ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

文字の大きさ
60 / 188

60:放課後グルメは青春の味

しおりを挟む
 校内のカフェテリアは、いわゆる学食のような立ち位置の施設だ。
 まぁ、貴族学校というだけあって、めちゃくちゃ内装はおしゃれだったりするんだけれども。

 そしてちょうど授業もおわったころだからだろうか、店内にはそこそこ人出があった。
 そりゃ貴族だろうとなんだろうと、育ちざかりの青少年はお腹が空くものだからな!

 実際、しょっちゅうジミーが夕飯までもたないと主張して、ご令嬢たちにまじってお茶をするパレルモ様を横に、ここでガッツリ食事だの甘いパンケーキだのをとっていたっけ。
 テイラーは若干甘いものが苦手だから、なに食わぬ顔してお茶だけ飲んでいたけれど。

 だからここにいれば会える可能性が高いし、会えたなら、ついでに今夜一晩泊めてもらえないかと相談するつもりだった。
 一応ジミーたちの部屋にも、来客用にとソファーくらいは置いてあったはずだし。

 前世の『』は、しょっちゅう終電を逃しては会議室で椅子を並べて寝ていたし、最後のほうには会社の床に直接、寝袋に入って転がっていたから、それを思えば全然問題なくイケる気がする。
 ……むしろソファーがあれば、余裕だろ!

 よし、そうと決まれば、まずは腹ごしらえだ。
 夕飯前だし、軽めに済ますかとサンドイッチを注文してジミーが来たときに気づきやすいようにと、このカフェテリアの入り口が見える手前の席を陣取った。

 ポットでサーブされる香り高い紅茶を飲みながら、サンドイッチをつまむ。
 食べやすい大きさにカットされているそれは、それでいて小腹を満たすには十分なボリュームがあった。

 しっとりとキメの細かいパンにはさまれた具材は、これまたしっとりとやわらかく焼き上げられた鶏肉で、そこにからむハニーマスタードソースの甘味と酸味が絶妙だった。
 ほかにもホースラディッシュのツンとしたさわやかな風味を利かせたローストビーフ入りのものや、たっぷりの野菜を自家製のドレッシングでマリネしたさっぱり系のものもある。

「うわ、うまぁ……」
 見た目を裏切らない、たしかな味のハーモニーに思わず言葉がすべり落ちる。
 いやはや、ここの夕方限定の『ボリュームサンドプレート』は一度食べてみたかったんだよな……。

 なんていうか、大好きな作品のなかに出てくるグルメって、オタクなら一度は自分も食べてみたいって思うものだろ?
 なんならコラボカフェとかあったら、キャラクターイメージの料理なんかより、はるかに食べてみたいのは、作中に出てくる料理のほうだろ!

 少なくとも、前世の『』はそうだった。
 だからこうして、セブンのスチルで見たこのサンドイッチプレートを一度味わってみたかったんだよ!
 結果は、むちゃくちゃ感動して、なんなら泣きそうなくらいになっているわけだけど。

 あまりにも感動したものだから、つい職人さんたちへの夜食用にテイクアウトをお願いしようかな……なんて思わずかんがえてしまう。
 いや、だって夜どおし作業とかしてもらうんだぞ?
 休憩用に、あれこれあったほうがいいだろ!

 それこそ甘いものなら、パレルモ様対策で商会から取り寄せて常備しているものがあるけれど、肉体疲労には甘いものだけよりも、しょっぱいものがほしくなるモンだし。
 ……あれ、でも精神的なストレスとかを受けても、しょっぱいものがおいしく感じるんだっけ?

 なにはともあれ、善はいそげとばかりに、店内にいた店員をつかまえて夜食用にとテイクアウトを注文して会計を済ませると、チップを渡して自らの付き人への言付けもあわせて配達をお願いする。
 校則で、個人的な付き人は寮内でしか連れ歩けないことが決められているため、そうした小間づかいのような役割をつとめるための店員というのが、別途用意されているんだ。

 本当に今俺のところの付き人たちは忙しいから、こういうときには外部にお願いできるって、助かるよなぁ。
 そんなことをかんがえながら、サンドイッチを噛みしめていたら、ふいに目の前に影が差した。

「……あんた、ずいぶんウマそうに食うんだな?」
「ん?セブン!?」
 ウワサをすれば影じゃないけど、俺がこのメニューをオーダーした理由である『うちの子』がそこにいた。

「となり、いいか?」
「ん、どうぞ」
 だいぶ自然に近づいてきてくれるようになったセブンに、内心ニヤつく。
 たとえるならば、なつかないと思ってた野良猫になつかれたみたいな気分だろうか。

「ボリュームサンドプレートか、めずらしいな。あんた、ふだんはお茶だけだろ?」
 こちらの前に出ているお皿を見て、もうだいぶ食べすすめていたというのに、セブンはあっさりと言い当ててくる。
 このメニュー、好きなのかな?

「あぁ、今回はいろいろと手配してたら、お昼を食べそこねてしまったんだ。それよりはじめて食べたけど、これおいしいな?」
「だろ!オレもそれは好きでよく食べてる。チキンのハニーマスタードのヤツ、甘くてうまいんだ」
 笑顔でこたえてくれるセブンに、わけもなく癒される。

「そっか、たしかにその味つけはおいしかった。ほかにもセブンのオススメってあるのか?」
「あぁ、それなら───」
 そうして他愛もない話をきっかけに、会話がはずんでいく。





 ───気がつけばすっかり日は暮れて、下校の時刻間際となっていた。
「うわ、もうこんな時間か……」
 つい話をするのが楽しすぎて、時が経つのも忘れてしまった。

 だって、あのセブンと放課後にこうして楽しくお茶をしながらダベるとか、夢みたいだろ?
 そりゃもう、おたがいにキャラじゃないと思いつつ、めちゃくちゃいい笑顔にもなろうというものだ。

 それに忘れていた青春時代がよみがえる、じゃないけど、こういう学生時代のどうでもいい会話で盛りあがれる時間っていうのは、大人になって思いかえしたときに、すごいキラキラした大切な思い出になったりするんだよな。

 そういう大切な時間をセブンとすごせたのは、やっぱりうれしくて。
 ニヤけそうになる顔は、結局ガマンができなくて、終始ゆるんだままだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑) 本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました! 本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...