ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

文字の大きさ
71 / 188

71:ふわふわした気持ちからの急転直下

しおりを挟む
 我ながらチョロいし、バカなヤツだとは思う。
 あくまでも『恋人にうつつを抜かす道化』を演じているだけのブレイン殿下のあれこれに、いちいち本気で照れてしまうなんて。

 それでもこうしてほほえみかけられるだけで心臓は跳びハネ、動悸が止まらなくなるというか。
 それだけ相手の顔がよすぎるんだと、文句を言いたいくらいだった。

「ふぅん、たしかに照れる姿は存外かわいらしいかもしれんが、それも相手がブレイン、おまえだからなんだろ?」
「さすがです、兄上!よくわかってらっしゃる!」
 ハバネロ王太子殿下に言われ、ブレイン殿下は破顔する。

「……たしかに、その照れ具合が演技だったらだまされてしまうな。私から見て、見るからに善良そうな少年に見えるね。むしろ貴族としては、少し心配になってしまうくらいだ」
 宰相にまで、そんなことを言われた。
 現役の宰相から『心配になってしまう』とか言われるとか、それ、どういう意味なんだよ?!

「ハッ、どうだか!ソイツとはおなじクラスにいるが、今まで照れた顔なんて人前で見せたことなんてなかったはずだが?それどころか、いつでもしかめっ面して、笑顔も見せやしないヤツだったからな!どうせ兄上はだまされてんだろ!!」
 そんな宰相に真っ向から反論したのは、またもやリオン殿下だ。

「…………………」
 もはや、なにも言うまい。
 相手は王族、たとえクラスメイトだろうと、俺には反論なんてできるハズがなかった。

「ほら、反論もしてこないじゃないか!本人だって図星をさされたから、気まずいんだろ?!」
 その決めつけはいささか乱暴な気もするけれど、まぁ……気まずいという点にかぎっては最初からずっと気まずかったけれど。

 とはいえ、これまで『照れた顔どころか笑顔ひとつ見せたことない』というのは、たしかに事実だった。
 それがテイラーというキャラクターの、決められた立ち位置だったもんな。

 無表情で、パレルモ様至上主義のイヤミなヤツ。
 実際に照れるようなこともなかったし、楽しいと笑えるほどのこともなかったんだから、しょうがない。

「……まったく、救いようもない愚弟だな。曲がりなりにもこの国の王子であるおまえが断定したことを、よくわきまえたこの子が否定できると思うのかい?己の権力を正しく知り、おごれる王族となってはいけないと教育されてきたのを忘れたのか!」
 思った以上に険しい顔で、ブレイン殿下がリオン殿下を叱責する。

「はあ?!こっちが正しいからこそ、ソイツも黙ってるんだろ!?」
 言われた本人は、みじんもこたえた様子はなかったけれど。
 そんなふうに当人を置きざりにしたまま、ロイヤルな兄弟による口論はつづいている。

「あのブレイン殿下、そこら辺で……」
 さすがにこれ以上はこの場の雰囲気も悪くなってしまうと思って、そっとその腕をつかんで止めれば、険しかった顔はとたんにやさしげなものに変わった。

「あぁ、怖かったかい?この愚弟との口論は、わりといつものことでね。心配いらないよ」
「そうそう、こいつらはいつもにぎやかなんだ」
 ブレイン殿下につづいて、ハバネロ王太子殿下までもがそんなことを言う。
 ハバネロ殿下は、ほがらか系の笑顔がまぶしい方だけに、ついうなずいてしまいそうになるけれど。

「いえ、あの……リオン殿下のおっしゃることも、もっともなので……我が家が世間でどう思われているかくらい存じておりますし、そのこともふくめて、うたがわれるのも仕方がないかと」
 そう言いながらも、キュッと心臓をにぎりつぶされているみたいな痛みをおぼえる。
 あぁ、まずい、なんとか笑顔は作れているだろうか?

 ───だって気づいてしまったんだ、今までテイラーがロクに笑いもせず、また照れもしない無表情なヤツだった原因に。

 そりゃ、だれからも褒められないし、特別な感謝をされたこともないとしたら、照れた顔なんてなりようもない。
 まして常にパレルモ様のことを守ろうと周囲を警戒しつづけてきたなら、笑顔すら見えなくて当然だ……ってことにさ。

「やはり、顔色があまりよくないね?」
「ご心配ありがとうございます。あまりにも自分が場ちがいなもので、少し緊張しているのかもしれません」
 ブレイン殿下は俺のほっぺたに両手をそえると、うつむきがちなこちらの顔をそっとあげさせてきた。

 どうしよう、なんとなく目を合わせにくい。
 とりあえずは、あたりさわりのない笑みを浮かべたままではあるけれど、敏いブレイン殿下にはなにかしら伝わってしまうものがあるかもしれないな……。

「ふん、部外者が分不相応にも乱入してきて、気まずくなっただけだろうに!その顔だって、あきらかに作り笑いじゃないか、気持ち悪い!」
 と、そこにリオン殿下からの追撃が入る。
 なかば事実であるがゆえに、そのひとことはするどい刃となった。

 ピシッ
 それにより、心のどこかが音を立ててヒビ割れたような気がした。

 ……あいかわらず、俺のことが気にくわないんだろうなぁ。
 そりゃ公式設定では、リオン殿下はパレルモ様と対立するキャラクターとして描かれていたわけだし、当然と言えば当然か。

 この世界でのパレルモ様は、だれからも愛されるように改変されているとして、それ以外の取りまきたちのあつかいは公式のままだとしたら、そりゃその筆頭の俺はいちばん嫌われていてもおかしくないということだ。

 そこへきてブレイン殿下からの寵愛を受けているときたら、兄弟仲があまり良好とは言いがたいリオン殿下からしたら、さらに嫌う要素しかないことになる。
 だから、わかってはいるのに……。

 ───あぁ、今すぐここから消えてしまいたい。

「リオン!それ以上この子をおとしめるようなことを言うのなら、承知しないよ?」
 代わりに声をあげてくれたのは、やっぱりブレイン殿下だったけど、もはや俺の心は折れかかっていた。

 どうせブレイン殿下だって、こうして俺の援護をしてくれるのは、恋人同士という設定を守るための演技にすぎないんだろ?
 テーブル越しにあからさまに敵意を向けてくるリオン殿下と、俺の味方をするハズなんてない縁遠いロイヤルな方々と。

 この場に、俺の味方なんているわけないじゃないか。
 そう気づいてしまったら、どんどん心は冷えていき、顔からは表情が抜け落ちていく。
 胸を締めつけられるようなキリキリという痛みを、必死にこらえなければ泣いてしまいそうだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑) 本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました! 本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

処理中です...