認しようとしてるのに!」
「え………??」
我ながら、今のブレイン殿下を見上げる顔は、ものすごいマヌケなものになってしまっていると思う。
「ほら、そんなふうにキミが無防備すぎるから!それこそ、『あの』ダグラス家の子なのに、すなおすぎるんですよ!心配にもなるでしょうが!?」
「…………………」
どうしよう、あたまの理解が追いついてくれない。
なんかそれだと、さっきからブレイン殿下が心配してるのはセラーノのほうじゃなくて、俺のほうだったって聞こえるんだけど。
えっ?
えぇっ!?
その言葉の意味が、しっかりと脳みそに染み渡った瞬間、首から上は一瞬にしてボンと音を立てるいきおいで真っ赤に染まる。
もはや、はずかしさのあまりに顔をあげていられなかった。
つーか、ここは校舎のなかなんだぞ!
だれかがとおりかかる可能性だってあるのに、なんでそんなところで俺が脱がされなきゃなんないんだよ!?
そう思うのに、瞬く間にいくつものボタンをはずされたシャツの襟もとに手をかけられ、大きくはだけさせられる。
あいかわらずの早業すぎて、止めるヒマもなかった。
そうすれば必然的に、昨晩目の前のブレイン殿下につけられたばかりの、あざやかな紅いキスマークがいくつも目に飛び込んでくる。
───あぁ、クソ、居たたまれない!
こんな痕、毎回目にしてたら、そのたびに昨夜のことを思い出しちゃうだろ?!
「ンッ!やめ……っ!」
しかもたった一晩で、その指がいかにイジワルに動くのかをおぼえさせられてしまったからだは、ほんのひとなでされるだけで、勝手にビクついてしまう。
ベストは着たままだから限度はあるにせよ、それにしたってそこから手を差し込まれてまさぐられるとか、マジで勘弁してほしい。
こんなとこ、だれかに見られたら、本当にどうするつもりなんだってば!?
「見える範囲では、新たなキスマークはつけられてはないみたいですね……でも背中のほうはどうか、まだわからないですし……」
ブツブツとつぶやきながらこちらを見下ろしてくるブレイン殿下の目は据わっていて、少し怖かった。
「だから、どうしてそうなるんですか!いくら脱がせたところで、俺にはあんたがつけた痕しかねーし!」
状況的にはかなりよろしくない展開に、つい口調も荒くなる。
そのいきおいのままに、相手の腕をつかんで抵抗しようとした。
本当に、制服だって救護のために必要だからゆるめただけで。
そりゃセラーノルートで見られるスチルみたいな姿はいくつも目にしたけれど、肝心なことはなにひとつ聞いてないし、一般的に浮気と言われるような行為だって相手にしたつもりはない。
「わかりませんよ、浮気をバレにくくするために痕はつけなかっただけかもしれないですし?」
「浮気もなにも、セラーノ先生には本当になにもしてないんだってば!!」
おたがいに、腕をつかんでの言い合いになる。
「そう……『セラーノ』先生ね……いつの間にファーストネームで呼ぶようになったんです?」
さらにブレイン殿下の声色がワントーン下がり、機嫌をそこねていることが伝わってくる。
なんだよ、それ!
俺がセラーノの名前を呼ぶのが、そんなに気にくわないってのかよ!
なんなんだよ、その嫉妬深さは!?
「っ、申し訳ございませんでした。俺ごときがお名前を呼ぶなんて、なれなれしかったですよね!」
ついキャラクターとしての呼び名になれていたけれど、よくかんがえたら本来の身分は隣国の王子、たしかに俺のようなモブが気軽に名前で呼んでいい相手じゃなかった。
そもそもがブレイン殿下とセラーノ王子は幼なじみで、比較的年も近いからって元の身分を捨てて医者になったとき、そのツテでこの学校の校医になったくらいだもんな。
ブレイン殿下にとっての特別な存在であっても、けっしておかしくないわけだ。
「───でも長い付き合いなら、相手のことくらい信じてやれよ!」
「キミとはまだ、短い付き合いでしょう?」
ヤケを起こして言えば、即座に言いかえされる。
そのひとことが鋭角に心に突き刺さり、やわらかな部分をえぐってくる。
まだ俺のことなんて知らないから、なにを言ったところで信用すらできないってことかよ?!
「たしかに……まだあなたとは知り合って、ほんの1日かそこらですもんね。俺なんて信用できるわけがないですか?まして、あの悪名高きダグラス家の息子なら、相手がだれだろうと手を出すような節操なしだって言いたいんでしょう?」
そう言いながらも、あたまに血がのぼっていたはずなのに、急激に心は冷えていく。
正直、胸が痛くて泣きそうだった。
やっぱりこの人にとっての俺は、みじんも信用ならない存在でしかないんだって。
そしてそれを自分で言って、その言葉に傷ついてるなら、まったくもって世話ないよ。
でもこの世界の身分差は厳然たるもので、家格が下がるごとに品性も下がるとさえ思われているフシがある。
それならば、王族から見てたかが伯爵家の息子なら、軽んじられてもおかしくはない。
だって、最初もそうだっただろ?
ズキン……ッ!
そう思った瞬間、これまで以上に心臓がぎゅっとにぎりつぶされたみたいな痛みを訴えてきた。
ヒュッと音を立てて息がつまり、手足がやたらと重たく感じられる。
あぁ、クソ、鼻の奥がツンとしてきた。
こんなことくらいで、泣きたくなんてないのに……。
抵抗する気も消え失せて、相手の腕をつかむ手から力が抜けていく。
「そんなに心配なら、今すぐ本人にたしかめに行けばいいじゃないですか……」
「えぇ、だから今、こうしてたしかめようとしてるんでしょう?!」
俺なんかにかまうより、とっとと保健室まで駆けつければいいだろ!?
そう思ってのセリフに、しかし、かえされたのは不可解なセリフで。
───ん?
ちょっと待て、なんかおかしい。
気のせいだろうか、おたがいにすれちがっている気がする。
「だから!キミがなにもされてないか、確認しようとしてるのに!」
「え………??」
我ながら、今のブレイン殿下を見上げる顔は、ものすごいマヌケなものになってしまっていると思う。
「ほら、そんなふうにキミが無防備すぎるから!それこそ、『あの』ダグラス家の子なのに、すなおすぎるんですよ!心配にもなるでしょうが!?」
「…………………」
どうしよう、あたまの理解が追いついてくれない。
なんかそれだと、さっきからブレイン殿下が心配してるのはセラーノのほうじゃなくて、俺のほうだったって聞こえるんだけど。
えっ?
えぇっ!?
その言葉の意味が、しっかりと脳みそに染み渡った瞬間、首から上は一瞬にしてボンと音を立てるいきおいで真っ赤に染まる。
もはや、はずかしさのあまりに顔をあげていられなかった。
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